その晩、日をとっくに跨いだ頃

ジェジュンがいつものように机に向かっていると

玄関のドアが開く音が聞こえた。

それから階段を上がってくる足音も近づいてきて

ガチャリとジェジュンの部屋のドアが開く。

 

 

「え?」

 

 

振り返ると体を半分、部屋に入れた状態で

ユノがこちらを見ていた。

 

 

「ユノ?」

 

「ん」

 

「何してんの」

 

「そっちこそ何してんだ、こんな時間に」

 

「何って、いつも通りだけど…」

 

「ん、そっか」

 

 

ジェジュンはそんなどこか噛み合ってないような会話をしながら

ユノが明らかに酔っ払っていることに気づいた。

けれど、そんなことを無視して

ユノはふらふらと部屋に入ってきてベッドへとダイブする。

 

 

「ユノ、ユノの部屋は隣…」

 

「知ってる」

 

「知ってるって…ここで寝るつもり?」

 

「寝ない」

 

「今にも寝そうだけど」

 

 

ジェジュンは手を止めて、体だけをユノに向ける。

 

どうしたものか。

 

ジェジュンもそろそろ寝ようと思っていたのだが

ここで寝られると居場所がない。

かといってユノの部屋で寝るというのも違う気がした。

 

 

「ねえ、寝ないで」

 

「寝て…ないって…」

 

「ユノ」

 

「ジェジュン」

 

「な、何?」

 

「昔の俺ってどんなだった?」

 

「え?」

 

「お前と遊んでた頃の俺」

 

 

ゆらゆらと眠気を纏ったユノが

突然そんなことを聞いてきて

ジェジュンは一瞬迷うが

質問を投げかけたところで彼は

もう半分ほど眠っているみたいに見えた。

 

きっと何を言っても明日には覚えてないだろう、と期待して

ジェジュンは口を開く。

 

 

「俺ね、昔学校でイジメられてたんだ。

って言っても今考えると大したことじゃなかったんだろうけど

それでも一時期学校に行くのも嫌になっててさ。

家族に言うつもりもなかったんだけど

ある日、それがバレちゃって

そしたらね、母さんが見兼ねてかジュンスの家に行かない?って言って…

 

年に1回くらいしかジュンスと会うこともなかったし

友達っていうか同世代の子にたいして臆病になってたから

最初は怖かった、ここに来るのも」

 

 

ポツリポツリと話す中で

ユノの小さな寝息が聞こえ始める。

 

 

「でもね…ジュンスも、ユノも普通に接してくれて。

 

学校で何が原因でイジメられてたか分からなかったんだけど

ここで2人と一緒に過ごして

俺がイジメられる原因が学校の中だけのことなんだって気づけたし

世界中の人にイジメられるわけじゃないって勇気が出たっていうか…

 

ジュンスは優しくて明るくて

いつも俺を連れ出してくれてさ。

 

ユノは…そんな俺に希望をくれた。

カッコ良くて、頼もしくて憧れてたんだよ?

自分もユノみたいに強くなりたい、

強くなって同級生とも上手くやっていこうって…」

 

 

ジェジュンは昔の自分を思い出しながら

あの時間がとても大切だったんだ、と懐かしくなった。

 

椅子から立ち上がり、ベッドの端にそっと腰掛ける。

 

見下ろしたユノの顔が隠れていて

起こさないように前髪を退けると

大人になったはずなのに、どこかあの頃の面影を残した寝顔が現れて

何故だか少し泣きそうになった。

 

ユノがどうしてあんな質問をしてきたかは分からなかったが

ここへ来てずっと距離があった自分たちが

近づけた気がしてジェジュンは嬉しくなる。

 

 

「ありがとうね」

 

 

昔と今と、両方のユノにそう言って頬に触れる。

するとユノがその手を取って

擦り寄るように引き寄せた。

 

寝ぼけているとはいえ、ジェジュンはドキリとする。

 

掴まれた手を解けない。

 

寝なくちゃならないのに、この状況はどうしたらいいのか。

いや、そんなの振り解いたところで

酒の入ったユノは起きないだろう。

 

だけど、それが出来なくて

ジェジュンはそのまま空いたスペースに寝転がった。

 

暑くなってきていて良かった、と思う。

でなければ、毛布を掛け合うことになっていたかもしれない。

 

 

「ユノは今もカッコ良いよ」

 

 

横になると急に眠気が襲ってきて

明日どう起きようか、ユノより早く目を覚まさなければと考えながら

閉じていく瞼の重さにジェジュンは負けてしまう。

 

そういえばこんな風に一緒に眠ったことがあったな、と

意識が遠退く中でそんなことを思い出していた。