好感度の高いキム・ホジョンつながりで…財閥系美術館副館長の妻と人気大学教授の夫というパワー・カップルの欲望にまみれたパワーゲームをスマートに描いて秀作…「上流階級」

 

カンナム(江南)、高級高層マンション脇の公園、財閥系ミレ(未来)美術館副館長オ・スヨンは朝のジョギング中だ。大学では、満員の学生を前にスヨンの夫チャン・テジュン教授が経営学の講義中だ。改装中のミレ美術館では再開館展の準備に忙しいが、副館長スヨンが進めていた新人展は、新たに室長に就任した財閥令嬢ミン・ヒョンにひっくり返される。ファラン館長に掛け合うが財閥の意向は強く、スヨンが狙う次期館長の座も危ういようだ。そんな時、財閥解体デモにボランティアとして参加したテジュンは、老人が焼身自殺を図るのを見て、身を挺して老人の火を消す。このことがネットに流れ、既にTV主演で人気があったテジュンは、さらに美談のヒーローとして持ち上げられる。そして、保守政党民国党から迫りくる総選挙の国会議員候補としてスカウトされる。こうして夫婦は、それぞれの野心が燃え上がり、危険なゲームに身を投じていくのだ…

 

人気の経済学教授チャン・テジュンに、硬軟自在の名優パク・ヘイル、その妻でミレ(未来)美術館副館長オ・スヨンに、演技力抜群のスエ、ミレ(未来)グループのハン会長に、今回は怪演ユン・ジェムン、ミレ(未来)美術館イ・ファラン館長に、主演作「正直な候補」の続編も公開され絶好調ラ・ミラン、スヨンの元恋人でデジタルアート作家シン・ジホに、二枚目イ・ジヌク、テジュンの美貌の秘書官ウンジに、美しい裸体も晒すキム・ギュソン、民国党アン国会議員に、どう見てもヤクザにしか見えないキム・ヘゴン、民国党チョン代表に、ベテランのナム・ムンチョル、政財界の悪を狙うチョ・ヨンソン検事に、ベテラン脇役チャン・ソヨン、ハン会長の日本人秘書大島南に、見たことはありませんがAV女優だというキュートな浜崎真緒、テジュンのチョン秘書官に、『ウ・ヨンウ弁護士』の上司カン・ギヨン、スヨンを心配するホ・ユンジュ医師に、キム・ホジョン。特別出演では、政財界を裏でつなぐフィクサー、ペク・クァンヒョンに、善悪どちらも巧いキム・ガンウ。

 

まず、Netflixで観ましたが”Extended Cut”とあり、オリジナルより17分長いようです。そのせいもあってか多少冗長な感じはありますが、爛れた上流社会をスマートに描く良作だと思います。ただ、こういうテーマがお得意なイム・サンスやパク・チャヌクという天才監督作品と比べると、美しく歪んだ大傑作になってない、連続ドラマ風にすんなりまとめた、という感じは否めません。その辺が評価を分けるでしょう。脚本は正統派で、一体どう収めるんだろうか、というサスペンスを保ちつつ、政財界に渦巻く汚いパワーゲームを山あり谷ありに描く腕前は確かだと思います。役者では、屈折した悪役風のユン・ジェムンとラ・ミランが相当な好物だったりします。それと、エンドのエピソードが相当に笑えたことは、付け加えておきたいと思います。

 

汚い世界を描いているにも関わらずスマート過ぎて毒気が少ない感じが物足りなくはありますが、良くまとまったハイソサイエティ・フィクションとして評価できると思います。尚、日本人AV女優も出ていて、地上波では絶対に流せないAV顔負けの情交シーンが出てくるので(”Extended Cut”だけかもしれません)、一緒に観る人は選んだ方が良いかもしれません。

 

ちなみに、エドワード・ホッパーという米国画家について”‪オバマの執務室にあったとか”というセリフがあって調べてみましたが、事実、大統領執務室(オーバルルーム)で二枚のホッパー作品に見入る後ろ姿のオバマ大統領の写真が有名なようです。ただし、買ったのではなく、ニューヨークのホイットニー美術館からの貸し出しとのことです。