松本 博明の香港ビジネスコラム 第16回『香港・広東省での人材採用虎の巻コラム』
松本 博明の香港ビジネスコラム
『香港・広東省での人材採用虎の巻コラム』
当コラムでも何度か日本国内から香港への進出が増えているとお伝えしていますが今回は進出後の香港での人材採用について、私の本業でもある人材コンサルタントの立場から考えてみたいと思う。
そこで第16回目の香港コラムは「香港で人材を採用する!」というテーマでお伝えしたい。
どのような人材が必要なのかの自社判断
企業が新たな人材を必要とするのは、2つのケースに分けられます。一つは前任者が辞めたための欠員募集。
もう一つは、事業拡大や新しいプロジェクトの発進などによる増員です。
欠員を埋めるための募集の場合は、前任者の仕事を引き継ぐため、どのような人材が必要なのか、やってもらう仕事内容は何かといったことが、イメージしやすい。しかし増員のために募集する場合、どういった人材が必要なのか、どういった仕事をしてもらうのかといったことを詰め切れていないまま募集をする企業の方が多い。
営業もやってくれ、総務もやってくれ、あれもやってほしい、これもやってほしい、広東省への出張はすべて任せる、英語も話せて中国語も話せて……など、これら全部をできる人などいません。
また、仕事が忙しくなりすぎて、人手が足りなくて募集するというケースもあります。そういった場合、あれもこれもできる人と欲張らず、忙しくなった仕事のうちのどこからどこまでの仕事を引き継いでもらいたいのかを、事前に考えておく必要があります。
専門知識が必要な技術者を募集する際には、どのような人材が人材市場にいるのかリサーチする必要があります。
そういったことについては、人材紹介会社にまず相談してみるのがいいかと思います。
また、同業者や異業種の総経理仲間といったヨコのつながりで、お宅は今どうしているの?などと話していくことで、人材に関する現実も把握していくことができます。
それ以外でいいますと、ビザや保険、税金のことに対する意識が低い企業も多く、Fビザ(就労ビザではなく観光ビザ)で働かせたり、税金や保険のお金を払っていないケースもよくあります。
人材にとっては、これらは仕事内容や給料と同様に重要なことですので、人材を募集する際に考えていただきたいですね。
面接について
面接では、求職者の人柄を見ることも重要になってきますが、簡単な方法が一つあります。
それは、こちらの話に対して相槌を打つかどうか。
これは、人の話をよく聞いているか、理解しようとしているかにつながり、相槌を打つ人は、他人との協調性が高い人が多い。
逆に、人の話を聞かずに自分の話をするばかりの人は、協調性に欠けることが多いのです。
転職する理由を聞くことも重要です。
普通に聞いても本当の理由はなかなか出てきませんので、本音を話せるような雰囲気を面接の際に出すことが必要です。
そのためには、面接する側もざっくばらんに自社の話をすることが求められます。自社の良くない点、問題点なども正直に話してしまうこと。
入社すればいずれ分かることですから、お互いに隠しながら面接して、いざ入社させてみたら、お互いにこんなはずではなかったということになってしまいます。
会社組織とは船のようなもの。
この船がどういう方向に向かっているのか、そのためにはあなたにどのようなことをやってほしいのかを伝えること。
面接の際に工場や職場を見せて仕事内容を説明するだけではなく、大局観的に自社説明もしてください。
人材の側も、面接を受けたA社とB社のどちらにしようと考えたとき、面接の際に「ぜひ来てほしい」と、熱意を持って対応された会社のほうを選ぶものです。
ですので、会社側の「一緒にがんばろうぜ」という態度が重要なポイントになってきます。
中国人人材は給料や福利厚生を重視すると一般的に思われていますが、実際はそうではなく、日本人以上に情に対して敏感です。
総経理が帰国・退社するから自分も会社を辞めるという話はよく聞きます。
給与について 募集する際に給与額を抑えて募集する企業もあるのですが、こんなに安い給料では見つからないというようなケースもあります。
そのポジション、仕事内容、求められる能力による、人材市場の適正額というものがあるので、どれくらいの給与額にしたらいいのか、まずは人材紹介会社に相談していただければ、適正な額で人材を見つけることができます。
