2019年9位3,364,712人を集めたのは、巨体ヤクザとヤサグレ刑事が危ういタッグを組んで連続殺人狂を追うという、とんでもないサスペンス、それでもあわや五つ星…「悪人伝」

 

韓国中西部、天安(チョナン)市。夜の街を一台の白いセダンが流している。やがて黒い車の後ろにつき、人気のない道に入った所で、スピードを上げ、わざと追突する。運転手が怒って降りてくるが、白いセダンの運転手はナイフでめった刺しにする…天安(チョナン)警察刑事チョン・テソクは殺人現場への急行中、渋滞に巻き込まれる。テソクは部下に運転を任せ、とあるビルに入っていく。違法換金をする暴力団の遊技場だ。テソクは若い換金係を逮捕し、そのバイクで殺人現場に向かう…ゼウス派の事務所では、ボスのチャン・ドクスがサンドバッグを執拗に殴っている。サンドバッグを下ろすと、そこには血まみれのヤクザが入っている。ナワバリを荒らした敵対するサンド親分の若い衆だ…テソクが現場に着くと、あの黒い車だ。テソクは連続殺人を疑う…トクスが敵対するサンド親分との手打ちの帰り一人ベンツを運転するが、やがてあの白いセダンが尾け来て、人気のない道でベンツに追突する。特に気にしないトクスだが、背を向けた時、セダンの運転手はナイフを突き刺す。トクスも反撃するが、めった刺しにされやがて気を失う。こうして、連続殺人狂は、狂ったヤクザと狂った刑事を敵に回したのだ…

 

暴力団ゼウス派のボス巨体チャン・ドンスに、マ・ドンソク、天安(チョナン)警察刑事チョン・テソクに、キム・ムヨル、連続殺人狂カン・ギョンホに、「犯罪都市」でもマ・ドンソクを敵に回したキム・ソンギュ、テソクの上司アン班長に、お馴染みユ・スンモク、トンスの忠実な右腕オソンに、渋いチェ・ミンチョル。友情出演では、トンスに敵対する親分サンドに、演技派ユ・ジェミョン。 特別出演では、美人鑑識チャ・ソジンに、「美人図」などの美形名女優キム・ギュリ。

 

劇画にするのも憚(ハバカ)られるトンデモ・ストーリーですが、映画の冒頭には実話に基づくフィクション、とのテロップが入ります。調べると2005年の「天安(チョナン)連鎖殺人事件」らしいですが、事件の概要は全く異なっているようです。それはそれとして、映画の質は極上です。まず観客に、マ・ドンソクとキム・ムヨルのどちらに思い入れるか、そう迫るテクニックが抜群です。決して信頼し合ってない二人の危険で脆(モロ)い関係が映画をメチャメチャ面白くしています。そしてもう一点は、エンディングへの煽(アオ)り方です。連続殺人狂を捕まえた時「何が起きるか全く想像できない」それが、凄まじいサスペンスを生み出しています。それにしても、ヤクザ、刑事、連続殺人狂、3台の車による狂ったカーチェイスなど、他の映画ではまず見られないでしょう。

 

個人的には、若干筆が滑ったような展開があるので五つ星を見送りますが、五つ星級の傑作サスペンスだと思います。ただし、良識のある方は対象外です。ちなみに、マ・ドンソクがニヤリとするシーンが3~4か所ありますが、その凄みがあって可愛い感じは一見の価値があるでしょう。ただし、常識のある方は対象外です。