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今日の未見日本版DVDは、何故か一度観たのに放置していたスプラッター・スリラーの佳編、「自殺同好会 <4曜日>」。

ニュースが若い女性の自殺を伝え、OECD参加国の中で最大の自殺増加率を憂いている。光州地下鉄のサンム(尚武)駅では、若い女性が思い詰めた目で線路を見つめている。11人の自殺志願者と男女2人の自殺案内人を乗せた赤黒いバスが、山に分け入っていく。途中から徒歩に変え、一行はやがて山奥に見捨てられた廃校に着く。各自の希望自殺方法の確認が始まるが、怪我に悲観した野球選手ヤン・ジェホが苛立ちはじめ、一人で教室から出て行く。案内人によって準備が始められ、その間、10人の志願者は、遺書を書いたり、最後の晩餐を口にする。やがて順番1番の末期癌患者イ・ジュニの首にロープが巻き付けられ、足台が外されるが、その瞬間、教室の窓の外を人が落ちていく。受験地獄に苦しむ順番10番の女子高生だ。一行が彼女の死体の回りに集り、案内人は順番が変わっただけだと平然としているが、靴を履いたままなのを訝る者もいる。そして順番2番の準備が始まるが、突然、死んだ筈のイ・ジュニが教室に現れる。ロープが解けたのだと言う。案内人の男がロープを調べに行くが、突然現れた何者かによって滅多刺しにされる。彼の死体を見て残された11人はパニックに陥るが、今度は、子供に先立たれ絶望する母親が、血を吐いて苦しみ出す…

志願者には、順番1番癌患者イ・ジュニに、後に「黄海」で重要な役所(ヤクドコロ)を演じることになる美形イム・イェウォン、順番2番天涯孤独のカン・ジュニに、今回はお笑いを封印したチョン・ウンテク、順番3番借金男に、こちらも珍しくシリアスなイ・ジェヨン、順番4番怪我で引退した野球選手に、二枚目ユン・ソヒョン、順番5番親の期待に応えられない財閥御曹司に、イケメンのパク・ヨンヨン、順番6番DVに苦しむ人妻に、大人の魅力オ・ジヨン、順番7番子供に先立たれ絶望する母親に、ベテランおばさんホン・ヨジン、順番8番精神状態が不安定なヨンソンに、色っぽいキム・ソニョン、順番9番拒食症の歌手志望女に、キュートなユ・ソウン、順番10番受験戦争に落ちこぼれた女子高生に、地味なチン・ミンジュ、順番11番女子学生とのスキャンダルがばれた大学教授に、おじさん脇役イ・ウォンジェ。自殺を手助けする案内人の兄妹に、イ・ジョンハンとタン・ソヨン。

この映画、自殺増加に警鐘を鳴らすニュースから始まり、自殺防止を呼びかけるキャプションで終ることから、自殺防止啓蒙映画の色合いが濃いのですが、残念ながら、スプラッター・スリラーとして余りにも面白く出来過ぎでしょう。自殺を志願する11人とそれをアシストする案内人2人が、山奥の廃校で次々と惨殺され、最後には二人が残る…叱られるでしょうが、アガサ・クリスティの傑作「そして誰もいなくなった」に匹敵するかと思われる出来ばえです。しかも、知る限り最も大量の血を見せる「親切なクムジャさん」並の流血量、さらには、「13日の金曜日」全シリーズを超えたかとも思わせる残虐殺戮方法のバリエーション、などスプラッターのマニアには、不謹慎を恐れず云いますが、余りにも上出来です。役者も上々。最後に二人生き残る犯人役と自殺志願者の二人が、とにかく巧いですが、他のステレオタイプながら様々な自殺動機を持つ志願者を演じる面々もかなり生々しく演じていて、映画の出来に良く貢献していると思います。特に、いつもは底抜けのお笑いを提供するチョン・ウンテクとイ・ジェヨンによるシリアスな名演は、他の作品ではなかなか観ることの出来ないレアものでしょう。

ヘボなホラー的こけおどしや、いささか合理性に欠ける展開がないとは云いませんが、残念ながら、啓蒙映画としてではなく、大胆なスプラッター・スリラーとして、高く評価するしかないでしょう。

余談ですが、この映画、二回目の鑑賞となります。ここでの感想は初見で(勿論、理解力不足から何度も巻き戻しはしますが…)書くのが原則で、例外は「シュリ」だけでした。ところがこの作品、何故か一回観終えて感想を書きかけたにも関わらず、そのまま1年以上放置されていました。その理由は未だ不明ですが、犯人が分かっていて二回目を観て、それでもかなり楽しめたので、なかなかの出来ばえではないか、と思ったりします。勿論、スプラッター・マニア限定ですが…