イメージ 1

 

重鎮の風格イ・デロつながりで、長らく気になっていて、やっと感想を書くことが出来た(事情は後で)、五つ星「出会いの広場」。

1953年夏、戦争があったこともろくに知らない村人たちが住む、江原道の山奥の村チョンソン(靑松)里。村人たちは、異人たちが鉄条網の柵を作っているのに出くわし、言葉も通じない中、親切心から彼らを手伝うが、柵が完成すると、村人たちは柵の向こうとこっちに二分され、行き来しようとすると、異人たちが銃で阻止する。そこは38度線で、異人は、米ソの軍人であった。それから30年。離島の青年ヨンタンは、教師になる夢を抱いてソウルに上京するが、着くなり有り金をひったくられ、警察に泣きついても無視される。折しも、署内には、サムチョン(三清)教育「隊」に送られるゴロツキ共が留置されていたが、ヨンタンは、教育「大」と勘違いし、その連中に紛れ込み、三清教育隊に送られる。教師になる修行だと丸太かつぎにも精を出すヨンタンだったが、ある日、移送の途中でトラックから落ち、山奥に置き去りにされる。隊に戻ろうとするヨンタンは、水浴びをする美女を見かけ、怒った彼女の投げた石で失神する。彼が村に連れて行かれると、里長は教育大出身の新任教師と勘違いして歓待し、ヨンタンはその気になって生徒5人の教師としての生活を始める。彼が里長に美女のことを訪ねると、義妹だと答えるが、彼女の姿は村になく、ヨンタンは次第に村の秘密に近づいていく。一方、赴任するべき本物の教師は、間違った標識で山に迷い込み、野糞をする時に誤って地雷を踏み、身動き出来なくなっていた…

三清教育隊員ヨンタンに、ヒューマン・コメディを演らせたら天下一品イム・チャンジョン、謎の村の美女ソンミに、実は大ファンのパク・チニ、下の村の里長に、『チャングム』『オールイン』など知らぬ者のない芸達者イム・ヒョンシク、上の村の里長に、重鎮イ・デロ、村人ジョンソクに、名優イ・ハヌィ、生徒の一人トングには、「飛べ、ホ・ドング」のチェ・ウヒョク君の顔も見えます。特別出演では、地雷を踏んで立ち往生する本物の教師に、目茶滅茶笑えるリュ・スンボム、村の長老婆さんに、大好きなキム・スミ、島のヨンタンの両親に、ペク・イルソプとキム・ヒョンジャの名コンビ、ソンミの妄想に現れる二枚目に、これまた笑えるチェ・ソングク、南の国境警備連隊長に、癖のあるお笑いキム・グァンギュ。

2007年公開時、あっと云う間に100万人を集めながらも、日本には殆ど噂が聞こえて来なかったんですが、それは余りにも勿体ない、文句無し五つ星のヒューマン・コメディです。イム・チャンジョン主演としては、3カ月ほど遅れて公開されたやはり五つ星「スカウト」とよく似たテイストの作品で、本当にこの手の役を演らせたらピカ一と云わざるを得ないでしょう。ともかく本が素晴らしい。脚本は、やはりイム・チャンジョン主演の五つ星コメディ「偉大なる遺産」を書いたイ・ヒョンチョルで、そのストーリー・テリングの巧いこと!その流れは、序盤、不条理コメディとして始まり、中盤はブラック・コメディ、そして、終盤は見事な社会派ヒューマン・コメディに仕立て上げられていて、脚本家養成講座に出てきそうな完璧な序破急のリズムに乗っています。しかも、それぞれのパートが、朝鮮戦争、三清教育隊、北の侵攻トンネル、といった重苦しい題材を軸に据え、よそ者ヨンタンを起爆剤に、ヘンテコリンながらもの悲しい村人たちが右往左往する姿を、実に生き生きと描いていると思います。当然、出演陣も文句無し。イム・チャンジョン、パク・チニも完璧ですが、何と云っても、イム・ヒョンシク、キム・スミ、この二人の笑える凄い存在感に圧倒されます。それと、物語に間欠的に挟み込まれるリュ・スンボムの一人芝居も、実に良い味が出ています。

残念ながら、そのテーマから、日本での公開は勿論、DVDスルーさえ期待出来なさそうですが、是非とも、日本で観られることを、激しく、望みたいと思います。

実は、この映画のDVDには、英語字幕が収録されてません。最近は収録が当たり前なので良く確認せずに買ったんですが、ショックでした。ただ、BGMみたいにDVDをかけ流しにしていても、話の7~8割は理解できるような流暢な話運びですので、挑戦してみる価値はあるかもしれません。ただ、感想を書くには多少心配なので、今回、知り合いに気になる部分の訳を手伝って貰い、やっと感想を書き上げたという次第です。

ちなみに、長老キム・スミの喜寿を祝う宴で、みんなが歌う歌は、ナムジン(남진)のヒット曲「ニムガハムケ(あなたと一緒)」です。