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もう一本、韓国映画界を代表する二枚目チョン・ウソンの記憶喪失メロを…アラフォーとなった韓流スター、キム・ハヌルとの、知る限り初めての共演、「私を忘れないで」。

人気スターの共演ですが、以下、それなりにネガティブな感想になりそうです。ご注意を。

男が警察署で失踪届を出そうとしている。それは自分自身のだ。男は交通事故で10年間の記憶を失ったのだ。男は遺書のような手紙を残し、警察署から消える…病院。受付がキム・ジニョンの名を呼ぶ。順番を待っているあの男ヨン・ソグォンは、自分の番はまだかと受付に詰め寄る。10カ月前の交通事故でそれまで10年間の記憶をなくしたソグォンは、今は記憶のないまま、日常生活に戻るリハビリ中だ。帰る場所は、記憶にないマンション1203号室だけだ。彼の手首にはリストカットの痕があるが、思い当たる記憶がない。ある朝、見知らぬ男が部屋に来る。彼は馴れ馴れしくソグォンに指図する。ソグォンは彼が親友オ・グォノだと思い出す。しかし、記憶の中の彼より、はるかに年老いている。すぐに法律事務所「チュンジョン」に行く、例え10年間の記憶を失っていても良いと言う。ソグォンは何故か自動車やバスに乗れないので、自転車で事務所に向う。10年間でソウルは激しく変わったと思う。洒落た法律事務所に着くと、スタッフの皆が歓迎してくれる。彼には見晴らしの良い個室があり、手つかずのジクソーパズルが残されている。机には、弁護士ヨン・ソグォンの名札がある。キム・ヨンヒという夫人がソグォンを訪ねて来る。キム夫人の案件は、失踪した夫に関するようだが、勿論、ソグォンの記憶にない。しかも、キム夫人は夫殺しの容疑をかけられているのだ。リハビリで病院を訪れたソグォンは、待合室で再びあのキム・ジニョンに出会う。チニョンはソグォンを見ると何故か涙ぐむ。ソグォンは、チニョンが置き忘れた処方薬を持って、彼女の後を追う。チニョンはバスに乗るが、ソグォンはバスに乗れない。ソグォンが街を歩いていると、見知らぬ男が彼に声をかける。男は、ポヨンは元気か、と尋ねる。男は、AA生命保険の社員ヒョノだ。ソグォンが自転車で事務所に向っていると、青いミニバンが近づく。運転するのはチニョンだ。処方薬を返せと言う。ソグォンは車に乗れないので、二人は、自転車とミニバンを並べて、ソグォンのマンションに向う。その時、チニョンはぬいぐるみの熊を引いてしまう。異常に畏れるチニョンのために、ソグォンは勇気を奮ってミニバンを運転して、彼女を自宅に送り届ける。翌朝、ソグォンが目覚めると、ベッドの隣にチニョンが寝ている。夕べ、チニョンを家に送った後、二人で泥酔しこうなったと言うが、ソグォンに記憶はない。チニョンと、金メダルのキム・ユナもMLBのリュ・ヒョンジンも知らないソグォンはデートを重ねる…ソグォンは記憶のない10年間どんな奴だったのか、チニョンは彼の何を知っているのか、そして、ポヨンとは誰なのか…

10年間の記憶を失ったエリート弁護士ヨン・ソグォンに、韓国映画界で一二を争う二枚目チョン・ウソン、ソグォンに近づく謎の美女キム・ジニョンに、韓流人気スターも既にアラフォーのキム・ハヌル、ソグォンの弁護士仲間オ・グォノに、最近名演が続くペ・ソンウ、夫の失踪事件をソグォンに依頼するキム夫人に、チャン・ジン作品常連など演技派チャン・ヨンナム、ソグォンの記憶に断片的に登場する美女イ・ボヨンに、初めて見る美形イム・ジュウン、生命保険会社勧誘員シン・ヒョノに、いつも笑わせてくれるイ・ジュニョク。特別出演では、謎の神父に、若手演技派ももう三十路を超えたオン・ジュワン、失踪したキム夫人の夫に、『冬ソナ』以来大ファンのクォン・ヘヒョ。

上に書いた出だしを含む前半は、素晴らしい出来ばえだと思います。記憶を失ったエリート美男と近づく謎の美女を軸に、二人を監視するかのような神父、ちらちら影をみせるもう一人の美女、失踪事件、ぬいぐるみ、ジグソーパズル、マークという犬など、様々なアイテムがいやが上にも観客を映画に引きずり込みます。ただ、後半に入り、様々なアイテムが一つの真実に姿を結実していくにつれ、本来ならば、熱い思いに観客を包み込むべき時、「ふ~ん」「そうか」と"
心"ではなく"頭"にしか働きかけない所が致命的だ、という感じです。画期的なスターの顔合わせにも関わらず50万人にも届かない興行結果に終わったのは、やはり『冬ソナ』以来使い古された"記憶喪失"という"物語の臍"が重しになったんだと感じます。似たような構造を持つ五つ星「チャンス商会」(つまり、その原典「やさしい嘘と贈り物(Lovely,Still)」)が"認知症"をモチーフとしたのとの違いなのかもかもしれません。韓国芸能界を代表する美男美女が演じ、多くの観客の涙腺を決壊させる力量を秘めた物語だとも云えますが、そこが映画の難しさなんでしょう。韓国ナムWikiに載る或る映画記者の評価が、個人的には、この映画を激しく言い当てていると思います。シン・キジュ記者「俳優と監督、製作者などがプロットの短所を分かりながらも、この作品にひどく愛情を持ってしまって、そして、(余りに)愛したせいで、観客がまともに没入する余地を与えることができなかった」。映画作品にはありがちな陥穽でしょう。

何カ所か観直したりしましたが、正直、良く練られ良く出来た作品だと思います。ただ、その制作陣の熱い想いが観客に通じるか、はまた別の話だったのかもしれません。個人的にも、高く評価するのは難しいでしょう。日本でも一部で公開されたようですし、11月にはDVDもリリースされるようです。日本でどのように受け止められるのか、気になるところです。