前回のブログよりも、もうちょっと前の話。

 

ある日、アニキが食事に誘ってきた。

別に予定があるわけでもなかったので、誘いに乗る。

約束は6時半。しかし、ネパリなので、どうせ遅れる前提で用意していたら、6時20分には「もう駅に向かってるよー」とメールが着て、心底ビビる。

結局私の10分遅刻だった。

「ごめんごめーん、ネパリが6時半って言ったら7時じゃん?」

「。。。否定できないとこが辛いけど、俺は大体オンタイムだ」

二人で、カオルーンサイドにある、アニキの友人が経営するレストランに向かう。

「そうそう、今日、もう一人女友達呼んだけど、いいかな?」

「ぜんぜんいいよー!」

私たちがレストランについて1時間ほど経ったころ、その子、イネスは登場した。

 

イネスは、見た目は至って普通の女の子。特に可愛くもなければ、不細工でもない。

明るく、ニコニコしながらお店に入ってきた。

年齢は25歳。アジア人。ホテル系の仕事をしている。

「で、アニキとイネスは知り合って長いの?」

「うふふー♡そうでもないのー!2、3ヶ月くらいかな?」

その時点で、私はピンと来るものがあった。しかし、まだ確信ではない。

この男と知り合って数ヶ月かー。ちょうどアニキが彼女と別れたころだし、アニキ、まさか手出してる?

そこから普通に会話を始めて、アニキの失恋話になった。

「でもほら、この男は一応見ての通り、顔はいいからね。しかもバーで働いてるし、女の子が放っておかないって」

と、私が笑って言うと、イネスが不安そうにアニキに聞いた。

「それ、本当なの。。。?」

ハイ、来たよコレ。コンファーム来ました。この子、アニキ狙いだわ。てか、アニキ、分かってんのかな??

アニキはあくまでポーカーフェイスを決め込む。

 

それからイネスは、いかに自分の人生が退屈かを語り始めた。

「一年前に失恋してから、私の人生って本当に退屈なの。それをいつも彼(アニキ)に相談してるんだけど、迷惑かしら」

「いやいや、大丈夫」

「ほんとー?だといいけどーうふふー」

私は自分のカクテルをじっと見つめながら、そのキャッキャした会話を聞きつつ、無言を決め込む。しかし、言いたい。本当は、言いたい。「自分の人生を退屈って言っちゃってる女に、このイケメンプレーヤーは魅力なんて感じないよ!」って。

「でね、ルイ、私の人生って、本当に退屈で、どうしたらいいのかしら」

え、私に話振ってきた?

「。。。あのね、イネス。この世の誰も、あなたの人生がどんなものか決めることはできないわけで、自分の人生を自ら退屈だって言うなら、それは本当に退屈なんだなーって私も思うわ。だって自分がそう決めてるんだから。どうしようもない」

「お、ルイ、えらい、いいこと言う」

アニキが突っ込む。

イネスはそれでも笑って言う。

「そーなんだけどーーー!それは分かってるんだけど!!うふふ」

。。。いや、うふふ、じゃなくて。

だめだ、私にはもう何もできない。自分の人生がつまんないなんて言ってるやつ、周りにいないし、私だって一度も思ったことないし。

大体、不幸アピール、寂しさアピールで男を落とそうとしても、それは無理だろう。

そんなの、アニキには通用しないよ。見てわかんないの?この男はプレイボーイだから、下手したら、つけ込まれるだけだよ??

同じ女として言いたいことがぐるぐるしているが、言えない。し、言う義理もない。

願わくば、アニキがこの重たい好意に気がついて、手を出さないであげることぐらいだ。

 

それからしばらくして、私は先に帰ることにした。

アニキがタクシー乗り場まで送ってくれる。

「おまえ、マジで帰るのか」

「うん、帰るーおやすみー☆」

今思えば、「ふざけんなテメー、二人にすんなよ」という思いもあっただろうが、いざ何かあったとしても、それはそれで面白いし、と私は無責任にも思っていた。

 

 

「で、結局なんかした?」

「してません」

案の定、アニキはイネスの好意に気づいていたし、その重たさもヤバいと思っていたらしい。(前回のブログに書いてあるので、チェックしてみてね)

しかし、私の目で見る分には、アニキも少なからず、絶対に粉は撒いていた。その気にさせることを、ちょっとでもしなかったかといえば、嘘になる。

まあ、オスの本能というか、やはり好意を寄せてくれる女子をキープしときたい、というのは誰でもあるもんだしね。

私はそうアニキに言ってみた。

「。。。あのな、ぶっちゃけ言うとな、そりゃちょっとは、手出してみよーかとは思ったよ」

アニキは自白した。

「しかし。もちろんイネスが重そうだというのもあるが、それ以上にだな」

「うん、何かあんの?」

「あの子、俺の従兄弟とも色々あったんだよな、従兄弟からこっそり聞いちゃった」

「。。。ハイ、アウトーーー」

「だよな、従兄弟と何かあった女とか絶対無理だわ」

ちなみにアニキとディパの従兄弟も、結構なイケメンである。ここの一族の遺伝子はかなり優れていると言えよう。

「あんたんちの家系の顔が好みなんだろーなー」

「そういう問題か?」

 

香港は狭い。更に言うと、LKFはもっと狭い。

こういうことは、なきにしもあらずである。

「その狭さのおかげで、さすがに私も大人しくなったもんだし」

「だよな。俺もいい子にしてるわ」

この狭い香港、「重い」とか、別れ際に次の恋愛のネックになりそうな印象を植え付けたりしては絶対にいけない。

どれだけ泣いてすがりたくても、さらっと後腐れ無く終わっておかないと、色んなところでダメージが出てくるのだ。

 

やはり、私とアニキは似た者同士である。

私の従姉妹が、香港にいなくて良かったと、切に思った次第である。