イ・ギョンヨンが大統領から不思議な警備員に転身して、よく出来たミステリーとも、ほろ苦いラブストーリーともつかない、日流作品…「甘酸っぱい」

 

新しい運動靴の話。ちょっと太めのチャンヒョクが急性肝炎で病院に運び込まれる。工大情報工学科の学生で就職先が決まった矢先のことである。幸い大事には至らないが、チャンヒョクを担当するのは非正規看護師でベラボーに可愛いチョン・ダウンだ。チャンヒョクは一目で惚れてしまう。タウンも疲れたと言ってはチャンヒョクのベッド脇で仮眠し、お腹がすいたと言ってはチャンヒョクの食事をつまみ食いし、まんざらではない様子に見える。退院後もタウンが忘れられないチャンヒョクは、何もないながら彼女のアパートに泊めてもらい、さらには済州島旅行に誘われることになる。果たして…

 

この手の作品はキャスト整理が難しいんですが…チャンヒョク1に、「ザ・バッド・ガイズ」のイケメン元刑事チャン・ギヨン、美貌の看護師チョン・ダウンに、ここ数年ドラマ出演連発キュートなチェ・スビン、チャンヒョク1の建築事務所同期ハン・ボヨンに、<少女時代>元メンバーのジェシカを実姉にもち自身もハイセンスなガールズグループ<f(x)>メンバーのクリスタルことチョン・スジョン、チャンヒョク2に、ちょっと太めのイ・ウジェ、建築事務所チーム長に、今回は英語ギャグ連発の名コメディアンで大ファンのパク・チョルミン。特別出演では、謎の警備員に、イ・ギョンヨン、チャンヒョク2の父親に、名脇役アン・ギルガン、建築事務所CEOに、もはや美熟女の域ユソン。

 

どこまでがネタバレか分かりませんが、以下この映画の原作に触れており、それ自体がネタバレの可能性もありそうなので、ご注意ください。

 

全然知りませんでしたが、この映画には原作があって、日本の推理小説作家乾くるみの小説「イニシエーション・ラブ」及びそれを松田翔太、前田敦子、木村文乃で映画化した「イニシエーション・ラブ」なんですが、そう言うと知っている人は、「ああ、あれか」、「じゃぁ観よう」「じゃぁ観るまい」と分かれるでしょう。wikiによれば原作小説は2005年本格ミステリー・ベスト10で第6位130万部のベストセラーなので知る人も多いはずです。これがミステリーに分類されている作品だとは知らずに観始めたものの、最後の最後に「えっ!?」と思い、エンドロールで原作が日本の小説・映画であることを知った次第です。ラブストーリーとして観ていると、結構ありきたりだったり、早送りしようかと迷う中だるみがあったり、しんどい思いをするかもしれませんし、ミステリーにジャンルされる作品と知って観るのもまた魅力を削ぐかもしれない、という実に微妙な作品だと思います。ちなみに、物語中に刑事事件に類するものは一切登場しませんが、原作小説は「謎解き『イニシエーション・ラブ』」という解説本まで出ているほど緻密な仕掛けで構成されているようで、この韓国版映画でもその片鱗を感じることが出来たりします。

 

知って観るのも、知らずに観るのも微妙ではありますし、ストーリー以外に映画的奥行きに深みはありませんが、主演女優二人チェ・スビンとクリスタルが実に魅力的に撮られているので、それだけでも価値があるのかもしれません。定額見放題なら、暇だけど他に観るものがなくって、って時にボンヤリ観てみるのは選択肢としてありうるでしょう。

 

全くどうでもよいことですが、序盤「肝炎が遷(ウツ)る」と両親や同部屋患者が騒ぐ場面がありますが、肝炎(간염:カニョム)と感染(감염:カミョム)の言葉遊びのようです。