こんにちは、
龍妃花 です![]()
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この物語 「十三の龍の封印を解く」 は、
なおこと龍たちが紡ぐ 神秘的な冒険譚 。
静かにページをめくりながら、
古の記憶 に耳を澄ませてください。
さあ、物語の扉が開かれます——
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第Ⅰ章 第1話 十三の龍の封印を解く~白龍の封印 運命の始まり~ | 龍妃花
第3章・第1話『紅蓮の目覚め』
夕暮れの空が、炎のように赤く染まっていた。
柊すずは、学校の帰り道を歩いていた。
──いつもと同じ道のはずだった。
けれど、気がつけば周囲の景色が変わっていた。
道が消え、どこまでも続く深い森の中にいた。
「え……?」
さっきまで住宅街を歩いていたはずなのに。
スマホを取り出すが、画面は砂嵐のように乱れ、電波も繋がらない。
森は静かすぎた。
葉が風に揺れる音ひとつしない。
まるで時間が止まったかのように、空間が歪んでいる。
何かに導かれるように、すずは歩き出した。
次の瞬間、霧が立ち込め、視界が白く染まる。
足元がふわりと浮く感覚──そして、身体が引き込まれるように落ちていった。 ◇
目を覚ましたとき、そこはまったく違う世界だった。
風が吹き抜ける遺跡の中。
石造りの柱が並び、壁には古代文字のようなものが刻まれている。
瓦礫が散らばり、時の流れに取り残されたかのように
ひっそりとたたずんでいた。
そして──その中心に、鎖に繋がれた巨大な龍の石像があった。
すずの心臓が跳ねる。
──なに、これ……。
目の前の石像を見た瞬間、胸が締めつけられるような感覚に襲われた。
知らないはずなのに、懐かしい。
会ったことがないはずなのに、涙があふれて止まらない。
「……ウググググ」
どこからか、微かな声が響いた。
すずは、導かれるように石像へと歩み寄る。
しかし、近づいた瞬間、石像の周囲に炎の壁が立ち上がった。
「きゃっ!」
熱風が吹きつけ、すずは思わず後ずさる。
その炎の奥に、封印の呪印が浮かび上がる。
これはただの石像ではない。
何者かが強力な結界を張り、封印を何重にも施している。
それなのに──
なぜ、自分はこの場所に引き寄せられたのだろう。
「……助けなきゃ……」
すずは涙を拭い、炎に囲まれた石像を見つめた。
次の瞬間──
空間が揺れた。
遠くで鐘のような音が響く。
同時に、すずの胸元が光を放った。
「え……?」
制服の下、ペンダントが微かに温かい。
こんなもの、持っていた覚えはない。
まるで、それが鍵のように、龍の額に刻まれた紋章が鈍く光を帯びた。
そして、すずの中にある記憶が流れ込んでくる。
──炎に包まれた世界。 ──誰かの叫び声。
──鎖に縛られ、苦しそうに睨みつけていた。
「…… 焔?」
その名を口にした途端、轟音とともに炎が弾けた。
鎖が砕け散り、封印が解ける。
炎の中から現れたのは──燃えるような赤い瞳。
焔が目を覚ました。
「……貴様、何者だ?」
その声は低く、怒りと警戒に満ちていた。
すずは息をのむ。
目の前の龍── 焔は、威圧的に彼女を見下ろしていた。
だけど ──この人を置いていってはいけない。
そう、どこかで知っている気がした。
その瞬間、すずの意識の奥に、かすかな影が揺らめいた。
なおこ──? 翡翠……?
よく知るはずのない名前が、心の奥に響いた。
しかし、その意味を考える余裕はなかった。
焔がゆっくりと動き、彼女に向かって鋭い眼差しを向けた。
「貴様が俺を解いたのか?」
すずは震えながらも、彼をまっすぐ見つめる。
「……あなたを助けたかった。あのとき........ 」
そう口にした瞬間、自分でも驚いた。
なぜそう思ったのか。
何を言ってるのか、、、 分からない。
ただ── 炎の中から目覚めた龍は、彼女の言葉にわずかに瞳を揺らした。
そして、二人の物語が動き出した。
~続く




