絶品老婆役イ・ジュシルつながりで…20歳になったばかりの四人の青年を通じて、不条理な世の中を描いて五つ星…「グローリーデイ」

 

浦項(ポハン:半島の南西部)の海岸。砂浜を、20歳になったばかりのチス、サンウ、チゴン、トゥマンの四人はふざけて走り回っている…その夜遅く、人気の消えた浦項(ポハン)の街中を四人は全力で走っている。後を追うのは二人の警官だ。途中で二組に分かれて下町を逃げまどうが、ヨンビと一緒に逃げるサンウが路地から道路に飛び出した所で車に跳ね飛ばされてしまう。その場でヨンビは警官に取り押さえられ、サンウは病院に運ばれる…その朝のソウル。ヨンビはチゴンのマンションを訪ねるが母親は、いないから帰れ、と言う。浪人のチゴンを遊ばせないための嘘だ。しかし、チゴンは三階のベランダから手すりを伝って降り、チゴンに合流する。次はトゥマンだ。トゥマンは大学のグラウンドで父親である野球部監督の特訓ノックでフラフラだ。父親は金を積んで自分の勤める大学に入学させたのだ。ヨンビとチゴンは放送室からいかがわしい声を放送して、怒り狂う監督の隙をみてトゥマンを連れだすことに成功する。三人はヨングが準備した古いバンに乗り込み、サンウを拾いに行く。サンウが明日から浦項(ポハン)海兵隊訓練所に入隊するので、送り届けて前夜祭を楽しもうという魂胆だ。しかし、この一夜の旅行が彼らの人生を大きく狂わせることを、彼らはまだ知らない…

 

父親が服役中で兄と暮らす浪人生ヨンビに、映画で観るのは恐らく初めてチス、祖母と暮らす海兵隊に入隊するサンウに、ボーイズグループ<EXO>の二枚目キム・ジュンミョン、裕福な家の浪人生チゴンに、この後演技派主演級に急成長するリュ・ジュニョル、父親のコネで入学した大学生トゥマンに、優し気な二枚目キム・ヒチャン、ヨンビの兄に、伝説のボーイズグループ<神話>のキム・ドンワン、浦項(ポハン)警察刑事オ班長に、名脇役キム・ジョンス、四人を心配する若いチェ刑事に、「私のボクサー」で好演チェ・ジュニョン、サンウの祖母に、名老優イ・ジュシル、チゴンの母親に、主演作もあるムン・ヒギョン。

 

冒頭のクレジットを見て、制作がイム・スルレだと知り複雑な思いに駆られます。2本の五つ星「牛と一緒に7泊8日」「リトル・フォレスト」の女流監督ですが、一筋縄ではいかない語り口の監督だからです。そのため、襲われる女性を助けた四人の若者の善行が誤解され警察に追われ、一人は車に撥ねられ、三人は警察に拘束されるという序盤の先、どう進んでいくのか全く読めません。四人の無実を信じる若い刑事がいる一方、駆けつけた家族たちは自分の息子や弟だけ助かる道を勝手に探りますし、被害者の女性が有名な美人アナウンサーなので体面と保身に走る放送局まで登場し、物語は実に混沌とした靄の中を進むことになります。それにしても、四人を演じる若い俳優は見事です。自由で楽しい一夜限りの旅行が暗転して世の中の理不尽と向き合っていく不条理を生々しく演じているでしょう。孫の意識が戻らず錯乱するサンウの祖母を演じるイ・ジュシルも圧巻です。

 

好き・嫌いを大きく分けるでしょうし、どちらかといえば、嫌いが優勢なんだろうと容易に想像される類の映画なんだと思われます。しかしながら、善意と希望のオブラート1枚隣に悪意と絶望が同居する世の中を描いて絶品ですし、若い演技者たちの熱演、深い余韻を考えると、五つ星、やむを得ないでしょう。