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キム・ソンギュンつながりで、WOWOWで録画したまま気になっていた、「鬼はさまよう (原題:殺人依頼)」。

雨のソウル東南部。スーパーから女性が出て来て家路を急ぐが、その後を尾ける男がいる。女性は不審な雰囲気を感じ、人気のない道を急ぎ自宅の門の前に着く。しかし、ホッとしたのも束の間、後ろからレンチで殴られる。ここの所、ソウル東南部では女性・児童の失踪が続いているが、被害者は見つからず、手がかりも掴めていない。所轄のキョンドン(京洞)警察署。雨の中、刑事テスが戻ると、そこは電話の嵐だ。連続失踪事件についての問い合わせ・苦情だ。テスは、チェ係長から、連続失踪事件の手がかりを掴むまで署に帰って来るな、と怒鳴られる。銀行。スンヒョンは、同僚のため、残業を買って出る。新妻スギョンからは、早く帰って来て欲しいとメールが来ている。その時、スンヒョンは、産婦人科だ。重大報告があるから、とスンヒョンを急かせる。産婦人科を出たスギョンの後をバンで尾行する男がいる。人気のない場所で、男はレンチでスギョンを殴り倒し、バンに引きずり込む。逃げるバンでは、スギョンの携帯が鳴る。夫スンヒョンからだ。男は、携帯を外へ放り投げようと視線を反らせた時、前に止まっていた車に追突する。男のバンはそのまま走り去る。当て逃げの連絡に、近くにいたテスは現場に急行する。捨てられた携帯を見つけ、現場の状況に不審を感じたテスは、逃げ去ったバンの方向を目指す。そして、渋滞で追いついたテスは、男のバンを調べ、血のついた毛髪を見つける。男を逮捕し、鑑識がバンを調べるが、大量の血痕が見つかる。そんな時、スンヒョンから、妻スギョンに連絡が取れないと電話が入る。スギョンは、テスの妹なのだ。さらに、当て逃げ現場に残されていた携帯が、妹スギョンのものだと判明する。テスは、取調室の男の所へ行き、妹スギョンに何をした、と殴り掛かるが、男は、探してみろ、と笑って答えるだけだ。テスは、妹夫婦の家に行き、妹の毛髪を手に入れる。そして、DNA鑑定の結果、男のバンに残された血痕のDNAの一つと一致する。男の自宅からは三人の遺体が掘り出されるが、スギョンを含む残り7人の被害者の所在は不明だ。その頃スンヒョンは、家で妊娠検査薬を見つけ、妻スギョンが妊娠していたことを知り狂乱する。こうして、行方不明のスギョンを巡り、連続殺人鬼、兄テス、夫スンヒョンの凄まじい葛藤が始まるのだ…

刑事ミン・テスに、「殺人の追憶」「悪魔は誰だ(原題:モンダージュ)」など刑事はハマリ役キム・サンギョン、テスの義弟イ・スンヒョンに、「悪いやつら」で衝撃デビュー後わずか3年ほどで主演級に登りつめる演技派キム・ソンギュン、狂気の連続殺人鬼チョ・ガンチョンに、背筋が凍る名演パク・ソンウン、服役中の元大ボス、ソン・ミョンスに、迫力満点キム・ウィソン、テスの上司チェ係長に、アートからエンタメまで幅広い名優キ・ジュボン、テスの妹でスンヒョンの妻スギョンに、「本当にきれいなもの」など主演作もある驚くほどキュートなユン・スンア。

サイコもの好きからすれば、実に良くできたサイコ・サスペンスだと思います。何せ、映画の出だしで、あっさり連続殺人鬼が逮捕され、死刑判決(但し韓国では死刑はモラトリアム状態なので言い渡されても執行はされません)を受ける所から始まるのです。そして、その後の物語では、行方不明被害者の兄である刑事と夫である銀行員が辿る過酷な宿命が、強烈なサスペンスを生み出していきます。目のつけどころが違う、って感じの展開です。ただ、上に書いた出だしの部分が多少ご都合主義的だったり感じますし、その後の展開も幾分ディテールに詰めの甘さを感じたりもするので、手放しで絶賛する訳にはいきませんが、チャレンジングなサイコ・サスペンスだと云って良いと思います。映画美術も素晴らしく、監督デビューであるソン・ヨンホ監督の腕はかなり確かだと思います。役者は三人とも絶品です。キム・サンギョンの刑事役は相変わらず生々しいものですし、いつも薄ら笑いを浮かべる不気味な連続殺人鬼を演じるパク・ソンウンも背筋が凍る名演です。ただ、個人的には、妻の失踪から狂乱していく銀行員を演じるキム・ソンギュンが圧巻でしょう。二枚目でもなく、カッコよくもないのですが、さすが長年の舞台経験から来る独特の存在感オーラは、圧倒的だと思います。ますます楽しみな俳優だと云えるでしょう。

めちゃめちゃ観客を選ぶであろう作品なので、一般的にお薦めすることはしませんが、サイコもの好きとしては、試してみる価値を十二分に感じる一本だと思います。