それではチネリ・スーパーコルサの仕様を見ていきましょう。
フレームサイズはCT560mm(CC550mm)です。これぐらいのサイズだと、ヘッドチューブが長くてかっこいいですね。
実は私のベストマッチサイズは560mmなのですが、これまでロードレーサーは少し小さめのサイズを買ってシートピラーを長く出すセッティングをしていました。しかしチネリはあまりピラーを出さない方がかっこいいと思うので、560mmにしました。(写真の状態はまだセッティング前ですので、たぶんもう少しサドルが下がると思います。)
フレームチューブのブランドラベルは貼ってないのですが、おそらくコロンバスだと思います。
反対側のサイドから見たところ。
フレームのスケルトンは、前三角に対して後三角がすごく小さいですね。これもこの時代のチネリの特徴でしょうか。ホイールベースが短く、後輪は空気を抜かないと車輪がはずれません。
フレームカラーはシャンパンゴールドに近い色ですが、経年変化もあって、くすんだゴールドのような複雑な色です。こういったカラーリングのセンスもイタリア車ならではの魅力だと思います。
ヘッドバッヂは真鍮製です。これは渋いですね。リベットで留めてあるので、後から付け替えたのかもしれません。
チネリのロゴといえば、この字体です!
シートチューブにはアルカンシエルの帯と鉄仮面のロゴマーク。
シンプルですがかっこいいですね。
この鉄仮面のロゴがずっと憧れでした。
ハンガー部のワイヤー回し。
チネリの代名詞になっている三つ穴のクロームメッキラグ。
一番前の穴には赤いペイントがされているようです。
クロームメッキのスロープフォーク肩もチネリの特徴です。
シートステイ接合部のラグは、前半分だけがメッキされていますね。バンド締めのポンプホルダーが付いているところが、60年代らしさを残しています。
チネリ独特のシートステイ接合部。
シートピンはボルト締めです。
カンパのエンド。クイックレリーズの当たり面と端面がメッキされています。
チネリのハンドルにユニバーサルのサイドプルブレーキの組み合わせ。
60年代のユニバーサル・センタープルブレーキ全盛期から70年代のカンパ・レコード・ブレーキへの過渡期のパーツアッセンブルを感じさせます。
ハンドルバーはチネリのジロ・デ・イタリア。曲がりの浅いバーで、私の好みです。
ステムはチネリ1Aの110mm。このあたりは70年代の感じですね。これぐらいステムの突き出しが長いとかっこいいですが、私にはちょっと長いかもしれません。
では駆動部を見ていきましょう。
この車の一番の特徴になっているのが、このチェンホイールです。カンパ・レコードのチェンリングをスーパーレコードのようにカットし、チェンリングだけでなくアームにもドリルで穴をあけて軽量化をはかっています。『レジェリシモ(最軽量)』のネーミングはこのあたりを指しているのかもしれません。
単に穴をあけるだけでなく、アートのようにデザイン化しているところがお洒落です。
1970年製のデローザの写真を見ると、チェンリングに同じような柄のドリルアートを施しているので、当時流行りの加工だったと思われます。
ペダルはカンパの鉄製プレートでストラップ通しのカンが付いているタイプです。
このあたりは60年代の香りがしますが、やはりチネリにはこういった鉄製パーツが似合う気がします。
トークリップはクリストフの古いロゴのものです。
赤いストラップはレコードというブランドのもので、使い込んで、いい風合いが出ています。
フロントメカはカンパ・レコード。
レジナ・オロのチェンが上品な雰囲気を醸し出しています。
リアメカはヌーボレコード。まさに70年代を代表するディレイラーです。私としては鉄レコの方が似合う感じがするのですが、当時としては最新の軽量モデルを使っています。このあたり、60年代に寄せるか、70年代に寄せるか、どちらの考え方もありそうですね。
フリーはレジナの五段で13~23Tです。
カンパのダブルレバー。刻印の間にこびりついた汚れが使い込んだ感じで、かっこいいですね。
この車は、フリーとエンドのクリアランスがギリギリまで詰めてあって、トップに入れるとチェンとエンドの間は1mmあるかないか。まだ本格的に乗っていませんが、擦ってしまわないか不安になります。
ハブは地球マークのカンパ・レコードです。
クイックレリーズは直レバーです。まだ曲がったタイプが出る前で、このあたりも60年代の香りがしていいですね。
リムはニジです。
モデル名はわかりませんが、サイドにギザがなく、幅が20mmなので、おそらくカウンタックだと思われます。
刻印されているMONCALIERIというのがモデル名かと思っていましたが、ニジの会社がある街の名前のようです。
前輪にはプネウダン スポルト 67というタイヤが付いています。
イタリアのメーカーですが、初めて聞くブランドです。
後輪にはゴミタリアのタイヤが付いています。
かなり経年劣化しているので、タイヤは乗る前に交換したほうがよいかもしれません。
ブレーキアーチはサイドプルのユニバーサル・スーパー68。
名前の通り1968年発表の製品で、時代が60年代のセンタープル主流から70年代のサイドプル主流に移っていく頃のモデルです。ブレーキシューはユニバーサルではなくカンパに替えていますね。このあたりは、前のオーナーさんが性能面を考えて現実的な選択をしたというところでしょう。
ユニバーサルのブレーキレバー。
ユニバーサルのレバーというと、頭のアジャスターの部分に黒いカバーが付いているのが特徴ですが、この車は付けていませんね。
この点についても、同じ1970年製のデローザがまったく同じようにしているので、時代的なものなのかもしれませんが、よくわかりません。
サドルはウニカニトルの皮張りサドルで、ピラーはカンパです。
ハンガーの下部に5324番というシリアルナンバーが入っています。ハンガー部の肉抜き加工などはされていないですね。
さて、この車の難点として、トップチューブとヘッドチューブの塗装の傷みがあります。
特にトップチューブは、前のオーナーさんが修復しようと自分で塗った部分がさらに汚くなっているという状態です。ここは丁寧に直していきたいですね。
チネリの場合、傷や塗装のはがれも勲章だそうですので、なるべくオリジナルの風合いを保ったまま、乗っていきたいと思います。
磨き派サイクリストの私としては、ピカピカに磨きたくなってしまうのですが、このチネリを見ていると、使い込んで汚れたパーツも味があっていいなと感じます。
これから自転車と対話しながら、どう手を入れていくか考えていこうと思います。そういったことを考えるだけでも楽しめそうですね。