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昨年暮れから今年にかけて、「マイウェイ」を100万人も超える殆ど300万人を集めた、ソン・イェジン主演の大ヒットホラー風味ラブ・コメ、「不気味な恋愛」。

マ・ジョグは売れないストリート・マジシャン。今日も、相棒ピルドンと組んでコミカルな路上マジックショーを披露している。チョグは、観客の中に黒マントを着て冷やかに見つめる美女を見つける。気になった彼は思わず彼女の後を尾けるが、彼女のホラー的な姿を追っている内にチョグはホラー・マジックショーを思いつく。彼は黒マントの女カン・ヨリを助手にスカウトし、発表したホラー・マジックショーは大ヒット、彼は一躍有名マジシャンに名を連ねる。1年後。今日もホラー・マジックショーの会場は超満員。スタンディングオベーションで幕を下ろした後、チョグたちはヨリを飲み会誘うが、彼女はそそくさと帰っていく。彼女は一度も飲み会に付き合ったことがないのだ。一人寂しく暮らすヨリは、今日が誕生日だが、ノルウェイに移民した母親と電話するだけで、一人でバースデイケーキを頬張り、ワインをラッパ飲みしている。深夜、リンビングに張ったテントに寝ていると、怪しい気配に目が覚める。幼い姉妹の亡霊だ。翌朝、姉妹が轢き逃げされた現場から、ヨリは亡霊たちから得た情報を匿名で警察に通報する。ある日、チョグたちは半ば強制的にヨリを飲み会に引っ張りだす。ヨリは泥酔し、チョグに悪態をつき、彼のシャツを引き裂いてしまう。翌朝、チョグは二日酔いのヨリに電話をするが、不自然に切れたので気になってヨリの家を訪ねる。その時、庭に少年の姿が見えるが、ヨリは隣の男の子だと説明する。その夜、チョグが一人で寝ていると、再びその少年が現れる。亡霊だと気づいたチョグは、恐怖からヨリを呼びつける。ヨリは少年の亡霊の声を聞き、二人は、まだ発見されていない自動車転落事故現場に向い、息絶えた少年とまだ息のある父親をみつける。ヨリは高校生時代、バスの転落事故による臨死体験があり、それ以来、亡霊が度々現れるのだ…

亡霊を呼ぶ女カン・ヨリに、この映画が公開されている今年1月30歳になったソン・イェジン、マジシャンのマ・ジョグに、「クイック」で初単独主演を果たして上り調子のイ・ミンギ、チョグの相棒ピルドンに、大ファンの芸達者パク・チョルミン、ヨリの電話友達ミンジョンに、お笑いのキム・ヒョンスク、同じく電話友達でドラマ脚本家ユジンに、個性派脇役イ・ミド、チョグの恋人ソヌに、韓国のシャロン・ストーンと呼ばれる超美形ユン・ジミン、ヨリの高校時代の親友イ・ジュヒに、「女高怪談」シリーズ出身キュートなファン・スンオン。路上マジシャンとして、日本でも紹介された天才マジシャンのイム・ジェフンが顔を見せています。

ブロックバスター「第7鉱区」や「マイウェイ」を大きく超える観客を集めるような映画には見えないなぁ、というのが正直な第一感です。物語のスケールはごく普通のラブコメ・ドラマ並ですし、ホラー趣向も「シックス・センス」や「ファイナル・デスティネーション」からの借り物という感じが強いこともあって、劇場公開映画としては小粒の感が免れません。ラストシーンも何千回も繰り返された"あそこ"でのシーンですし、多少芸がない、と言われても仕方がないかもしれません。それにも関わらず、現時点の2012年ランキングでも6位をキープするヒットの要因は、恐らく主演二人の魅力によるものではないかと思われます。「クイック」でも300万人超えを達成したイ・ミンギの観客動員力が大きいのもあるでしょうが、個人的にはソン・イェジンに注目です。ここ3作、難しい”悪女”役に挑戦してきた彼女ですが、いま一つの感が否めません。この作品では、亡霊を呼ぶ能力から人から避けられ人を避け寂しく暮らす中から、必死で恋人や友人を求め始める、という切実さと滑稽さの絶妙の配分は、"ラブ・コメの女王"といった風情を醸しだしていて秀逸ですし、カメラワークも彼女の魅力を余すところなく引き出していると言えるでしょう。特に2度の泥酔シーンは実に見事です。難役への挑戦も必要でしょうが、こういう作品が彼女らしい魅力なんだ、と言っても過言ではないでしょう。あとは、大好きなパク・チョルミンでしょうか。本編では、多少彼の魅力が発揮しきれてないかな、という感じもありますが、エンディングと共に流れるエピローグでの、彼の”一人?芝居"は絶品で、それだけでも十分に満足です。

映画として評価するのは難しいのですが、2時間存分に楽しめて、帰路に着くときも何処かホコホコした感じでいられる、という意味では、大ヒットは十分納得、の1本と言えるかもしれません。

余談ですが、脚本家のユジンがヨリに、キスの蘊蓄を傾けるシーンがありますが、キスには、ハンバーガー、エア・クリーニング、スライディング、キャンディ、レスリングの5種類があるそうです。最初の二つは説明があり分かるのですが、後の三つは意味が不明です。あれこれ想像するのも良いかもしれません。

ちなみに、テーマ曲は、Jami Soul の "별 (星)"と、EZ'M の "Falling In Love"の2曲ですが、ボサノバ風の曲調は作品に良く合っていて、このOSTはお薦めかもしれません。