チネリ・フォーミュラーチーノ鑑賞ライドに参加しました。 Part 2 | CICLI LA BELLEZZAのブログ

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愛するヴィンテージ自転車たちとの生活

先週日曜日に行われたチネリ・フォーミュラーチーノ鑑賞ライド。Part 2では、参加した皆さんの自転車をご紹介します。

 

フォーミュラーチーノ(イタリア語風に言うとフォルムーラチーノ)は、1980年代後半に販売された、いわゆる復刻版モデルで、鉄仮面のヘッドマークや旧字体のCINELLIロゴなど60〜70年代のチネリのデザインを再現しながら、直付け加工といった80年代ならではの加工も施されています。

現在では、フォーミュラーチーノを目にすること自体、珍しいですが、今回はそれが2台揃うということなので、各々のオーナーさんの嗜好なども含めて、比較してみたいと思います。

 

まず最初はMYさんの車です。

フレームカラーはロゼにカッパーが混じったような微妙な色合いで、コンポはカンパ・レコードのフルセットを使っています。60〜70年代のチネリの雰囲気を醸し出すには、あえてスーパーレコードを使わずにレコードのセット(リアメカはヌーヴォレコード)にするのが定番でしょう。

 

メッキラグや、メッキのなで肩フォーククラウンなど、チネリのアイコンは忠実に踏襲しています。ヘッドマークはおなじみの鉄仮面ですが、バッヂではなく、デカールになっています。このあたりがオリジナルとは異なり、80年代らしさを感じる所です。

 

シートステーの集合部は、チネリ独特のスタイルが踏襲されています。トップチューブのアウター留めが直付けになっているところは80年代の車ですね。

サドルはブルプロ(ブルックス・プロフェッショナル)を使っています。しかも一時期だけ販売されていたレッドのもので、かなりレア物です。定番のユニカのシームレスサドルではなく、こういった革サドルを使うことで、独特の個性が出ています。

 

ハンドル部は、チネリのジロ・デ・イタリアとアーレンキー締めの1Aステムです。

ユニークなのは、ルネルスやサンジェのように、コットンのバーテープにシェラックニスをかけていて、通常のイタリアンレーサーとは違う味を出しています。

 

カンパのWレバーはバンド締めではなく、直付けです。レバーは凹文字バージョンで、このあたりも、さりげなく80年代の香りが加わっています。

 

こちらは、Iさんのフォーミュラーチーノです。フレームカラーはシルバーで、よりオーソドックスなチネリのイメージを再現しています。こちらもレコードのセットにリアメカはヌーヴォレコードという定番のアッセンブルです。

 

この車もMYさんと同じくメッキラグに鉄仮面のデカールという仕様で、ハンドルステムもチネリのジロ・デ・イタリアと1Aステムという王道の組み合わせです。

 

サドルは、シボ革張りのユニカのシームレスサドル。バックスキンとはまた違う風合いです。

 

ベージュ色のコットンバーテープ。

定番のホワイトではなく、ちょっと落ち着いていて、主張し過ぎずに自転車とマッチするナイス・チョイスだと思います。

 

さて、この車は目立たない部分に小ワザが効いています。

まず、ヌーヴォレコードのピボットボルトがスーパーレコードのチタン製に交換されています。車の雰囲気を保ちながら、軽量化をはかっているわけですね。

 

このペダルも、実はチタンシャフトのスーパーレコードなのですが、車の雰囲気に合わせて、プレート部のブラックアルマイトを剥がし、レコードのペダルのように見せています。

 

フロントディレイラーが直付けになっているのは80年代以降の車の特徴で、復刻版ならではの加工です。シフトケーブルがハンガーの下を通っているのも、80年代らしいところですね。このディレイラーはスプリングが交換されていて、反発力が強くなるようにチューンナップされているそうです。

 

WレバーはCレコのインデックスタイプのレバーが使われています。このアッセンブルはちょっと驚きますが、1990年頃にこの車を作った当時、ショップのご主人から『復刻版というのは、ただ昔の姿を忠実に再現するのではなくて、どこかに現代の要素を盛り込むべきだ。』とアドバイスされたのだそうです。

いろいろな考え方がありますが、そういった解釈も復刻版ならではの楽しみ方かなと思いました。

 

リムはカンパのレコード・クロノです。このあたりも、全体の雰囲気は損なわずに、80年代後半〜90年頃の時代の要素を盛り込んでいるところでしょう。

 

こちらは、私のチネリ・スーパーコルサで、70年代前半の車です。コンポはカンパレコードで、リアはヌーヴォレコード、ペダルはカン付きの鉄プレートです。アウター留めやWレバーはバンド締めですが、ボトルケージは直付けになっています。

 

ヘッドマークは、真鍮製のバッヂが付いています。時代的に、オリジナルはアルミ製バッヂだと思いますが、前のオーナーさんが真鍮製に付け替えたようです。

ブレーキは、カンパではなくユニヴァーサルのセンタープルにしました。ブレーキレバーのパッドは当時のオリジナルで、半世紀の時を経た風合いが出ています。

 

こちらは、GYさんのアタラです。

80年代のフレームですが、パーツアッセンブルは95年頃のカンパ・レコードで組んでいます。特に違和感なく、いい雰囲気の車にまとまっていますね。3Tのチタン製ステムが印象的です。

 

こちらは、MIさんのデローザです。

薄いシャンパンゴールドのフレームに黒の一枚革編み上げバーテープ、スーパーレコードのコンポなど、80年代初頭の、完成されたイタリアンレーサーの粋を体現している一台です。

 

 

さて、今回の主役は、2台のチネリ・フォーミュラーチーノでした。どちらもクラシックチネリの雰囲気を大事にしながら、そこに独自の解釈を加えて楽しんでいる車という印象です。

フォーミュラーチーノは、復刻版ということで、正統派チネリスタからはあまり高い評価を得ているとは言えません。

ただ、チネリをクラシック音楽に例えるならば、オリジナルの楽譜に忠実に演奏するのも大事ですが、敢えて独自の解釈を加えて現代風にアレンジしたクラシックというのも、あっていいのではないかと思います。

そういった、フォーミュラーチーノだから許される楽しみ方を、この2台は示していると感じました。