再びコン・ヒョジンに戻って、スタイリッシュなポスターに騙されてはいけません。一見お洒落なサスペンス・ミステリーに見えますが、実は…「女は冷たい嘘をつく」

 

木曜日の朝、チソンは一歳になったばかりの娘タウンの鼻水を見て、韓国語がたどたどしい中国人ベビーシッターのハンメに小児科へ連れて行くように言って仕事に出る。フリーライターの仕事は頭を下げることばかりだ。その夜は、会食で疲れ、帰るなり眠り込んでしまう。金曜日の朝、チソンは携帯で起こされる。離婚調停への出席依頼だ。ハンメが召喚状を誤って別の書類束に入れたのだ。部屋にはハンメとタウンがいないが、ホワイトボードには誤字で小児科と書いてある。判事は判決に従わずタウンを手放さないチソンに厳しく、弁護士も頑ななチソンの親身にはなってくれない。医師である元夫に頭を下げに行くが、自分の母親のせいにしてつれない。遅れて行った職場でも、幼い子供と訴訟を抱えたチソンにはあからさまな嫌味が浴びせかけられる。疲れ果てて家に帰りそのまま寝込むチソンだが、ふと目を覚ますとハンメもタウンも帰っていない。こうして、まわり中敵しかいないチソンの、娘タウンを取り戻す過酷な道のりが始まるのだ…

 

親権訴訟中シングルマザーのイ・ジソンに、オム・ジウォン、中国人ベビーシッターのハンメに、コン・ヒョジン、カンソ(江西)署パク刑事に、「マリオネット」ではイ・ユヨンを守ったキム・ヒウォン。友情出演では、チソンのミン弁護士に、チョ・ダルファン。

 

消えた幼い娘とベビーシッターを探すミステリーとして始まりながら、次第に、韓国に連れてこられた三つの名前をもつ中国人女性の悲惨な過去を掘り起こす物語へと変貌していくという、その語り口は、余りにも容赦なく重苦しくはありますが、巧いと言わざるを得ません。その二人の母性が交錯するクライマックスは、ある意味、神々しく感じるといっても良いでしょう。このエンタメとは程遠い展開を支えるのは、やはり主演のオム・ジウォンとコン・ヒョジンです。芸域の滅茶滅茶広い二人ではありますが、その域すら越えていると思われる難役を見事にこなしていると思います。脱帽です。

 

それゆえ、サスペンス、ミステリー、スリラーといった範疇の感じで近づくのは危険な映画だと思います。母性というものを悲惨で残酷な手法で突き詰めようとした文芸作品として捉えられるかもしれません。小さなお子さんがいたり子煩悩な方は相当慎重に近づかれる方が良いと思われます。ご注意ください。