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未見100万人超え作品を追ってましたが、今回は、Cinema Koreaの週末興行成績によれば累計982,183人ということでちょっと足りないながら、まぁ100万人には到達した筈ということでお許しいただいて、痛快犯罪アクション・コメディ、「死体が帰ってきた」。

検事局は、人工皮膚に関する画期的研究成果の入ったヒェソン・バイオテック社のマイクロチップの行方を必死で追っている。チップを外国勢力に売るのではないかとの疑いがかかるキム・テクス会長は入院しているが、出国禁止措置も解除されてしまい、会長は救急車で空港に向かう。会長は、チップを自分の腕に埋め込んで、海外持ち出しを図っているのだ。同社の研究員たちは会長を糾弾するデモで気勢をあげているが、救急車に気づき、首席研究員ハン・ジンスと研究員ペク・ヒョンチョルが車で追い、何とか出国を阻止する。ところがその夜、チンスは、ヒョンチョルの目の前で轢き逃げされ意識不明の重体に陥る。駆けつけたチンスの娘トンファは事情を聞き、キム会長への復讐に燃えるが、その矢先、キム会長の訃報が流れる。心臓麻痺との発表だが、腹心の社長スティーブ・チョンがチップ欲しさに会長を毒殺したのだ。父親の病院代がかさむトンファは会社から金を引き出す方法をヒョンチョルに相談するが、ヒョンチョルは会長の遺体を盗んで身代金を要求することを思いつき、入念に準備して遺体安置室に忍び込むことに成功する。安置室では、悪徳金融ファン・ソングが乱入してきて、借金のかたにアン・ジノという男の遺体から目玉をくり抜くんだと騒ぐハプニングもあったが、二人は何とか会長の遺体を盗み出すことに成功する。遺体を乗せたバンで身代金要求の手筈を相談していると、不審に思った警官たちが近づいてくる。警官たちが遺体に気づき万事休すと思われたその時、突然、遺体袋が起き上がる…

生真面目な人工皮膚研究員ペク・ヒョンチョルに、お馴染みイ・ボムス、借金まみれの詐欺師アン・ジノに、イ・ボムスとは初共演もはや名優と呼んで何の違和感もないリュ・スンボム、父親の復讐に燃えるハン・ドンファに、「渇き」で一皮むけますます光る美形キム・オクピン、悪辣社長スティーブ・チョンに、悪党はお手の物チョン・マンシク、国家情報院の女捜査官チャン・ハヨンに、キュートなユ・ダイン、国家情報院のチョ・チーム長に、味わい深い名脇役シン・ジョングン、悪徳金融ファン・ソングに、もはや主演級コ・チャンソク、ハン・ドンファの父親で首席研究員ハン・ジンスに、韓国映画界で最も多くの映画に出演している筈の名脇役チョン・インギ、アン・ジノの悪友チョン・ミョングァンに、すっとぼけた味わいが魅力オ・ジョンセ。特別出演では、ヒェソン・バイオテック社の悪辣会長キム・テクスに、ミュージカルが本職ナム・ギョンウプ。

巧い!と膝を打つ出来ばえだと思います。老獪な会長の遺体を巡り、真面目な研究員・父親の復讐に燃える美女・借金まみれの詐欺師・悪辣な巨悪・悪徳高利貸し・国家情報院という多彩な登場人物を複雑に噛み合わせる手腕は、例えば、ヒチコック「ハリーの災難」や、タランティーノ「ジャッキー・ブラウン」みたいな作品を思い出させ、滑稽でお洒落で痛快です。実に、知的でクールなシナリオだと云えるでしょう。ウ・ソノ監督は長篇デビューのようですが、その演出も巧いと思います。パンポ(盤浦)大橋の上での身代金受け渡しや廃アパートでの追跡劇など凝ったサスペンスも見事ですし、「安真五」と漢字で刻まれた墓石や棺桶といった小道具の扱いも堂に入っているでしょう。勿論この作品の魅力は、綺羅、星のごとく居並ぶ俳優陣に依る所も大きいでしょう。70年代風坊ちゃん刈りで生真面目・几帳面な研究員を演じるイ・ボムスも良いですし、終始ホームレス風ファッションでギャグを連発して笑わせるリュ・スンボムもピタリとはまっていて、キム・オクピンもピンクのおかっぱ姿で生意気で攻撃的な役柄を楽しそうに演じています。個人的には、キュートな国情院捜査官を演じるユ・ダインが趣味ですが、時折登場しては物語をかき回す狂言回し的なオ・ジョンセも忘れてはならないでしょう。

キム・スロとの共演が不発だった「ホン・ギルドンの後裔」とは違い、イ・ボムスとリュ・スンボムが正面から渡り合って大満足ですし、脚本・演出・演技のバランスも最高なので、十分五つ星の価値はあると思います。が、どんな難役でもこなすイ・ボムスとリュ・スンボムの他の作品を思い起こせば、アクション・コメディに五つ星はちょっと無理があるかもしれません。ただ、十二分に楽しめる作品であることは間違いないでしょう。