『ウ・ヨンウ』の善良な上司カン・ギヨンつながりで…ひと昔前のトリップ感覚といった感じかも、暴力と幻覚による悪夢てんこ盛りではありますが…「パズル 戦慄のゲーム」

 

深夜のマンション、14階。エレベーターから、返り血で汚れたピエロ・マスクの男がハンマーを引きずって降りてくる。男は1407号室の前に立つと、おもむろにドアに向かってハンマーを振り下ろす…オフィスの会議室では、部下たちがチョン・ドギュンの部長昇進を祝っている。トジュンはビジネス書の著名な作家でもある。合間を見て今日カナダから娘を連れて帰ってくるはずの妻に電話するがつながらない。1408号室の自宅に帰っても誰もいない。やっと電話がつながると、妻はまだバンクーバーにいると言う。娘の具合が悪く今回は韓国に帰れないそうだ。トジュンは娘の教師マイケルとの浮気を疑っている。翌日、同僚で友人のヨングと飲む約束をするが、居酒屋で待っていてもヨングは来ない。電話すると、妻の誕生日を忘れていた、と謝られる。一人で帰路に着くが、歩いてくる美女とぶつかり、彼女のバッグの中身が散乱する。急いで拾い集めると女は立ち去るが、トジュンは運転免許証が残っていることに気づき、拾って彼女を追いかける。すると女は路地で二人の男に、金を返せ、と責め立てられている。トジュンは警察を呼ぶふりをして女を助ける。女はセリョンと名乗り、トジュンをバーに誘う。寂しくなったらここを訪ねて、と言い残しライターを置いて女は立ち去る。数日後、トジュンはライターの店を訪ねるが、入り口でライターを見せろと言われ、ライターが会員証である秘密クラブのようだ。セリョンはAからDのコースを選べという。何も分からないままトジュンは一番激しいというDコースを選ぶのだが…

 

出世コースのチョン・ドジュン部長に、「パーフェクト・バディ」「剣客」などのチ・スンヒョン、謎の女セリョンとトジュンの妻ミンギョンの二役に、初めて見る美形イ・セミ、トジュンの同僚チェ・ヨングに、『ウ・ヨンウ』の善良な上司カン・ギヨン、トジュンを襲うタクシー運転手に、ホン・ヨングンの名前で「エイリアン・ビキニの侵略」「探偵ヨンゴン

義手の銃を持つ男」オ・ヨンドゥ監督作品で主演を好演ホン・ソベク。

 

KOBIS統計では観客1159人ですし、カッコイイ題名が赤面するようなレベルの作品だと言われても仕方ないでしょう。出世男が秘密クラブで目覚めると隣に美人の死体があって、それ以降謎の男たちに襲われ続ける…といったありきたりなストーリーで、もちろんヒネリもあったりはするんですが、良く出来ている、とはなかなかならないと思います。しかも、幻覚と悪夢を多用し、しかも時制を前後させ、さらに二役を使って展開するため、論理的な正解があるはずの「パズル」という題名には到底そぐわない出来といわざるを得ません。ただ、結構残虐でしかも雑な作りの殺し合いのシーンが繰り返されたりする辺りは、後から思うと妙な納得感が残ったりします。

 

勿論経験はありませんが、ラリるというのはこんな感じかもしれない、と思わせるところがあったりもしますし、もう少し理知的に再構成すればひょっとしたら面白くなったかもしれない、との思いもないわけではありませんが、いずれにしろ、真っ当な観客は近づかない方が良いと思われます。