ヒロインの唯一の協力者を演じたテ・ハンホつながりで…パイプラインに穴を開けて石油を盗む、という荒っぽい犯罪を軽妙に描く…「パイプライン」

 

町はずれの巨大なビニールハウスに、出前を装った自称”ピンドリ”が入っていく。待っているのは盗油業者”パルテ(ストローの意味)”だ。”パルテ”が床の花壇をずらすと地下への入り口が現れる。そこを降りるとトンネルがあり地下に埋設された石油パイプラインが見える。自称”ピンドリ”の仕事はその給油管に穴を開けることだ。石油の流れが止まる僅か3分間に穴を開けなければ、油蒸気が噴出し危険だ。自称”ピンドリ”は3分タイマーを起動しドリルを給油管に突き刺していく。ギリギリで穴が開くが、その時石油が流れてきて油蒸気が噴き出す。連中は必死で逃げ、間もなく油蒸気に引火しビニールハウスは大爆発を起こす…爆発現場ではチョ警官が”ピンドリ”の仕事とにらんで調べ始める…本物”ピンドリ”がポルシェで工房を出る。油盗職人斡旋業”クソ将軍”に呼ばれ、偽”ピンドリ”がしくじった仕事を改めて斡旋に来たのだ。”ピンドリ”が現場に着くと、さっそくドリルを給油管に突き刺し、僅か1mmを残しドリルを抜く。すると石油が流れ出すと油圧で穴が開通するのだ。その腕前に惚れた”パルテ”は新しい仕事を紹介すると言う。こうして”ピンドリ”は危険な大仕事に挑むことになる…

 

穴あけ職人”ピンドリ(ピンドリルの意味か?)”に、二枚目ソ・イングク、悪役精油会社代表ファン・ゴヌに、モデル出身イ・スヒョク、溶接職人”チョプセ(くっつけ屋くらい?)”に、歌手でもあるウム・ムンソク、地質職人ナ課長に、お馴染み脇役ユ・スンモク、掘削職人クンシャプ(大きいショベル)”テ・ハンホ、”ピンドリ”を追うチョ警官に、こちらもお馴染みペ・ユラム、監視係”カウンター”に、美形ペ・ダビン、斡旋屋”クソ将軍”に、「B型の彼氏」の脚本を書いたという才人ソ・ドンウォン、盗油業者”パルテ”に昔からファンのチ・デハン。

 

パイプラインから石油を盗む、という斬新な発想から生まれた脚本はなかなかの出来ばえだと思います。ただ、演出と役者がピンと来ないので、個人的には没入できないなぁ、という感じです。主人公の台詞に”石油の時代は終わりだ。出所する時にはEV車で迎えに行くよ”というのがありますが、幾分オールド・ファンッションドな犯罪なので、映画美術を始めとして、もっと生臭く古臭い方がピッタリくる感じです。役者陣も貫禄不足の感は拭えず、若手・中堅が頑張ってはいますが、平均年齢をもう10~20歳引き上げれば、1953年版「恐怖の報酬」のようなダークなサスペンスが生まれたように思います。

 

あくまで個人的感想ですが、全般に軽い感じが面白みを邪魔している、という評価です。その分気楽に観られるんでしょうが、惜しいと思います。

 

楽曲について。”チョプセ”演じるウム・ムンソクがカラオケでがなるのは、ナム・ジン(남진)2008年「私だ、私(나야 나)」と全羅道の民謡である南道民謡「セタリョン(鳥打令)」。なお、映画のメイン楽曲は内容通り「Pipeline」で、エンドクレジットには「原曲:The Vantures」の表記がありますが、勿論「The Ventures」の誤記でしょう。クレジットの誤記はなかなかお目にかかれません。ついでに、この名曲の作者(Song Writer)は「Brain Carmen,Bob Spickard」となっていますが、この二人は米ロックバンド<シャンテイズ(The Chantays)>のメンバーで、<The Ventures>のはカバーです。従って、原曲は<The Chantays>とするのが正確ではないかと思われます。