息子が「テレビ」に魅入られて久しい。





「アンパンマン」。

「機関車トーマス」。

「トイストーリー」。

「カーズ」。


DVDをデッキに挿入して再生ボタンを押してやると、

まばたきする間も惜しんで食い入るように

画面を見つめている。



子供向けのアニメと馬鹿にするなかれ。

本当によくできている。


特にピクサーの「トイ・ストーリー」シリーズなんかは

大人の僕たちが観てもめちゃめちゃドキドキするし感動するし、

すばらしい作品であると思う。



最近は恐竜に興味を持ち出したので、「ダイナソー」を

借りてきて見せたりしている。


全シーンが観客を引き込む珠玉の「トイストーリー」に比べ、

「ダイナソー」は脚本が稚拙でつまらない。

今度「ジュラシックパーク」なんか借りて見せてやるか、などと

思っている。








ただ。






それだけではいけないと思っている。



テレビ画面を見つめて口をぽかんと開けて、

ズガーンドガーンうわーぐわー飛んだー走ったー

ピカピカ光るーあーおもしろかった。


これじゃあまりに味気ない。



猫の前で猫じゃらしを右へ左へゆらゆら振って

ただ気を引き付けているようなものだ。





父親の役割はリモコンの「入力切替」と「再生」を

押すことだけなのだろうか?


それだけなのだろうか?







違う。




父親は「リモコンを押すための人」じゃない。




父親こそが「語り部」になるべきだ。


「ストーリーテラー」になるべきだ。



息子は絵本も大好きで、よく読んであげるんやけど、

それもまた「絵本」の功績。

父親の功績ではない。


子供たちは次々と絵本をめくろうとする。

映画と一緒で、「視覚」による刺激を求めるからだ。

物語を目で捉えるからだ。




ちがう角度から子供たちの心をとらえるやり方が欲しい。


それが「ひとり語り」だ、と思いついた。


言葉一本で勝負。

言葉で世界を創る。


それをやりたい。





父親は、映画や絵本を子供たちに提供する存在でありながら、

自らも「お話をする人」として、映画や絵本と対決していくべき

だと思う。



映画や絵本のように、息子の心をぐいと引き込むことが

できるか。


そこが勝負だ。



自分で物語を作って、自分の言葉で、自分の間で、

自分で登場人物を動かし、自分の思うように話を進めていく。


息子はいつしかその話に引き込まれ、笑い、興奮し、怖がり、

悲しみ、時を忘れる・・・



「視覚」に頼らないエンタテインメント。


言葉が「世界」を呼び起こすエンタテインメント。


それを子供に体感させる。






それを目標に、

夜息子の枕元で自作の物語を聴かせる、ということを

この1年間くらいずっとやってます。





仕事で早く帰れた夜。

休日の夜。


妻の、子供たちの寝かし付けに一緒に参加。


息子を担当。



アンパンマン、トーマス、ウッディ、バズ・・・


既存のアニメや絵本の主人公たちを拝借し、オリジナルの

物語を作って話して聞かせています。


話の展開を息子に考えさせたり、幼稚園のお友達も

登場させてみたり。


ワクワクしながら聞いてくれます。


今までにやったのは、たとえばこんな話。



・アンパンマンが駅に新幹線に乗りに行く話


・カレーパンマンがカレーづくりの練習をする話


・3つのお鍋があって、1つが激辛カレーなお話


・トーマスがかけっこの大会に出る話


・ウッディとバズが大きな吊り橋を渡る話


→渡る途中で巨大な恐竜に襲われる話





薄暗い寝室で視界がぼんやりと霞む中、

枕に耳をつけて向き合う僕と息子。


そこが語り部のステージです。



そこからは、僕の言葉がすべて。

僕の言葉が彼の世界のすべてを作り出す。



僕「その吊り橋は、とても古くて・・・


ウッディが足をのせてみると、ギシギシとゆれました。


みぎに。ひだりに。風がふくたびに大きくゆれます。


ウッディはこわくて前に進めません・・・


『行けそうか?ウッディ』


『あ、ああ。もちろんさバズ。』


『まさか怖いことはないだろうな』


『ばか言うなよ、そんなわけないだろう。へっちゃらさ。』」



息子「ウッディ、怖いと?」


僕「怖いとよ、ほんとはね。めっちゃ。」



みたいなね。


もちろん、自作の物語が面白くなければ息子は退屈してしまい

妻と娘の方へゴロゴロと邪魔をしに行ってしまうので、

是が非でも面白い展開にしてこちらへ引き込まなければ

ならんわけです。



一夜一夜が真剣勝負です。


話者と観客の対峙。


落語みたいな感じですかね!



話の間とか、会話の進め方とか、ストーリーの組み方とか

落語を見て勉強してみたい。

今度DVDでも借りてみよう。


あと気になってるのが山田雅人さんのひとり語りね。

高田文夫をブレーンに、始めましたよね。

高校野球の名場面をひとり語りするってやつ。

あれもDVD出てないのかなぁ・・・。すごい参考になりそう。

(マイナーですね、すいません)




とにかく。ストーリーテリングのスキルを鍛えないかん!!

ほんとに。