「レッスル!」に戻って大好きなオ・ジョンセつながりで、驚くほど斬新な構成で怖がらせてくれるタイムパラドックス・スリラーの傑作…「THE CALL ザ・コール」

 

田舎道をソヨンがキャリーバッグを引いて歩いている。後ろから来たイチゴ農園のトラックが止まり、ソヨンを拾って実家へ送る。運転手は昔から知るイチゴ農園主パク・ソンホだ。ソンホは「母親の見舞いに行ったか」と聞く。ソヨンの母親は脳腫瘍が見つかり入院、ソヨンは無人となった実家に向かっているのだ。実家の古い洋館に着いたソヨンだが、携帯をどこかに置き忘れたことに気づき、止む無く古いワイヤレス有線電話をコンセントにつなぐ。夜、その電話が鳴る。電話の女は「母親に閉じ込められた」という。ソヨンが間違い電話だと告げると、相手は電話切る。そして、この電話がソヨンを恐怖に陥れるのだ…

 

ソヨンに、『天国の階段』チェ・ジウの少女時代でデビュー以来間もなく20年パク・シネ、恐怖の電話相手ヨンスクに、文芸「バーニング 劇場版」ラブコメ「恋愛の抜けたロマンス」など多芸な美形チョン・ジョンソ、ソヨンの母親に、美魔女キム・ソンリョン、ヨンスクの義母チャオクに、個性派美形イーエル、イチゴ農園ソンホに、大好きなオ・ジョンセ、派出所ペク巡査に、主演作連発のイ・ドンフィ。

 

リメイク作品ですが、驚くほど考え抜かれた脚本に圧倒されます。オリジナルは2011年マシュー・パークヒル(Mathew Parkhill)監督の英映画「THE CALLER(邦題:恐怖ノ黒電話)」で、「リメンバー・ミー」みたいに20年前の過去と現在をつなぐ電話(無線機)、大味ながら忘れられない「サウンド・オブ・サンダー」みたいに過去の変化が現在を破滅させる恐怖、さらに殺人狂が絡むというアクロバティックな脚本ですが、見事な完成度だと思います。同じ洋館の中での過去と現在との通話が、現在の洋館や登場人物の様相を次々と変化させる恐怖は相当なものですし、特に、同じ建物内で過去・現在同時進行する惨劇のクライマックスへの持っていき方には脱帽です。

 

リメイクでなければ五つ星に値する脚本だと思われるものの、タイムパラドックスの質を判断するほどの能力がないため見送りますが、韓国映画らしいダークさと怖さと残酷さを兼ね備えた優れたスリラーだといえるでしょう。

 

ちなみに、ヨンスクが見ているチキンのCMは、今もあるフランチャイズ「ペリカナ(페리카나)チキン」で、俳優は「裸足のギボン」へも出演したチェ・ヤンナク(최양락)というコメディアンのようです。また何度か登場する父母子熊を模(カタド)ったグミは、これまた今も食べられる「コマゴム(小熊:꼬마곰)」。

 

楽曲ですが、ソ・テジ(서태지)のファンだというヨンスクのためソヨンが聞かせるのは(後の音楽なので時間規制違反ですが…)2001年「ウルトラメニヤ(울트라맨이야)」ですが、ウルトラ・マニアかと思いきや、MVを見るとウルトラマンが登場するので「ウルトラマンだ!」のようです。