ホラーといえばやっぱりこのシリーズしかないでしょう…副校長として母校に帰ってきた女教師を巡って、光州の女子高を舞台に過去と現在の惨劇が、という名ホラーシリーズ第6作…「女子高の怪談 6番目の話:母校 (女高怪談 6番目の話:母校)」

 

光州の郊外、セビ女子高校(새빛여고(セビ(多分”新光”)女高)。今は物置として打ち捨てられた昔の洗面所で一人の女子高校生が首を縊り、ネックレスにしていた指輪が床に落ちる…ノ・ウニは光州に向け車を走らせる。志願してセビ女子高校に副校長として赴任するのだ。教師会は横柄な女校長が仕切り、ウニを歓迎してないようだ。女校長はウニに見覚えがあるが思い出せない。ウニはかつてこの学校に生徒として在籍し、途中で転校した過去がある。窓の外を眺めていた成績優秀なハヨンが大事にしていた指輪を落とすと、それは転がり、あの廃洗面所を隠すように並べられているロッカーの方へ転がっていく。ハヨンはロッカーの隙間から奥の廃墟さながらの洗面所に入って行くが、ウニもその後を追って行く…こうして、この二人を中心として、過去と現在の惨劇がその陰惨な姿を見せ始めるのだ…

 

副校長として母校に着任するノ・ウニに、『パリの恋人』で初めて見て以来ずっと応援し続ける大人の魅力キム・ソヒョン、とある事情から苦しむ女子高生ハヨンに、傑作「ハーモニー」で子役デビュー後もう二十歳を超える美形キム・ヒョンス、YouTuberを気取る女子高生ソヨンに、「それだけが、僕の世界」などのチェ・リ、スーパーの笑える娘ミスクに、端役では見た筈のソ・ヘウォン、女子高生時代のウニに、始めて見る美少女キム・ヒョンソ、その親友チェヨンに、「死を告げる女」情報提供者役パク・セヒョン、嫉妬深いイェジに、映画デビューのイ・ジウォン、優等生ムンジョン、配役陣では最も美少女と思えるキム・ジヘ、片足の悪い警備員に、『冬ソナ』から活躍し最近はホン・サンス作品常連の重鎮クォン・ヘヒョ、スーパーを営むミスクの祖母に、お馴染み怪老女優イ・ジュシル。

 

やはりホラーといえば、あまたの美しい女優たちが巣立っていったこのシリーズでしょう。ただ、このシリーズ初めての女流監督であるイ・ミヨンが撮っていますが、そのせいもあってか、これまでの5作と少し感じが変わったように思えます。煉瓦造りの古めかしい女子高という舞台で複雑な因縁が怨霊と惨劇を生む、といった骨格はそのままですが、どこか風格が感じられます。いくつか理由が考えられますが、主演がアラフィフ美女キム・ソヒョンであること(これまで30代以上のヒロインはいません)、ホラーというより本格ヘビー・サスペンスの風味が強いこと、因縁に学校を超える社会派的要素が現れること、などだろうと思います。下世話に言い換えると、これまでのキラキラ・チャラチャラした美少女ホラーから、本格サスペンス・ホラーに成長した、みたいな感じです。ここが、観客の評価を分けると思われ、ナムwikiなどによると、プロ好みの演出・演技として評価されているように見られます。とはいえ、様式美きらめく演出はそのままで、役者も見事でしょう。主演キム・ソヒョンが恐怖に顔を歪めたり必死に逃げ回ったりを極力抑え凛としたカリスマ性を感じさせますし、女子高生たちも雰囲気タップリでこれからの活躍が楽しみだったりします。個人的には、過去からの因縁を体現するベテラン陣、クォン・ヘヒョとイ・ジュシルが物語をビシっと決めてるように思えます。

 

ただ、キラキラ・チャラチャラ好きとしてはちょっと堅苦しい感じが拭えないのも事実で、もうちょっと何も考えない2時間でも良かったんでは、とか思ったりします。この辺りが、観客の好き嫌いを分けるんでしょう。成熟と考えるか、老成と感じるか、ご自身の目で確かめてみるのもアリかもしれません。

 

尚、エンディングで流れるのは、主演キム・ソヒョンが柔らかく歌う「ウニへ(은희에게)」。

 

一応、シリーズ過去作を列挙しておきます。

「女高怪談 囁く廊下」(1998)

「女高怪談 2番目の話 少女たちの遺言 -MEMENTO MORI-」(1999)

「女高怪談 3番目の話 狐怪談」(2003)

「女高怪談 4 ヴォイス」(2005)

「女高怪談 5 心中」(2009)