もう一本大御所キム・ヘス主演作を…「コインロッカーの女(原題:チャイナタウン)」に次いで闇社会に生きる女を美しく、そして、凄絶に演じて圧巻…「修羅の華」

 

高級ホテル「ラテット」では美しい女性たちが全裸でスタンバイしている。やがて各界の要人が一人また一人とやって来て、その女性があてがわれていく。要人たちはそれぞれの痴態を演じるが、それを隠しカメラでモニターしているのは、ジェチョル・グループの会長秘書ナ・ヒョンジョンだ。その中には、ジェチョル・グループの闇を追求するチェ・デシク検事の姿もある。次は、キム・ヘチョル会長のもう一人の右腕イム・サンフン室長の出番だ。盗撮動画をネタに要人たちに法外な契約にサインさせる。サインを拒むと、セメント詰めか犬の餌だ。ヒョンジョンはチェ検事を呼び出す。チェ検事は買収にも交渉にも応じないと強気だが、ヒョンジョンはどちらでもなく脅迫だと言ってホテルの動画を見せる。チェ検事は検事総長の娘と結婚したばかりだ…やがて、ヒョンジョンに過去の恨みを持つ仁川(インチョン)組織の二代目コンミョンが乗り込んできて、さらに、フィリピンに留学させていたチェチョルの息子も帰国し、事態は急速に緊迫してくる…

 

会長秘書ナ・ヒョンジョンに、キム・ヘス、汚れ役イム・サンフン室長に、悪役も巧いイ・ソンギュン、チェ・デシク検事に、最近活躍著しいイ・ヒジュン、キム・ジェチョル会長に、個人的にはチェ・ミョンスの名前時代から応援している名脇役チェ・ムソン、キム・ジェチョルの息子キム・ジュファンに、この後「王と道化師たち」でも活躍二枚目キム・ミンソク、「ラテット」の女ウェイに、童顔で激しい艶技オ・ハニ、「ラテット」を仕切るキム女史に、「エマ夫人」などのかつてのエロメロ路線で活躍したらしいアン・ソヨン。友情出演では、仁川(インチョン)組織の片目の二代目コンミョンに、「最悪の一日」などの二枚目クォン・ユル。

 

観終わった印象が、まるで出来の良いミュージック・ビデオを観た後みたいだったので調べると、撮影監督が「ソウォン/願い」「ビューティー・インサイド」「沈黙、愛」など絵作りが印象的なキム・テギョン撮影監督だと知り何となく納得です。決して美しいという意味でなく、スクリーンをキャンバスのように使う絵画性みたいな感じが強いといったところです。だからといって脚本が安っぽいわけではありません。7人の登場人物たちの複雑な関係、上司部下・親子・仇・敵を上手く書き分けていますし、その間の忠実・裏切り・岡惚れ・殺意みたいな暗鬱な心情も良く伝わります。とはいっても、やはりキム・ヘスのビジュアルが圧巻でしょう。金髪剃り上げに皮や毛皮のロングコートの印象が圧倒的で、どんな場面をとっても絵になっているという感じには脱帽です。

 

「心をつかむには、その人の大事なものを守ってやればいい。自分が大切な人になろうとするな」といったハーボイルドな台詞も光る、ビジュアルでダークなバイオレンス・アクションの傑作だと思います。ただし、激しいボカシ入り濡れ場もあれば、流血量も十分なので、誰かと一緒に観るなら、相手を選んだ方が良いでしょう。

 

メモ。チェ検事に「SM5を9年も乗ってる」という台詞がありますが、2~300万円の中級セダン「ルノーサムスン・SM5」だと思われます。