渋めのキム・ソンギュンを続けますが…360万人近くを集めた「神の一手」の続編で、やはり210万人を集めたので人気シリーズと呼べるでしょう、前作同様ものすごい劇画チックはそのままに囲碁アクションの傑作…「鬼手 キシュ」
1988年、両親を亡くした幼い”鬼手”は姉と共に囲碁ファン九段の家で雑用をして暮らしている。見よう見まねで囲碁の力をつけている。ある日、ファン九段が姉にいかがわしい振る舞いに及ぶのを見て、”鬼手”はファン九段に勝負を申し込むが惨敗する。”鬼手”は横たわる姉の財布を握ってソウル行の列車に飛び乗る。”鬼手”は碁会所に飛び込み、賭囲碁で100ウォン硬貨を徐々に増やしていく。その様子を見ていた片腕の賭囲碁師ホ・イルドは”鬼手”をスカウトする。”鬼手”は寂れた山寺に籠り、イルドの凄まじい鍛錬に耐え抜く。そしてついに下山する日がやって来る。”鬼手”の賭囲碁地獄が始まったのだ…
”鬼手”に、凄い肉体を披露するクォン・サンウ、”鬼手”の興行師トン(糞)先生に、今回は笑えるキム・ヒウォン、”鬼手”の師匠ホ・イルドに、今回は厳格なキム・ソンギュン、プサン(釜山)の賭囲碁師チャプチョ(雑草)に、悪人顔ホ・ソンテ、”鬼手”を仇と狙うウェットリ(ひとりぼっち)に、二枚目ウ・ドファン、プロ棋士ファン九段に、迫力のチョン・インギョム、チャンソン(長城)の賭囲碁師ムーダン(巫女)に、これも迫力ウォン・ヒョンジュン。特別出演では、闇賭クラブの女将ホン・マダムに、美魔女ユソン。
前作「神の一手」もそうでしたが、とにかく劇画そのものの非道徳的で陰惨なビジランテ(私的復讐)ものです。特に囲碁勝負の奇天烈さは圧巻で、白黒の区別のない双方透明な碁石での対戦(要するに脳内囲碁)、とか、列車が迫りくる鉄橋や溶鉱炉での勝負、100人のプロ棋士相手の対戦、とかもはや劇画でもやりすぎ、といった感じです。ただそれがやたら刺激的で、さらに、クォン・サンウの凄い割れ具合の腹筋やド派手で奇抜な格闘アクションも堪能できるので、さすが210万人を集めただけのことはあります。前作同様”トン(糞)”とか”幻惑手”とか”シチョウ(四丁:ある状態の石の並び)”とかのサブタイトルに区切られ、まさに連載漫画を楽しむ感覚もお洒落だったりします。役者も見事で、ホ・ソンテ、ウ・ドファン、チョン・インギョム、ウォン・ヒョンジュンら仇役も良いですが、まぁ味方である厳しいキム・ソンギュン、ちょっと息抜き風キム・ヒウォンとユソンが良い仕事をしていると思います。
どう見ても劇画以上のものではないので、これが映画か! という怒声や、道徳も倫理もどこ吹く風といった感じなので、善良な観客の溜息も聞こる気がしますが、まぁ、面白けりゃ良いんじゃない、といった観客前提の傑作だと思います。少なくとも、良い子は近づいてはならないでしょう。
ちなみに、前作の感想でも書きましたが、どう見ても漫画が原作だと思いながら見つからなかったんですが、今回も見つかりません。ただ監督は違うものの脚本がどちらもユ・ソンヒョプということなので、連作の映画用脚本なのかもしれません。だとすると凄腕だと思います。