ソン・ガンホに戻りますが、感想を残すだけ無駄に思える作品ですが、一応記録なので…「密偵」

 

このキム・ジウン監督、過去に外れると星0や1がある監督ですが、本作も中盤でギブアップしようか迷いました。これから観る方、観て良かったと思われる方は、ここから先を読んでも不愉快なだけなので、またのお越しをお待ちします。

 

日本統治時代の1923年。義烈団メンバー、キム・ジャンオクが、金持ちに仏像を売ろうとするが、屋敷の周りに異変を感じる。独立運動の資金集めだが、誰かが官憲に密告したようだ。官憲のリーダーは朝鮮人で朝鮮総督府に属するイ・ジョンチュル警務、チャンオクの旧知で投降するように説得する。しかしチャンオクは逃げ出し、取り囲む警官隊と銃撃戦となり、追い詰められたチャンオクは銃で自害する。朝鮮総督府警務局東(ヒガシ)部長は、仏像を餌に、義烈団の京城(ソウル)のリーダー、キム・ウジン、そして本拠地上海のチョン・チェサン団長を捕まえるようイ警務に命じる。こうして、同じ朝鮮人を引き裂く策謀が動き始める…

 

朝鮮人で朝鮮総督府に属するイ・ジョンチュル警務に、ソン・ガンホ、 朝鮮独立を目指す義烈団リーダー、キム・ウジンに、「新感染」などのコン・ユ、同じく義烈団メンバー、ヨン・ゲスンに、大ファン美形ハン・ジミン、同じく義烈団メンバー、チョ・フェリョンに、結構ファンのシン・ソンノク、朝鮮総督府警務局東(ヒガシ)部長に、鶴見辰吾。特別出演では、義烈団団長チョン・チェサンに、ハリウッド俳優イ・ビョンホン、冒頭で死んじゃう義烈団メンバー、キム・ジャンオクに、五つ星常連パク・ヒスン。

 

映画は嘘の世界です。でも嘘にルールがあってこその映画です。スーパーマンはクリプトナイトに弱い、ウルトラマンは3分しか戦えない、どんなルールでも自由ですが、ルールは明示して守るべきです。この映画にはそれがないとしか思えません。映画の解釈が間違っていればお許しください。安東駅から京城(ソウル)駅までの国際列車のシーケンスです。走行中、食堂車で銃撃戦が起き、日本の手先警官と巻き沿いで裕福そうな乗客が殺されます。しかも、一般車両まで追いかけて衆目の中でさらに別の日本の手先警官も撃ち殺します。国境を超える国際列車の中で銃撃戦があり、目撃者もいるのに、次のシーンでは列車内のどこかに犯人たちが集まっていてそこでも内紛で一人撃ち殺され、それでも列車が緊急停止する様子もありません(「新感染」のコン・ユなら走る密室である列車での襲撃劇、逃亡劇の怖さは知ってるはずなんですが…)。犯人の一人はえいやっと原野に飛び降りますが、犯人と疑われない立場の人間がなぜ逃げるんでしょうか。列車が朝鮮の中枢である京城駅に着いて、乗客たちは整然と降りてきます。列車内で銃撃戦があり犯人も所在不明なのにです。しかも駅ではまたも銃乱射事件が起き、多数の死傷者が出ます。国際列車の終着駅で多くの外国人を含む民間人を巻き込む大惨事が起きてるのに、次のシーンでは列車から飛び降りた食堂車事件の犯人に、体の方はどうだ?と治安を担当する上司が穏やかに聞くんです。つまり、目の前で殺人があっても通行人は全く興味を示さず普通に歩き去る、そんなルールでも十分映画は成り立ちますが、それなら少なくともそんな世界だと明示して話を進めるべきです。銃撃戦が撮りたい、列車から飛び降りるシーンが欲しい、それは勝手ですが、せめて辻褄は合わせてほしい、そんな映画だった、ということです。食堂車での銃撃事件をもみ消す話だけでも一本の映画が撮れるでしょう。終盤に入るともっと酷くなりますが、もう書く気力もなくなったので…

 

とにかく涎が出るほど豪華な演技陣なんですが、こんな使い方だけは止めていただきたい、と切に願う一本です。