”YouTubeで観る韓国映画100選”第2弾は、可愛いチョン・ヨンソンつながり…仁川上陸作戦から中国国境への北上という朝鮮戦争の残酷な運命の時期を舞台として戦争の過酷さ・空虚さを独特の感性で描く戦争映画の傑作…「帰らざる海兵」

 

40名ほどの第2分隊の面々はLVT-3(キャタピラ付き上陸用舟艇)に乗り海岸に上陸していく。1950年9月、朝鮮戦争の戦況を一変させる仁川上陸作戦だ。激しい銃撃戦の中を進む分隊は、廃工場で人民軍の激しい抵抗に合うが、母親を殺された幼い少女ヨンヒを保護する。やがて勇猛で冷静なカン分隊長の指揮により敵を殲滅するが、その工場に残されていたのは無残にも虐殺された市民たちの骸で、その中には、ク一等兵の妹スッキの姿もある。成功裏に終わった上陸作戦の勢いのまま国連軍・韓国軍は38度線を越え北上していくが、分隊は軍備袋の中に少女ヨンヒを隠し連れて行く。間もなく分隊に新しい海兵が配属されるが、ヨンヒの証言で、その一人チェ一等海兵はク一等兵の妹らを虐殺した男の弟だと分かり、ク一等兵は憎悪をたぎらせる…この時彼らに、この先中国国境近くで待ち受ける凄まじい悲劇を知る由もない…

 

第1小隊第2分隊カン分隊長に、二枚目というより男くさいチャン・ドンフィ、親北の兄の所業に苦しむチェ一等海兵に、800本もの映画に出たというチェ・ムリョン、妹スッキを人民軍に殺される一等兵キョンイクに、二枚目イ・デヨプ、分隊に救われる孤児ヨンヒに、天才子役チョン・ヨンソン、オンニ(姉さん)と呼ばれる一見ひ弱な通信兵ヨンチョルに、優男キム・ウナ。

 

作られた時代を考えると極めて先見的で優れた作品だと思います。まずスケール感が凄い。冒頭の仁川上陸作戦は本物3両のLVT-3を走らせていますし、終盤の中国国境での戦闘では雪の残る山麓に展開する中国軍(中国人民志願軍)の人海戦術を3000人のエキストラ(実際は映画に協力する韓国軍とのこと)を使い再現し目を疑うスペクタクルになっていたりもします。更に戦闘シーンだけでなく、マッコリ宴や米軍向けクラブでの乱痴気騒ぎ、分隊のマスコットとして大切される少女の視線での戦争・兵隊像といったちょっと夢幻的ともいえる語り口も当時としては驚くほど先端的だと思います。

 

勿論「地獄の黙示録」「プライベート・ライアン」といった強烈な傑作戦争映画を観ていれば”もの足りない”と感じる方も多いでしょうが、今なら簡単にCGで作れる所を本物の爆薬で多くの怪我人を出しつつ必死で作り上げた映像からは、イ・マニ監督を始めとする当時の映画人の執念が迫ってきますし、その屈折した語り口からは、反共や愛国とは無縁の凄まじい戦争の空虚感が迫ってくる圧巻の戦争映画だと思います。これは五つ星しかないでしょう。

 

【YouTube】 돌아오지 않는 해병(1963) / The Marines Who Never Returned (Dora-oji Anneun Haebyeong) <한국고전영화 Korean Classic Film>(英・韓・伊字幕付き)