こんにちは、
龍妃花 ですおとめ座ピンク薔薇

 

この物語 「十三の龍の封印を解く」 は、
なおこと龍たちが紡ぐ 神秘的な冒険譚

静かにページをめくりながら、
古の記憶 に耳を澄ませてください。

さあ、物語の扉が開かれます——

 

 龍 龍 龍 龍 龍 龍 龍 

 

太古の昔——
この世界には 十三柱の龍 がいた。

彼らは 火、水、風、大地 の力を司り、
世界に調和をもたらす 神聖なる存在 だった。

龍は、世界の流れそのものだった。

 

 

 

 

水は潤い、大地は実りを与え、風は命を運び、火は創造の力をもたらす。

人はその恵みに感謝し、龍とともに生きていた。
 

しかし——

 

恵みは あまりにも当たり前 になり、
やがて 感謝の心 さえ薄れていった。

龍がそこにいることが「奇跡」ではなく「日常」になったとき——
人々は、龍を忘れた。

 

 

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第Ⅰ章 第1話 十三の龍の封印を解く~白龍の封印 運命の始まり~ | 龍妃花

 

 

 

 

 

 

第2章:翠嵐(すいらん)の目覚め

第一話:森の囁き

霧が立ち込める森の奥。静寂の中に、かすかな泣き声が響いていた。

なおこは、白龍の導きによってこの地へとたどり着いた。

 

「この森に、次なる龍の気配がある。」

 

白龍の声が心に響いた。なおこは導かれるままに進む。

古びた石畳の道が苔むしており、長い時の流れを感じさせた。

 

やがて、大樹に囲まれた静寂の空間へと足を踏み入れる。

風がそよぐと、枝葉の間から木漏れ日がこぼれた。その中央で、

ひとりの女性が、しゃがみこみリスに餌をやっていた。

 

 

なおこは足を止め、しばらく彼女を観察した。

透き通るような瞳。優しげな手つき。そして、ふと見せる、どこか悲しげな表情。

『……この人が?』

直感が告げる。この女性こそ、白龍が導いた「龍の守護者」なのではないか、と。

「——あなたは……?」

なおこが静かに声をかけると、その女性——翡翠(ひすい)はゆっくり顔を上げた。

 

 

 

「あ……あなたは?」

 

翡翠は少し戸惑ったようにまばたきをした。

なおこは彼女の目をまっすぐに見つめた。

 

「私はなおこ。あなたを探して、ここに来た。」

「私を……?」

 

翡翠は困惑したように微笑んだ。

 

しかし、その笑顔の奥には、どこか不安の影が揺れている。

 

「あなたは、この森で何をしているの?」

 

なおこの問いに、翡翠はそっと小鳥を腕に乗せながら答えた。

 

「ここは、私の居場所……」

 

彼女の言葉には、まるで自分自身を納得させるような響きがあった。

 

なおこはその違和感を感じながらも、さらに問いを重ねた。

 

「あなたには……龍の気配がある。」

 

次の瞬間——

 

 

翡翠の耳が、キン、と鳴った。

風が止まった。

まるで森全体が、一瞬だけ呼吸を止めたようだった。

 

 

 

 

 

その時。

なおこの右手が熱を帯びたようにじんじんと疼き出す。

見下ろすと、手に刻まれた白龍の紋章が赤く浮かび上がっていた。

 

「……!」

 

彼女の視界が揺らぐ。

熱い。まるで皮膚の下で何かが蠢いているような、奇妙な感覚。

 

白龍の紋章が赤く光るたびに、何かが呼応している——

 

 

 

 

 

 

この森に、確かに封印された龍がいる。

 

「これは……!」

 

なおこは目を見開く。

翡翠の肩がびくりと震えた。

 

「龍……?」

 

その言葉は、翡翠自身の口から零れたものだった。

けれど、その瞬間、彼女の背筋を冷たい何かが這い上がった。

何かがいる。

何かが、目を覚まそうとしている。

何かが、彼女を待っている。

 

「違う……そんなの……」

 

翡翠はなおこを見つめ返し、首を振る。いや、違う、違う。

私にそんな力があるはずがない。

 

「私はただ、この森で暮らしているだけ……。龍なんて、見たこともない。」

 

その瞬間、どこかで「カサ……」という音がした。

 

木の枝が揺れた。

風が戻ってきた。

しかし、それは普通の風ではなかった。

 

冷たく、肌に張りつくような、得体の知れない気配を含んだ風だった。

翡翠はぞくりとした感覚に襲われ、思わず腕を抱くように身を縮めた。

 

なおこはじっと彼女の目を見つめている。

 

「でも、あなたは感じているでしょう?この森に何かがいることを。」

 

翡翠は何かを言いかけたが、声が出なかった。

森の奥から、何かが、確かに——

 

『おまえが……目覚めさせるのか……』

 

耳元で囁いた気がした。

——カッ!

 

目の前の霧が一気に晴れた。

翡翠の心臓が、妙なリズムで跳ねた。

 

彼女の目の前に、それは現れていた。

石像。

大きな龍の石像。

 

けれど、それはまるで生きているかのように、

今にも動き出しそうな気配を漂わせていた。

 

 

翡翠は、何も言えなかった。

息をすることすら、忘れていた。

 

 

この森は、眠ってなどいなかった。

ただ、待っていたのだ。彼女が目覚めるのを。

 

 

次回へ続く