高速のSAコンビニでおにぎりなどを買って、
走る車内で朝食。
6時半の出発からちょうど1時間半後。
8時に会場へ到着した。
今大会の舞台は、海沿いの小さな町である。
海水浴場を併設した大型の市営公園が大会本部&
スタート地点だ。
雨は変わらず降り続いている。
受付を済ませ、ゼッケンをもらう。
「さ・・・さいだぁさん・・・マラソン大会って、こんな本格的な
感じなんですね・・・!ちょっとビックリですよ!!
もっとこじんまりした町内会の催しみたいなんかと
思ってました。」
大会の旗や本格的な設備、目の前を横切る大勢の
参加者に目をやりながら、驚きの声を上げるジュビロ君。
そうやろ、そうやろ。けっこう大掛かりやろ!!!
テンション上がるやろ!!
初めてマラソン大会というものに参加した人は、
誰しも同じ感想を抱くと思う。
「参加賞も、いっぱいもらえるんすね!」
と、右手の袋を掲げるジュビロ君。
大会オリジナルビッグタオルはもちろんのこと、
地域特産の品が色々ともらえるのも地方大会の
嬉しいところだ。
僕らが出場するハーフマラソンのスタートは、10時ジャスト。
あと2時間、ゆっくりとアップできるわけである。
晴れの日であれば、受付をすませた後は好きな場所に
レジャーシートでも敷いて荷物を置くスペースにできるの
だが、あいにくのこの雨。
スタート場所近くに、海水浴場の使われていない
さびれた海の家の残骸があったので、その屋根の下に入って
雨をしのぎ、そこでストレッチすることにした。
「マイルドのヤツにちょっと電話してみますね」
ケータイを取り出すジュビロ君。
「・・・おう。オレとさいだぁさんもう着いたよ。
お前今どこらへん?高速は降りた?
・・・は?・・・・・迷った???」
死ねぁ!!!
ほんっと何というか・・・。
高速降りてから一本道なのに。
迷いようがないわ!!
救いようがないわ!!
「さいだぁさん。
あいつは最初からいなかったことにしましょう」
ケータイをバッグに投げ捨て、ジュビロ君。
うん、そうしましょう。
そしておなじみ、ジュビロ君のストレッチ。
プロフェッショナルぁ!!
そんなん生まれて一度もやったことないわ・・・。
ふと外を見やると、少し雨足が弱くなってきたように感じる。
ある程度身体がほぐれたところで、カッパを着て2人で
10分くらいゆっくりペースでジョギング。
海沿いの実際のコースを試走してみた。
晴れてたら絶景だったろうなぁという美しい景色のコース。
平坦で、走りやすい。
膝の痛みはない。ふくらはぎも大丈夫。
ありがたい。
万全だ。
海の宿に戻り、しばし休憩。
雨の様子を探りながら、 この大会のパンフレットを
パラパラとめくりながら、くつろぐ。
珍しいことなのだが、パンフレットにコースの全容が載って
いないことに気がついた。
「これ・・・コース載ってないすよね・・・?」
「え?マジですかあ、そうですね。確かに。」
「全容が分からんと不安やなぁ。」
「でもまぁ、さっきの感じだと、のぼりも下りもなくって感じで
走りやすそうじゃないですか?」
「まぁ、そんな感じですね!ハハ・・・」
この考えが甘かったことを知るのは、レース後半に
差し掛かる頃であった・・・。
今はまだ、2人はそのことを知らない。
この先待ち受ける壮絶な道のりを知らない・・・。
時は流れて、ハーフスタート30分前。
マイルドは現れない。電話もない。
「雨の事故で死んだと考えましょう」とジュビロ君。
スタート地点に集まってくださいというアナウンスが
スピーカーから流れると同時に、ジュビロ君のケータイが鳴る。
「おう。え・・・今受け付け終わった?今?おせーよ!
もうスタートだろ!とりあえずそこらへんに荷物置いて、
ダッシュでスタート地点に来いや!」
てなわけで、
またもやストレッチもジョギングも
何もしないままマイルド合流。
まったく懲りない男である。
「すいません・・・マジ道分かんなくて・・・」
何度も言うが高速降りたら一本道だ。
「いいですよ。ほんと、怪我だけないように」
とだけ告げてやった。
この愚鈍にこれ以上かける言葉は、何もない。
「はい、ありがとうございます。あ・・・さいだぁさん。あの。」
「ん?」
「腰のアクエリアス一口もらっていいですか?」
死ねや!!
飲んどけスポーツドリンクくらい!!!
てか今から命のせめぎあいしようって時に、人の
スポーツドリンクもらうな!!
まぁ、あげたけどね・・・
「ゴクゴク・・・ふぃ、ありがとうございます。よみがえりました!」
何で死んでたの、今まで。
迷ってただけだろうが!道に!
ジュビロ君に「ほんっとお前はダメ男だな」と頭を叩かれながらも、
こんな感じでなんとかマイルドギリギリで合流。
3人揃いました。
雨。少しだけ弱まってきたのだろうか。
いや、変わらないか・・・
カッパはかさばるので、上半身のみにする。
頭にタオルを巻いて、雨を直接浴びないようにする。
いよいよだ。
2ヵ月半の集大成。
このために頑張ってきたんだ・・・
人ごみの中、集中力を研ぎ澄ます・・・・・
そしていよいよ、スタートの号砲が高らかに鳴り響いた!!!
2時間ノンストップの旅の始まりです!!!
③へ続きます。