「模倣霊」に戻ってパク・ヒョックンつながりで…日本の小説を原作に、父娘の体が入れ替わって起きる騒動を描く、ハートウォーニング・コメディの秀作…「パパとムスメの7日間」

 

「大人になったらパパのお嫁さんになる」幼いトヨンがサンテの肩で嬉しそうに話している…涙を拭いながら昔のビデオを観ているサンテを待っているのは「パパの下着と一緒に洗わないで」と金切り声を上げる娘トヨンの姿だ。朝一緒に家を出ても、目も合わせず、同じ駅に向かうのに違う道を選ぶような娘だ。ある時、田舎の祖父(義父)が倒れたとの報せが入る。父母娘三人が急いで向かうが祖父は元気で大したことはないようだ。念のため母親を残して父娘で帰ろうとするが、大きく古い銀杏の木の下で、「自分勝手ばかり言って、こっちの身にもなって」と喧嘩になる。そして帰路の途中、二人の乗る車はトラックと衝突し、二人は病院に運ばれる。翌朝、目覚めたトヨンは病院をうろつくが鏡の中に父親サンテの姿を見て呆然となり、女子高生の姿になったサンテは男子トイレから追い出される。こうして、まさに「相手の身になった」苦難の7日間が始まる…

 

大手化粧品会社在庫処理チーム課長ウォン・サンテに、主演作あまたの芸達者ユン・ジェムン、女子高生の娘トヨンに、キュートなチョン・ソミン、母親に、美熟女イ・イルファ、母方の祖父に、「8月のクリスマス」などの超名優シン・グ、サンテの部下ナ・ユンミ代理に、怪女優イ・ミド、同じくチュ・ジャンウォン代理に、今回は目茶目茶情けない『ウ・ヨンウ』の上司カン・ギヨン、サンテの若き上司チョン部長に、ボーイズグループ<MBLAQ>G.O、トヨンの不良同級生チニョンに、ガールズグループ<Tiny-G>トヒ、トヨンのガリ勉同級生キョンミに、ガールズグループ<4Minute>美形ホ・ガユン、サンテの旧友チョン精神科医に、パク・ヒョックォン。特別出演では、タクシー運転手に、韓国映画界きってのコメディアン、キム・イングォン、バッティングセンターの男に、チャンウォン(昌原)NCダイノスのスラッガー、イ・ホジュン。

 

非国民ゆえ、原作である2006年五十嵐貴久の小説も、2007年舘ひろしと新垣結衣によるドラマも、本作の後に作られた2017年落合賢監督ベトナム版映画も、2022年眞島秀和と飯沼愛による新作ドラマも観ていないのですが、恐らくテーマは、理解し合えない父娘が、体を交換することでお互いを理解していく、というものでしょう。実に冒険的でハートウォーミングな物語だと思います。他の作品と比べるとすれば、ポイントは、やはりユン・ジェムンとチョン・ソミンのチグハグ演技だろうと思いますが、二人とも十分に巧いと思えます。個人的には、後で詳述しますが、三か所の音楽シーンがツボで、このよく鍛錬された爆笑シーンは見逃すのが惜しいと思われます。脇では、トヨンの友人トヒとホ・ガユンのガールズグループ出身コンビのキュートさや、『ウ・ヨンウ』の頼れる上司カン・ギヨンの情けなさが大好物だったりします。

 

ただし難関が一つあって、チョン・ソミンの中年男ぶりは可愛いので許せますが、ユン・ジェムンの女子高生ぶりはかなりメンタルに来るので、そういう類の免疫に自信がない方は一人で観ない方が良いかもしれません。熟慮ください。

 

時代を交錯する名音楽シーンについて。見どころは次の三つ。高校放送部のオーディションでチョン・ミソンが弾き語るオールディーなフォークが、カン・ソネ(강산에)1996年「ひねくれて(삐딱하게)」、次は、カラオケでユン・ジェムンがセクシーに踊り歌うのが、伝説の名グループ<SISTAR>2012年「私一人(나혼자)」、最後は、医師室でパク・ヒョックンとチョン・ミソンが歌い踊るのが、チョリとミエ(철이와 미애)」1993年「お前はなぜ(너는왜)」。これらは観逃せないでしょう。他にも、古いレコード屋で流れ、エンディングの1曲目でも使われる名曲が、キム・グァンソク(김광석)1989年「待って(기다려줘)」、エンディング2曲目は、恐らくこの映画オリジナルの名曲バンド<MC THE MAX>のイ・ス(이수)「お互いに(서로에게)」。父娘の世代ギャップを際立たせる名選曲だと思います。