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美人についての雑談から…アメリカの映画評論サイト"TC Candler"で毎年発表される「最も美しい顔(Beautiful Faces)」が今年も発表されました。主観的(subjective)と自ら明言しているので、特段の権威があるわけではありませんが、楽しいランキングです。主催者の趣向でしょうが、今年も韓国ガールズグループのメンバーがてんこ盛りで、1位は前年に続いて"After School"ナナ。13位には昨年「OOH-AHH하게」が大ヒットした韓日台の新人グループ"Twice"台湾出身ツウィ、17位には老舗"Girl's Day"美人ラッパー、ユラが入ってます。ちなみに、ハリポタ、エマ・ワトソンは4位、SW7、デイジー・リドリーは93位だったりします。他にも100位内には、"少女時代" "Fiestar" "Miss A" "Red Velvet" "Secret" といったお気に入りガールズグループからも選ばれていて、本当に主観的ながら、実に共感できるランキングだったりします。さて、本題ですが…

オ・ジホつながりで、きっとインディーズ系サスペンスに違いないと思ってたんですが、観てみると、その芳醇な文芸の香りにびっくり…「アイランド - 時間を盗む島」(아일랜드 - 시간을 훔치는 섬)。

男が済州島に着く。中華料理屋、金寧飯店の主人に、目指す家の道筋を聞く。道すがら、地面に置かれた小洒落たレジャーボートの上で本を読む妙な娘が、男を眺める。その家に着くと、管理人の中年女が鍵を開ける。家の中は物が散乱し、電気も水道も途絶えているが、二階からは、海が目の前に広がる。男は、家を管理する金寧飯店の主人を訪ね、家の相続書類にサインする。家の持ち主が亡くなって3年、ようやく相続人が現れたのだ。主人は、リゾート向けに売ればそこそこ金になると薦めるが、男は、自分が住むんだ、と首を振る。男は、アラスカで漁師をしていたと言う。男が堤防に座って海を見ていると、あの妙な娘が近づいてくる。娘は、あの家には何かを探し回る女の幽霊が出ると言う。夜、男は二つの骨壺と封筒を棚に置き、シャンデリアに結んだ紐の先の輪に、自分の首をかける。そして、まさに椅子を蹴り倒そうとした時、二階から物音がする。階段を二階に向かうと、蝋燭を持った女がむせびながら二階の廊下を歩いている。物音を立てた男に女は顔を向け、男を一瞥すると、何事もなかったかのように歩み去る。一階に降りると、夫婦の会話が聞こえてくる。夫婦は20歳になった娘ヨンジャとキム君の結婚について話しているが、その声は暗い。男は、妻と息子が死んだアラスカでの事故の光景を思い出しながら目覚める。朝だ。いつの間にか床で寝込んだようだ。男は、睡眠薬の薬瓶とシャンデリアのロープを一瞥し、家を出る。そんな様子を覗いている者がいる。あの妙な娘だ。娘は家に忍び込み、骨壺の中を覗き、封筒を開ける。それは、キム・ジュンヒョク、男の名前で書かれた遺書だ。男がスーパーに買い物に行くと、その様子をバイクから見つめる者がいる。やはり、あの娘だ。男が堤防で海を見ていると、あの娘が近づき、突然、詩を口ずさむ。「今日は死ぬには最良の日…」

主人公キム・ジュンヒョクに、超のつく二枚目オ・ジホ、数奇な運命に翻弄される若妻ヨンジュに、子役出身でこの後「チャンス商会」に出演する美形ムン・ガヨン、妙な少女リュ・ヘリンに、どうやら映画デビューらしい個性派美形ユン・ジウォン、ヨンジュの父に、インディーズ系の出演が多いチャン・ヒョクチン、ヨンジュの母に、「母なる復讐」「最後まで行く」など相当な美形シン・ドンミ。

原作は「ピーター・パン」原作者として知られるジェームス・M・バリー卿の1920年初演の戯曲"Mary Rose"ですが、日本では英文学研究書に紹介されている程度で殆ど情報がありません。米版Wikiのプロットを読む限り、英国版「浦島太郎」「リップ・ヴァン・ウィンクル」といった風情の作品のようで、二度の時間を超える失踪を経験する女性の運命を叙情的に描いた作品だと思われます。本映画では、勝手な想像ですが、自殺を決意するに至った主人公の境遇、そして、切なくも妙にドライな娘ヘリンを書き加えることによって、英国風ファンタジーに、韓国風リアリズムが加味され、独特の劇空間が展開されていると感じます。実に優れた英韓合作作品だという面持ちです。まるで2時間ドラマのような、済州島観光スポット、民俗自然史博物館、済州ワールド21や小人国テーマパークなどの使い方も、物語の幻想性と対になって、独特の味わいを見せているでしょう。主演オ・ジホについては、「ラブ・クリニック」の余りにお馬鹿な演技の印象が残っていて、冷静に評するのは難しいんですが、さすが怜悧な二枚目振りは見事だと云えるでしょう。個人的注目は、ムン・ガヨンと新人ユン・ジウォンです。ムン・ガヨンは、その清楚な容貌が不条理な運命と良くマッチしていて好感です。ユン・ジウォンは、ホラー並に重苦しい展開を照らす狂言回し風でありながら、自身辛い過去を背負うという難しい役を鮮やかに演じていると思います。好き嫌いは分かれるでしょうが楽しみな女優だと思います。

多少チープな印象は否めませんが、英国原作に巧みな韓国風味付けを施した作品として、充分に鑑賞する価値を感じる名品だと思います。多分オ・ジホのファン狙いでしょうが、既にDVDがリリースされているので、不思議な文芸の香りを感じたい時に手に取ってみるのは、充分アリでしょう。

ちなみに、上の粗筋の最後で妙な娘が読む詩ですが、Nancy C.Woodの"Many Winters" (1974)という詩集から取られています。ネイティブ・アメリカン集落タオス・プエブロの古老の言葉を詩集としてまとめたもののようですが、日本でも「今日は死ぬのにもってこいの日」とのタイトルで出版されています。詩は次のように続いていきます。

Today is a very good day to die.
Every living thing is in harmony with me.
Every voice sings a chorus within me.
All beauty has come to rest in my eyes.
All bad thoughts have departed from me…

深い…