もう一本カン・イェウォン主演作をいきますが、さすがに連続での監禁スリラーはメンタルにきそうで辛かった、広大な密室サバイバル…「悪魔は見ていた」

 

夜景を見下ろす部屋、PC上の複数の監視映像は、バツイチ、シングルマザー、優秀な美形チーム長ソ・ヨンウがエレベーターで地下に降り、地下駐車場から車を出し、帰宅する様子をリアルタイムで追いかけている…クリスマスまであと2日。ソウルのど真ん中、汝矣島(ヨイド)の高層ビル。ヨンウの車が部下のミニを乗せて、外出先から地下駐車場に戻ってくる。資料の束があるのに、後輩のミニは知らん顔をしてオフィスに戻っていく。ヨンウが資料の束を抱えるが、崩れて地面に散らばる。そこを助けてくれたのは、地下駐車場担当の警備員イ・ジュノだ。彼は資料を抱え、エレベーターまで運んでくれる。オフィスに戻ると、上司のチェ室長が無理な仕事を押し付けてくる。夜遅くまで仕事をしていると、チェ室長が飲み会から一人で戻ってくる。そして、給湯室でヨンウに抱きついてくるが、ヨンウは振り払い帰宅する。クリスマス・イブ。社内放送は、今日24日の22時から27日朝までビルが封鎖され出入りができない、と伝えている。この日も深夜まで仕事をするヨンウだったが、22時ギリギリで終え、地下の自分の車で帰ろうとするが、ドアを握った瞬間に感電して気を失う。水漏れの上、電源ケーブルが垂れ下がっていたのだ。気が付くと、警備員室だ。そして、赤いドレスに着替えさせられている。見下ろしているのは、警備員イ・ジュノだ。こうして、ヨンウのサバイバルを賭けた死に物狂いの長い夜が始まる…

 

優秀な美形チーム長ソ・ヨンウに、カン・イェウォン、地下駐車場警備員イ・ジュノに、今回はカン・イェウォンを苛(サイナ)む側に回ったイ・ハクチュ、パワハラ・セクハラ上司チェ室長に、善人役も多いチュ・ソクテ、ジコチューなヨンウの部下ミニに、本当は可愛いはずのイム・ジヒョン。特別出演では、1階警備員に、韓国映画界を支え続けてきた重鎮ミョン・ゲナムことトン・バンウ、酔っ払いに、いつもは笑えるチョ・ダルファン。

 

クレジットによれば、この作品は、2007年アメリカ映画フランク・カルフーン(Franck Khalfoun)監督「P2」 (駐車場の駐車位置を示す位置記号)のリメイクのようです。ちょっと意外な感じもしましたが、確かに、ハリウッドにもこんな執着性サイコの映画は少なくないかもしれません。原作を観てないので原作の魅力かはわかりませんが、職場のゴタゴタ、携帯香水やウサギのケーキなどの伏線や小物がよく効いているのもありますが、何より、封鎖された広大な地下駐車場、“巨大な密室”という舞台設定がポイントでしょう。しかしながら、それだけにとどまらない恐怖が裏側に仕掛けられているのも注目かもしれません。

 

美人ホラーの定番通り、前半は意味不明の恐怖に苛(サイナ)まれ、後半は凛々しく反撃に転じる、という展開自体に特段の驚きはないので、観る、観ないは、カン・イェウォンの魅力への感度次第でしょう。勿論、相当に残酷なシーンもあるので、そこんところもご配慮を…

 

ちなみに、折角パトカーが地下駐車場に入ってきたのに、大音響で流れていて彼女の助けを求める声が聞こえなかった楽曲は、ヴィットーリオ・モンティ(Vittorio Monti)作曲「チャールダーシュ(Czardas)」。