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大好きなリュ・スンニョンつながりで、本格ヘビー・サスペンス、「シークレット」。

ソウル、11月13日。チュンブ(中部)署強力課のキム刑事は、自分の名刺と写真を持った交通事故被害者に呼び出されるが、その男は、人殺しを依頼されたと言い、標的の名前を言いかけて息絶える。一年前愛娘を亡くして以来、心を閉ざした妻チヨンは、お気に入りのイヤリングと新しい桃菫色の口紅を身につけ出かけるが、キム刑事に行き先を言わない。高利貸しトンチョルは、3000万ウォンの借金のかたに母親の店の権利書を持って来いと、青年ソクチュンをいたぶる。チュンブ署には、不当に誘拐犯を射殺したとのキム刑事の証言で停職処分を受けたチェ刑事が、2年3カ月ぶりに戻って来て、早速キム刑事と一悶着起こす。かつての浮気相手ヘジンに呼び出されたキム刑事は、一年前の娘の事故死の真相を妻に言う、と脅される。ヘジンと浮気して酒を飲んだ後、娘を幼稚園に迎えに行き、ヘジンと携帯で話していて事故を起こしたのだ。トンチョルの雑居ビルでは、ソクチュンとチヨンがすれ違う。チヨンが帰宅するが、血に汚れ、片方のイヤリングやボタンが一つないが、キム刑事の質問に、チヨンは何も答えない…やがて、三カ所刺されたトンチョルの刺殺体が発見され、現場に着いたキム刑事は、妻のお気に入りのイヤリング、取れたボタン、桃菫色の口紅のついたワイングラスを発見し、慌ててそれらの証拠を隠蔽してしまうが、その後、被害者トンチョルは、裏の世界ではジャッカルと畏れられる組織の大ボスの兄だということが判明し、しかも、雑居ビルから出てくる女を見たという目撃者まで現れる…(ここまでで、何と、出だし、わずか15分!)

キム刑事に、「目には目、歯には歯」に続いて連続サスペンス主演チャ・スンウォン、ヘグム(奚琴)演奏家の妻チヨンに、昨年5月ソル・ギョングと結婚してから初の映画出演ソン・ユナ、悪辣なジャッカルに、大好きなリュ・スンニョン、キム刑事を仇と嫌うチェ刑事に、久しぶりの汚れ役パク・ウォンサン、事件の鍵を握る目撃者キョンホに、映画出演が続くオ・ジョンセ、第一容疑者ソクチュンに、「海雲台」での名演も記憶に新しい個性派キム・イングォン、捜査を指揮する班長に、出演映画数はギネス級のチョン・インギ、浮気相手ヘジンに、大ファンのパク・ヒョジュ、妻チヨンの演奏仲間に、「インタビュー」の美形ヤン・ウニョン。

とにかく、サスペンス映画としての「つかみ」は完璧です。あらすじで書いた出だし15分は、西脇順三郎の言葉を借りると、「 (覆された宝石)のような」出来ばえで、ここでこの映画はもう見たくない、と云う人がいたら是非お目にかかりたい、という感じです。謎の殺し屋、冷えた夫婦関係、過去の浮気、残酷な娘の事故死の真相、恨みに満ちあふれた同僚、借金、残忍なヤクザ、全てが妻を指さす証拠…持てる限りのカードをテーブにぶちまけて、さぁ、お手並みをご覧下さい、という度胸の良さは、最近なかなかお目にかかれない監督の意気込みを感じさせ、爽快です。さすが「セブンデイズ」の脚本を書いたユン・ジェグ監督だけあって、初監督とは思えない大胆さだと云えるでしょう。その後の展開も、妻を守ろうとする刑事、その刑事を逆恨みし妻に疑いの目を向けていく同僚、次第に妻に近づく何としても自分の手で犯人を葬りたい悪逆ヤクザ、この三人の火花を散らす関係を軸に、複雑な人間関係を自由自在に操る腕前は、正統派サスペンスが少なくなった、とお嘆きの諸兄には堪らない魅力を発揮しているのではないか、と想像します。配役も見事です。硬軟自在のチャ・スンウォンは当然として、心を閉ざしたクール・ビューティ、ソン・ユナは、恐らく初めて見せるニューロな魅力全開ですし、何より、久しぶりにとことん悪役に徹したリュ・スンニョンの背筋に電気が走るような悪逆ぶりは、大ファンとしては嬉しい限りだったりします。

サスペンス好きとしては若干許せない演出もニ三ないではないので、五つ星には出来ませんが、心ゆくまで堪能出来るヘビー・サスペンスとして、お薦めするに足る傑作だ、と云いたいと思います。

ちなみに、リュ・スンニョンは、いつも何かを噛んでいるのですが、どうやらコピ・ルアク(Kopi Luwak)という超高級コーヒー豆なんだそうです。さっそく調べてみましたが、説明を読む限り、噛んだり飲んだりしたいと思わないのは、贅沢に縁がないからなのかもしれません。