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シン・ハギュンとチャン・ヒョクという実に珍しく魅力的な組み合わせで、朝鮮建国の時代を描く…これで、邦版DVDが出るまで噂を聞かず、観客も50万人に届かない…一体、何が?! 「純粋の時代」。

「朝鮮建国から7年、1398年。外国勢の侵略と世継ぎ問題で、国内外の混乱は続いていた」北方戦線では、キム・ミンジェ将軍が蒙古人と激しい戦闘を繰り広げている一方、都では、朝鮮初代王テジョ(太祖)によって世継ぎ(セジャ:世子)から外された第五王子チョンアングン(靖安君:後の第三代王テジョン(太宗))が美女と激しく体を交えている。景福宮では、王の前で、私兵の禁止を巡り、時の宰相チョン・ドジョン(鄭道伝)と重鎮ハ・リュンが激しく口論している。そこへ、キム将軍が凱旋してくる。王は彼の戦果を喜び、宴を命じる。キム将軍は、靖安君を訪ねる。二人は古い友人だ。靖安君は、自分を世継ぎから外し幼い第八王子ウィアングン(宜安君)に決めたのは、キム将軍の義父チョン宰相だ、と笑い飛ばす。そこへ盗みを働いた子供が逃げて来る。キム将軍が刀で少年を打ち据えようとすると、美しい娘が止めに入り、子供に金を渡し逃がしてやる。娘は、キーセン(妓生)のカヒだ。屋敷に戻ると、義父チョン宰相が、靖安君には気をつけろ、王座を狙っている、と警告する。夜、王の前では、チョン宰相、キム将軍とチョン宰相の娘である妻、その息子キム・ジン、その妻で王の娘であるキョンスン王女が内輪の宴を開いている。キム将軍は、王の許しを得て、靖安君主催の祝宴に向かう。靖安君に近い重臣たちは、露骨にチョン宰相の娘婿キム将軍を煙たがる。そこに現れたのは、キーセン(妓生)のカヒだ。彼女は、女真族に伝わる美しい舞を舞い、キム将軍は、女真族であった母の舞を思い出す。その時、乱暴者のチョ・ヨンギュ将軍がカヒに言い寄る。キム将軍が止め、二人は一触即発になるが、靖安君の計らいで、カヒはキム将軍の夜伽を命じられる。しかし、二だけになっても、キム将軍は手を出さない。一方、キム将軍の息子キム・ジンは、金持ちのどら息子たちと組んで、若く貧しい娘を拐(カドワ)かしては、凌辱している。王女を妻にしながら、変質者なのだ。王は、キム将軍を、統合された軍隊である義興(イフン)三軍府の長(フサ:府事)に任じ、自分と幼い世子を守れと命じる。その頃、靖安君は私兵たちの訓練を観ながら、酒を飲んで笑い声をあげている…こうして、王を守るべく宿命づけられたキム・ミンジェ府事と、王に疎まれた王子チョンアングン(靖安君)の運命は、美しいキーセン(妓生)カヒを軸に、激しく転がり始めるのだ…

キム・ミンジェ将軍に、40代に入ってもなお若々しくシックスパックに割れた腹筋も美しいシン・ハギュン、底知れないチョンアングン(靖安君)に、来年には40代でますます男盛りチャン・ヒョク、美しいキーセン(妓生)カヒに、脇役で観た筈ながら記憶にないのが申し訳ないほど魅力的なカン・ハンナ、キム将軍の息子で変質者キム・ジンに、「二十歳」など登り調子の長身二枚目カン・ハヌル、朝鮮初代王テジョ(太祖)に、癖のある演技は一級品ソン・ビョンホ、キム将軍の義父チョン・ドジョン(鄭道伝)宰相に、いつものお笑いを封印した芸達者イ・ジェヨン、キム将軍を目の仇にする靖安君の忠臣チョ・ヨンギュに、巧いチェ・ムソン(旧ミョンス)。

全159話『龍の涙』は録画したものの観れていないので、この時代について全く土地勘がありません。従って、観ながら、或いは、観終わって、かなりWikiを読まねばならないという事情もあって、なかなか物語に入っていけなかったのはちょっと残念です。土地勘があれば、出だし十数分で、物語の背景が理解できたでしょうし、展開を楽しむことができたかもしれません。それはそれとしても、出だしの部分を書きながら、実に良くできたシナリオだということは分かります。小道具や何気ないシーンが、後段への良く練られた伏線になっていて、なるほど、と唸らせる出来だと思います。疎まれた王子の野望、美しい妓生の復讐、将軍の老いらくの恋、この三本の糸を操る手腕はかなりだと思うんですが、それでも、50万人に届かない原因は何なんでしょう。個人的には、AVかと見紛うばかりの生々しい性描写にあるんではないかと感じます。シン・ハギュン、チャン・ヒョク、カン・ハンナの激しい濡れ場は確かに美的で衝撃的で、話題作りにはなるかもしれませんが、どう考えても、物語に必要だと思えません。むしろ、物語のリズムを乱しているでしょう。役者の魅力と三本の糸を軸にした物語で、二時間充分に緊張感を保てた筈だと思え、勿体ないと思います。役者では、圧倒的にチャン・ヒョクでしょう。野望に燃えながら、正体を見せない不気味さを見事に表現しています。ストレートなシン・ハギュンも、美しい裸体を晒しての熱演カン・ハンナも良いですが、チャン・ヒョクの存在感には一歩及ばない感じです。

邦版DVDが出てますが、一人で観るか、さもなくば、一緒に観る人をよほど人選しなければならないでしょう。折角の出来ばえなのに、惜しい作品だと思います。この時代に詳しい方も多いんだとは思いますが、そうでなければ、初代王テジョ(太祖)、三代王テジョン(太宗)、第一次王子の乱、あたりはWiki程度の知識を持っていた方が楽しめるかもしれません。