キム・ユンソクに戻って、韓国映画の十八番(オハコ)、タイム・ファンタジーの秀作…「あなた、そこにいてくれますか」

 

2015年、雨期の近づくカンボジア。派遣された小児外科医ハン・スヒョンは、雨期前最後の帰還ヘリに急ぐ。そこへ、盲目の老人が赤ん坊を連れて近寄ってくる。赤ん坊は口唇裂だ。同僚たちはスヒョンを急かすが、スヒョンは医療カバンを取り、ヘリを降り、へりは飛び立つ。赤ん坊の治療は無事終わり、老人は礼にと言って、金色の丸薬10粒の入った瓶を渡す…30年前の1985年、ソウル大公園。チェ・ヨナは韓国でただ一人のイルカ調教師として大人気だ。その華麗なイルカショーの客席で居眠りしているのは若いハン・スヒョン、ヨナの恋人だ。夜勤明けではるばるやって来たスヒョンにヨナは機嫌が悪い。スヒョンは釜山で医師として働き、遠距離恋愛中なのだ。ソウル駅で京釜線終着駅釜山鎮(プサンジン)行き列車に乗り込もうとするスヒョンに「あなたの子供が欲しい」とヨナが呟く。釜山に着いたスヒョンは公衆電話をかけようとするが、隣のボックスに中年男が座り込んでいる。声をかけると「俺もお前もハン・スヒョンだ」と言い、いなくなる…ソウル行の飛行機のトイレ。鼻血を流しながらスヒョンは目覚める。あの丸薬は、20分間だけ過去に戻ることができる薬だったのだ。病院でスヒョンがレンドゲン画像を見ながら、後輩ソン医師に余命を聞く。肺がん末期、余命半年と、ソン医師は答える。ソン医師は知らないが、画像はスヒョンのものだ。スヒョンにはどうしても会いたい人がいて、二粒目の丸薬を飲む…

 

小児外科医ハン・スヒョン(現在)に、キム・ユンソク、小児外科医ハン・スヒョン(過去)に、「茲山魚譜(チャサンオボ)」ではソル・ギョングとW主演の実力派若手ピョン・ヨハン、ソウル動物園調教師チェ・ヨナ(過去)に、キム・オクピンの実妹でやっぱり美形チェ・ソジン、悪友カン・テホ(現在:ミカン農家)に、実に味わい深いキム・サンホ、スヒョンの後輩医師ソン・ヘウォン(現在)に、「ほえる犬は噛まない」「ファジャン」などで印象深いキム・ホジョン、悪友カン・テホ(過去:警官)に、いつも笑えるアン・セハ、スヒョンの娘スア(現在)に、この後主演級の活躍キュートなパク・ヘス。特別出演では、ヨナ(現在)に、美熟女キム・ソンリョン、スアの母親エレーナ・ホンに、芸達者キム・ヒョジン。監督は、「キッチン」「怖い話(邦題:ホラー・ストーリーズ)第3話-豆ネズミ小豆ネズミ-」「結婚前夜」など大変波長の合う女流ホン・ジヨン、実は旦那も大好きな監督ミン・ギュドンで「世界で一番美しい別れ」「私の妻のすべて(邦題:僕の妻のすべて)」「姦臣(邦題:背徳の王宮)」と3本の五つ星があったりします。

 

韓国映画には「イルマーレ(原題:シウォレ(時越愛))」「リメンバー・ミー(原題:トンガム(同感))」「11時(邦題:タイム・クライム))」など優れたタイム・ファンタジーがありますが、勝るとも劣らない秀作だと思います。原作は、フランス人ギヨーム・ミュッソ(Guillaume Musso)のベストセラー小説「時空を超えて」(2006)で、原作の力もあってでしょうが、1985年と2015年の二つの時で生きるのべ10名を超える登場人物の生き様を描いて秀逸です。個人的には、姉に負けない美貌と存在感のチェ・ソジン、キム・サンホ/アン・セハの二人一役テホ、そして、現在では会話にしか登場しないソニョンが大のお気に入りです。大好きな群像劇風演出が見事なんですが、劇中でも語られるように過去の舞台から5年後に32歳で早逝したキム・ヒョンシク(김현식)のLPレコード(第2集「愛しました(사랑했어요)」)、ハルラボン(済州島のミカン)の誕生秘話、「訪問要望(방문요망)」と彫られた入れ墨とかとか小技も光っています。

 

物理は赤点続きだったので時間理論上のアレコレを判断する能力がない上、最後の1粒を使ったエピローグが気分的に多少微妙なので五つ星にはしませんが、新たな名作タイム・ファンタジーの誕生だと思います。

 

ちなみに、エンドロールで流れるのは、キム・ヒョンシク第2集から「あなたの姿(당신의 모습)」、美しいハーモニーを聞かせるのは、主演の二人キム・ユンソクとピョン・ヨハン、収録の様子はYoutubeで見ることができたりします。