一般職のような、人材候補がたくさんいるポジションの場合、募集の際は市場適正額で十分ですが、特殊な経験や能力を必要とするポジションの場合、杓子定規に給与額を決めてしまうと、いい人材を逃してしまう可能性もあります。
会社内の給与バランスというものもありますが、いい人材にはいい給与を与えるというのも必要になってきます。
長く働いてもらうために
新しい人材を募集するのは恋愛と一緒。
面接というデートでお互いに見極め合うためには自分の心も開いて、相手の本音を聞き出していく。
長所も短所も話していく。
働き初めてから悪い面が見えてくると、すぐに辞めてしまいます。
デメリットの部分もオープンにするためには、ここまでは話していいというリストを事前に作っておくと、話しやすくなります。
そういった短所やデメリットが分かったうえで、それでも相思相愛ならば、入社した後も長く働いてもらえるようになります。
また、入社したばかりのころは、あまりほうっておかずに、常に気にかけておいてあげること。
釣った魚には餌はやらないという態度はよくありません。
誰でも入社したばかりのころは、離陸直後の飛行機と同じで不安定です。
試用期間こそ、ケアしてあげることを忘れないでください。
しばらくして仕事に慣れれば、あとは安定した水平飛行。
ほうっておいても、しっかり働いてくれます。
香港人スタッフの場合は、基本的に長く働いてもらおうと考えず、いつかは辞めてしまうもの、そのなかから長く勤めてくれる人が出てきてくれたら運がよかったと考えたほうがいい。
無理に給料を上げて引き止めるのではなく、それなら新しい人を探したほうがいいです。
人材紹介会社の利用の仕方
人材紹介会社を通じて人材を募集する際、自社に関する情報をできるだけ多く教えてください。
よく、ファックスやメールで「営業 英語人材 北京語ができると尚可 給料1万元」といった簡単な条件だけを送ってくる会社もありますが、それだけでは、その会社、仕事内容に合った人材を選び出すのは難しい。
きめ細かい求人情報を開示してこそ、いい人材を見つけられる可能性も高まってくるのです。
私どもでは、人材募集をいただいた会社には、必ず事前調査のために、30分でもいいですからと、訪問させていただくことをお願いしています。
ときには、社宅を見せてもらったり、社員食堂でごちそうになったりして、その会社の雰囲気や内容を深く知ろうとしています。
それにより、その企業に合った人材をご紹介することができるのです。
募集の際に10社近くの人材紹介会社に依頼する企業もありますが、そういう理由もあって、2、3社に絞って依頼したほうがいい。
人材紹介会社とは、広く浅くではなく、狭く深くお付き合いしたほうが、いい人材を取れる可能性が高まります。
日系企業へのアドバイス 日系企業は、人材募集から採用までに時間がかかりすぎる傾向があります。
こちらから候補人材の書類を送っても、それから返事が来るのが遅い。そのため、せっかくいい人材だったとしても、その間に他社に取られてしまうといったケースが多い。
それは面接後の採用決定までも同じで、なかなか結果が出ないため、人材が他の会社に行ってしまう。人材だって、早く働き始めたいのです。
理想的には、人材紹介会社に連絡して1週間かけて人材を募集して、履歴書を受け取った翌週には面接をして、その翌週までには採用を決め、さらにその翌週から入社というのがいい。
募集を始めてから入社まで1か月ですね。
いい人材を取れる会社と、貧乏くじを引く会社の違いは、決定までのスピード。もう一つは、採用条件に対して頑固にならないこと。
給料で1500元上乗せをケチったがために、いい人材を逃してしまうということもよくあります。
私たち人材紹介会社は、これまでに良い人材、良くない人材を何百人と見てきています。
ですので、もしどの人を採用しようか判断に迷ったら、参考意見を聞く意味でも、人材を紹介した会社に相談してください。
キャリアインテグレーション 松本 博明 mailto:info@kananworks.com
LINKBIZ台湾 第16回 香港ビジネスコラムより
香港特派員による現地レポート !