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今日4月13日でこのブログを書き始めて丸6年、正確には今日から7年目が始まります。800本くらい観てきたわけで、よく飽きもせず…とも思いますが、面白い、或いは、良い映画にぶつかってしまうので、今しばらくは辞められそうにありません。

今日からは、「血闘」に戻ってコ・チャンソク出演作を3本ほど観ていきます。今回は、プサンを舞台にした難病バイオレンス・メロ、といった面持ち、「プサン (父、山)」。

トクサ(毒蛇)の二つ名(フタツナ)を持つ組織のボス、チョ・テソクは、今日も高級クラブで縄張りのカラオケ・サロン、キム社長から頼みを聞いている。借金まみれで博打狂いのキム・ガンスは、今日も借金取りに殴られている。カンスの息子で18歳のキム・ジョンチョルは、スクーターでホステスを送って小金を稼いでいる。釜山港に着いたコンテナから若い女たちが出てくる。テソクの組織が密入国させたのだ。女たちを乗せたバンが人気のない道に入った所で、手下の一人ナルチが便意のため車を停めさせ草むらに入っていくが、その隙を狙って別の組織が車を襲い、女たちを拉致する。ナルチが裏切ったのだ。その時、密入国女の一人スネが逃げ出す。チョンチョルが母親の命日の準備を整えた所へ、酔ったカンスが帰ってくるが、供え物を肴に酒を飲む始末で、挙げ句の果ては、供え台をひっくり返す。カラオケ・サロンのママ、ソナが店の前でテソクのベンツを待っているが、その様子をチョンチョルが見つめている。ソナは、亡くなった母親にソックリだ。酔って寝ているカンスの所へ私債業者が踏み込んでくる。私債業者たちはカンスを拷問にかけ「身体抛棄覚書」にサインさせる。カンスは河豚汁屋で働いている密入国女スネの美貌に目を付け、後輩の職業紹介所サングの所へ連れて行く。サロンに斡旋させるためだ。テソクの所へは、キム社長と新興勢力のピョン・ギルスがやって来て、縄張りを寄こせと言う。そんな時、サングの事務所でスネに韓国語を教えているチョンチョルが苦しみだす。病院は、腎臓癌で移植が必要だと言う…

組織のボス、チョ・テソクに、最近はホン・サンス作品などのアートな役が多いキム・ヨンホ、借金まみれのキム・ガンスに、この作品あたりから主演級の活躍を見せ始めるコ・チャンソク、その息子キム・ジョンチョルに、「おばあちゃんの家」から7年すっかり青年の風情ユ・スンホ。サロンのママ、ソナとチョンチョルの母親の二役に、90年代から活躍するベテランのチョン・ソンギョン、テソクに敵対する新興勢力のボスに、卑劣漢はお得意キム・ジョンハク、カンスの後輩で職業斡旋屋に、最近は主演級の活躍を見せるチョ・ジヌン、密入国女スネに、かなりの美形イ・セナ。酒びたりの闇の腎臓移植医師に、イ・ビョンジュン、テソクを裏切るサロン経営キム社長に、小悪党はお手の物キム・ジョンテ。

家族は要らないと言い切る孤独な闇社会のボス、借金まみれで博打狂いの父親、腎臓を必要とする健気な息子、というお膳立ては、かなりステレオタイプだと言われても仕方がないでしょう。難病、暴力、親子の情、という三題噺なので、中盤までに概ねの物語展開が読める観客も多いでしょう。また、臓器売買とか臓器移植とかディテールにかなり無理が出るのは当然で、釜山の下町や歓楽街の生々しい背景とは裏腹に、ストーリーにリアリティが感じられないのも仕方ないと思います。とは思いながら、貶す気にならないのは、役者たちの熱演によるのでしょう。特に、コ・チャンソクです。息子から金を巻き上げ、流し台に小便をする、下品で卑劣な最低糞親父を熱演、どんどん主演クラスに近づいていくきっかけになった作品だと云えるでしょう。キム・ヨンホも、「アバンチュールはパリで」「ジョンフンさんの恋愛日記」など最近観た軟弱な役の印象が強かったんですが、元々のバイオレントでハードなイメージの中にも叙情性を垣間見せて好演だと思います。とぼけたお人好しチョ・ジヌンや美しい華を添えるイ・セナ、妖しさ一杯のイ・ビョンジュンなど回りを固める役者も評価できるでしょう。強いて言うと、せっかくのユ・スンホがちょっとストレートな役過ぎて、病に苦しむだけというのは勿体ないとの感じが否めないかもしれません。

現実感に乏しく、メロが過ぎているので、作品としての評価は難しいでしょう。一方で、役者だけの映画は余り評価したくはありませんが、役者の技量や熱気がストレートに伝わってくるという意味で、観て損したという気がしないのは事実です。高く評価する人は少ないでしょうが、既に日本版DVDが出ているので、試してみるのは簡単です。

ちなみに、劇中カラオケでキム・ヨンホが見事な歌唱力を聞かせてくれますが、歌っているのは、チェ・ジニ(최진희)が歌ってヒットした「天上再会(천상재회)」という曲のようです。それにしても、キム・ヨンホの歌はプロ並です。