パク・ソンウンつながりで…体が入れ替わる映画は多いですが、韓国映画の二大キャラ、凄腕ヤクザと苛められっ子が入れ替わり、そこに出生の秘密が絡むという、映画テーマの見本市みたいな辣腕コメディ、これが巧い!…「僕の中のあいつ」

 

ソウルの朝。豪華マンションでは、背中一面に虎の入れ墨が踊る男が、高級な背広や時計選びに余念がない。ヤクザの大手フロント企業ハノ(韓虎)金融社長チャン・パンスで、多くの舎弟が並ぶ玄関で黒塗りのベンツに乗り込む。パンスの命令で、課長マンチョルは立ち退きを拒む木工所に金属バットの連中を連れて乗り込み、キム・ジョンギ社長に判を押させる。仕事の合間、ふと懐かしい食堂”希望粉食(≒粉もん食堂くらい?)”に足を運ぶが懐かしのサンマラーメンは不味くて食えない。そこでラーメンを4杯も食っていたのは例の木工所キム社長の太目の息子トンヒョンだ。急に携帯で呼び出されたトンヒョンの分まで、食堂の女将はパンスに払わせる、「後で贈り物をあげる」と謎の言葉と共に。帰り道、パンスは工事渋滞に巻き込まれ車が動かず降りて煙草を吸うが、その頭上、雑居ビルの屋上では太目トンヒョンが悪童たちにビルの縁を歩かされている。そしてトンヒョンはバランスを崩しパンスに向かって落下、激突する…病院で目覚めたパンスは病院内をうろつくが、目に入ったのはベッドで昏睡する自分の姿だ。そして鏡に映る姿は…

 

太目の苛められっ子高校生キム・ドンヒョンに、ボーイズグループ<B1A4>の長身二枚目チニョン、凄腕ハノ金融社長チャン・パンスに、パク・ソンウン、ヒョンジョンの母で食堂女将ハン・ミソンに、主演作もヒットのもはや売れっ子ラ・ミラン、やはり苛められっ子女子高生オ・ヒョンジョンに、子役ではベテランの美少女イ・スミン、パンスの右腕パン・マンチョル課長に、今回はめちゃめちゃ良い役イ・ジュニョク、トンヒョンの父で元木工所社長に、芸達者キム・グァンギュ、パンスの命を狙う悪役ヤン社長に、お馴染みユン・ギョンホ。特別出演では、パンスの義父で組織の会長に、貫禄キム・ホンパ、食堂の女将や外科医など謎のおばさんに、公私でお騒がせ怪女優キム・ブソン。

 

少なくない”体が入れ替わる”系コメディですが、さすが韓国映画、立ち退きを迫り電ノコで腕を落とすと脅したり、金属バットを振り回しての乱闘などの韓国ノアール風味、金持ち御曹司の関わる陰湿ないじめなどの社会派風味、DNA鑑定が必要な親子関係といった因縁物語風味、それぞれがたっぷり、という所が侮れません。中身がヤクザになった太目の苛めらっれ子が学校内でのし上がっていくことに比較的時間を割いていて、それはそれで痛快ですが、トンヒョンが救う虐められる美少女ヒョンジョンやその母親ミソンとの因縁、パンスの命を狙う悪役ヤクザが絡み、絶好調の展開といえるでしょう。役者では、「美女はつらいよ」で使われ始めたと思われる太目特殊メイクのチニョンの使い方が巧いですし、個人的には、男勝りのラ・ミラン、義理堅いパンスの右腕イ・ジュニョクが大のお気に入りです。監督はカン・ヒョジンですが、「花嫁はギャングスター」で変化球ヤクザ映画を切り拓き、個人的にはその後「パンチ レディー」「六穴砲強盗団(邦題:ミス・ギャングスター)」という2本の五つ星を撮った腕前は衰えていないという所でしょう。

 

190万人を超える集客なのでこの手の映画では大ヒットといえるでしょうし、十分にその実力を備えていると思います。さすがに五つ星にはやや及びませんし、チニョン以外に韓流的華やかさも乏しいとは思いますが、比較的広めにお勧めできるハートウォーミング・コメディでしょう。

 

激しいトレーニング場面とエンディングで流れるポップな楽曲は、<PARAN>というグループの”ACE”ことチェ・ソンウク(최성욱)が歌う「Stop and Go」。