イ・ソンテ監督が五つ星「不夜城の男」に先立ち撮ったデビュー作があったので…ソウル 龍山(ヨンサン)を舞台に、繁華街の底辺で生きる若者と中年男の暴力・悲哀をインディーズ風に描く…「アンダードッグ 二人の男」

 

ソウル 龍山(ヨンサン)。チニルは家出少年少女4人組として、車上荒らしやバイク窃盗でのその日暮らしだ。しかし金も尽き、メンバーのカヨンはチニルが止めるのも聞かず”パパ活”に手を出そうとする。BMWに乗ってモーテルに現れたのは熊みたいな男だ。熊男ヒョンソクはカヨンと部屋に入ると、自分の違法カラオケ店で働かないかと言い出す。他の三人はカヨンを止めようとモーテルの部屋になだれ込み、何とか四人で逃げ出し、ヒョンソクのBMWで逃げる。チニルがネットでBMWをネットで売ろうとするが、買い手として現れたのは、チニルたちが殺人で密告したが、親の金の力で6ケ月で出所したソンフンだ。ソンフンはチニルへの復讐心で狂っている。その頃、ヒョンソクは奪われたクレジットカードの使用履歴からチニルたちを追っている。こうして龍山(ヨンサン)での血塗られた追跡劇が幕を開ける…

 

違法カラオケ店経営ヒョンソクに、クレジットの先頭は2本目マ・ドンソク、4人組リーダー、チニルに、<シャイニー(SHINee)>というグループのメンバーだという二枚目チェ・ミノ、復讐に狂う御曹司ソンフンに、モデル出身キム・ジェヨン、4人組カヨンに、「PIPPI」1曲しか聞いたことのないガールズグループ<2EYES>のメンバー美貌のタウン、4人組ポンギルに、名脇役イ・ギヨンの甥だとうイ・ユジン、4人組ミンギョンに、キュートなペク・スミン。

 

実は正確な定義は分かってませんが、全編揺れる手持ちカメラで撮られていていかにも”インディーズ”風匂いなので、その辺りが評価を分けるでしょう。特に、マ・ドンソクらしい作品を期待して観ると、違和感が大きいかもしれません。しかし脚本は、五つ星「不夜城の男」の作者が作っただけあって、良く練られています。家出少年少女4人組、違法カラオケ店経営”熊”男、その妻子、出所したばかりの御曹司狂犬、金貸し、盗品売買屋が”組んず解(ホズ)れつ”展開する攻防戦は、やはり群像劇の匂いを漂わせながら、一方で純文学風純愛物語も見せるというトリッキーな構成で悪くありません。強すぎず朴訥としたマ・ドンソクの魅力も十分に堪能することが可能でしょう。

 

全体としては、バイオレンス・アクションという感じより、繁華街の底辺で蠢き呻吟する人間たちを描く文芸ドラマという後味が強いので、がっかりする人もいれば、思いのほか好感する観客もいるだろう、という賭博性の高い作品になっていると思います。定額見放題で観るのが無難なんでしょう。ちなみに、邦題「アンダードッグ(弱者)」や原題「二人の男」も良いですが、英語タイトル“Derailed(脱線)”の方が、映画の雰囲気を良く表していると感じたりします。