こんにちは、
龍妃花 です![]()
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この物語 「十三の龍の封印を解く」 は、
なおこと龍たちが紡ぐ 神秘的な冒険譚 。
静かにページをめくりながら、
古の記憶 に耳を澄ませてください。
さあ、物語の扉が開かれます——
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第Ⅰ章 第1話 十三の龍の封印を解く~白龍の封印 運命の始まり~ | 龍妃花
第3話『魂の呼び声』
すずは、焔が去った遺跡の中で
立ち尽くしていた。
焔(ほむら)の言葉が胸に痛く響く。
『二度と俺に近づくな』
だが、それ以上に胸を締め付けるのは、
焔(ほむら)が背負っている『業』の重さだった。
すずは胸元のペンダントを握りしめ、
静かに息を吐いた。
「……もう一度、あなたに会わなくちゃ」
その瞬間、
ペンダントがふたたび優しく輝いた。
まるでその決意に応えるように、
風が静かに吹き抜け、
遠くから微かな鈴の音が聞こえてきた。
「これは……?」
遺跡の奥から、淡い光が浮かび上がった。
光はふわりと漂いながら、
やがて人の姿を取った。
透き通ったその姿――
美しい銀色の髪をした女性だった。
彼女は穏やかな微笑みを浮かべ、
すずの方へと歩み寄る。
『柊すず、待っていました』
声はやわらかく、
心に直接響くようだった。
「あなたは誰……?」
すずの問いに、
女性は優しく微笑んだ。
『私はかつて焔を導いた者……
そしてあなたの魂とも深く繋がる存在』
「私の魂と……?」
女性は小さく頷いた。
『ええ、あなたの魂は、焔と共に
かつてレムリアの時代を生きたのです』
「レムリア……?」
その言葉がすずの記憶を揺らした。
──焔とともに見た、炎に包まれた世界。
──誰かが泣き叫び、炎の中で何かが崩れていく。
胸が締めつけられるような痛みが
再び襲った。
女性はすずをじっと見つめる。
『あなたと焔は魂の絆で結ばれていました。
ですが、焔はあの時代に重大な過ちを犯し、
その罪悪感ゆえ、自らを封印したのです』
「重大な過ち……?」
『彼はレムリアの滅亡を止められなかった……
いいえ、それどころか、その滅亡を引き起こしたのが
自分だと責め続けている』
すずの胸が苦しげに波打った。
焔の孤独と拒絶は、罪悪感のためだったのか。
「あの言葉……
私、なぜあんなことを口にしたの?」
すずは先ほど、
自分の意思とは関係なく口にした言葉を
思い出していた。
──『あなたを助けたかった……あの時』
「あの時って、何……?」
女性がやさしく答える。
『あなたの魂が覚えている、
レムリアでの記憶です。
焔が封印を選んだ時、
あなたはそれを必死に止めようとしました』
心が震えた。
ずっと胸の奥で、
焔を助けたいと願っていたんだ。
女性は静かに語りかける。
『あなたの魂だけが、
焔を癒し、
封印を完全に解くことができます』
すずは強くうなずいた。
「あの時できなかったことを、
今度こそ、必ず果たす」
その決意を最後に、
女性の姿は淡く消えていった。
静かな遺跡に、
すずの新しい旅が始まった。
◇
森の上空。
焔は孤独に遺跡を見下ろしていた。
すずの瞳が忘れられない。
「……なぜまた現れた」
苛立つように呟く焔。
「運命など、信じるものか」
しかし、彼の胸の奥では、
魂の呼び声が響いていた――。
続く


