こんにちは、
龍妃花 です![]()
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この物語 「十三の龍の封印を解く」 は、
なおこと龍たちが紡ぐ 神秘的な冒険譚 。
静かにページをめくりながら、
古の記憶 に耳を澄ませてください。
さあ、物語の扉が開かれます——
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第Ⅰ章 第1話 十三の龍の封印を解く~白龍の封印 運命の始まり~ | 龍妃花
第二話:記憶の扉
——風が、ざわめいている。
森の奥深く、龍の石像が静かにそびえ立っていた。
翡翠は、その前で立ち尽くしていた。
「あなたには……龍の気配がある。」
なおこの声が、翡翠の胸に波紋を広げる。
龍の気配——?
そんなもの、感じたことはない。
けれど、何かが違う。
胸の奥で疼く感覚。
触れたことのないはずの記憶が、影のように揺らめいている。
——カッ……!
世界が、一瞬、反転した。
***
白き城壁。風に揺れる鈴の音。
彼女は、そこで立っていた。
長い衣がなびき、
額には繊細な文様が刻まれた黄金の飾りが輝く。
それは、彼女自身の姿だった。
神殿の奥深く。
目の前には——翠龍。
巨大なその身体は、光を纏い、
天空と大地を繋ぐ柱のように荘厳だった。
だが——
轟く雷鳴。
空を切り裂くような閃光の中、翠龍の巨体は鎖に縛られていた。
四肢に絡みつく黒鉄の鎖。
それはまるで、龍そのものが大地へと縛りつけられているかのようだった。
鎖は古びているのに、絶対の呪縛を持っていた。
翠龍が翼を広げようとするたび、
鎖が軋み、空間に亀裂が走る。
「……っ!」
翡翠は息を呑んだ。
これは……記憶?
いや、ただの記憶ではない。
これは、私が下した決断の記憶——
『翠龍よ……汝の力は、天に仇なす。』
誰かの声がする。
「違う……!」
声を出したのは、彼女自身だった。
翠龍は、彼女を見つめていた。
その瞳には、何の敵意もない。
ただ、静かに彼女を見つめていた。
「私は……あなたを封じた……?」
その時——
翡翠の手の甲に、紋様が浮かび上がる。
それは、深緑の風をまとい、大地と天空の力を宿す紋章。
翡翠の輝きを秘め、
光と影の狭間で脈打っている。
翠龍の紋章——。
それは、「封印者」だけに刻まれる印。
紋様が脈動するたびに、封印の記憶が呼び覚まされるようだった。
「私は……龍の神官だった……。」
知っている。
この手で、封印を施したことを。
それが、使命だった。
人々を守るために。
「でも……本当に、それが正しい選択だったの?」
翠龍は、何も言わない。
けれど、その目は、ただ静かに彼女を見つめていた。
——思い出した。
でも、それだけでは足りない。
「私は……どうすれば……?」
その瞬間——
***
「翡翠!」
なおこの声が、遠くで響いた。
視界が、現実へと戻っていく。
けれど、手の甲に残った紋章の熱は、消えない。
翡翠は、震える手で、龍の石像を見つめた。
すると——
ズ……ズズ……ッ!
石像が、微かに揺れた。
「……!?」
なおこが息をのむ。
「まさか……封印が……!」
違う。
これは、まだ目覚めではない。
これは——
龍が翡翠を試しているのだ。
「……龍は、私を待っている……?」
その問いに、答えはなかった。
けれど、石像の表面に浮かび上がった翠色の紋章が、
まるで「鍵を探せ」と囁いているようだった。
次回へ続く——





