「ウェディング・ドレス」からキム・ミョングクつながりで、五つ星「スカウト」(2007)から再び共演するイム・チャンジョンとオム・ジウォンによる恋愛喜劇、「不良男女」。
ソウル、バンポ(盤浦)大橋。トボン(道峰)警察署の強力刑事パン・グッキョンは、窃盗犯を必死で追いかけている。その時、クッキョンの携帯がファンファーレを鳴らす。いつのもカード会社督促女からの電話だ。息を切らしながら電話に出たクッキョンは口汚く罵りながら、何とか窃盗犯を取り押さえる。トボン(道峰)警察署。盗まれた鞄が見つかったとの連絡を受け、カード会社T&Aの督促係キム・ムリョンがやって来るが、クッキョンは彼女を見て、そのキュートさに心を奪われる。彼女が帰った後、またファンファーレが鳴り、クッキョンは例によって督促女とやり合う。その督促女がムリョンだとは知らずに。そんな時、以前逮捕したトンリョルから、助けを求める電話が入る。盗難車から指紋が出て逮捕されているというのだ。クッキョンは、トンリョルの無罪を証明すべく、管轄違いを無視して自動車窃盗団を追い始める。ようやく自動車窃盗団を追い詰めたその時、またファンファーレが鳴り響き、連中を取り逃がしてしまう。クッキョンはまたまたムリョンと激しくやり合うが、ムリョンが激怒し、トボン(道峰)警察署に乗り込んでくる。こうして二人は初めてお互いを知るが…
強力刑事パン・グッキョンに、哀愁コメディの第一人者イム・チャンジョン、カード会社の鬼督促女キム・ムリョンに、アートな作品からコメディまで広い芸域を持つオム・ジウォン、クッキョンの刑事チーム三人に、若手イケメンのチョン・ウヌ、とぼけたカン・ジェソプ、渋いイ・ジェグ、ムリョンの同僚に、サ・ヒ改め美貌のミン・ソウン、カード会社の督促チーム長に、お馴染みチョ・ドッキョン。特別出演では、女装の占い師に、名コメディアンのソ・テファ、ムリョンの故郷忠清北道ジェチョン(堤川)のタクシー運転手に、キム・ミョングク、その乗車客に、大ベテランのユ・スンチョルとソン・ヨンスン、もう一台のタクシー運転手に、チェ・ジェウォンの顔も見えます。
きわめてオーソドックスでオールド・ファッションドな作りなので、映画館へ足を運んだ観客の反応は微妙だったと思います。ロマコメというカタカナ呼びよりは、恋愛喜劇という面持ちです。悪党を捕まえそうになると必ず鳴る携帯のファンファーレ、とか、クッキョンと三人の部下の脱力系対立、とか、古典的な繰り返しによる笑いは極めてシンプルですし、ボーイ・ミーツ・ガールそのもののストーリー・ラインにも新味は感じられないでしょう。ただ、捨てがたいのは、かつての喜劇映画では多く見られた、話芸の妙です。何度も繰り返される、イム・チャンジョンとオム・ジウォンの罵り合いは絶妙で、シ●●とかセ●●とか使わないまま延々と悪口を言い合うシーンは、久しぶりに観る喜劇映画らしい切れ味が魅力です。2分近いワンカットの間ずっと言い争うシーンがありますが、エディ・マーフィーとか渥美清とか最近あまり見られなくなった役者の技という感じで、しばし見入ってしまいます。また、オム・ジウォンには、泥酔するシーンが2回ありますが、2度のホン・サンス作品出演で習得したのかは分かりませんが、これまた絶品で、最も酔っぱらった演技が巧い女優ではないかと思ったりします。
人情喜劇風になるエンディング部分を除いて、脇役陣に必ずしも奥行きが感じられなかったりもしますし、イム・チャンジョンかオム・ジウォンの熱烈なファン以外にお薦めするのは難しいかもしれませんが、個人的には、懐かしい感じで、十分に堪能したと云っていいでしょう。