イメージ 1

 

「その男の本198ページ」に戻って、チョ・ドッキョンつながりで、雰囲気たっぷり経済クライム・ムービー、五つ星、「作戦」。

ある日、元ヤクザで投資会社オーナー、チョング、美貌の闇の資産管理人、ソヨン、有能な証券マン、ミニョン、三人のパソコンや携帯が一斉にアラームを鳴らす。「作戦(仕手)」中のオメガ情報通信の株価が暴落したのだ。やがて、ミニョンが勤める証券会社に換金に来たことから、「作戦」を妨害したのは、5年前友人に裏切られ一文無しから独学で成り上がった一匹狼のデイトレーダー、ヒョンスだと知れ、チョングは彼を拉致し痛めつけるが、彼の並外れたチャート分析力を認めたチョングは、彼を次の作戦にスカウトする。次のターゲットは、環境技術ベンチャー企業の吸収合併を予定するテサン土建。メンバーは、名代のプレイボーイでテサン土建の二代目社長、チャンジュ、外資担当の在米韓国人ファンド・マネージャー、ブライアン、それに、情報煽動担当TVで有名なアナリスト、スンボムを加えた7人。彼らの、テサン土建株を巡る、10億円の利益を狙う危険な「作戦」は順調にスタートを切るが…

一匹狼のデイトレーダー、ヒョンスに、『冬ソナ』でブレークした歌手でもあるパク・ヨンハ、美貌の闇の資産管理人ソヨンに、映画は「淫乱書生」以来3年ぶりキム・ミンジョン、元ヤクザの投資会社オーナー、チョングに、最近主演級の出演が目白押しの個性派パク・ヒスン、有能な証券マン、ミニョンに、ミュージカル俳優で『新・別巡検』『一枝梅』などTVにも活躍を広げるキム・ムヨル、テサン土建二代目社長チャンジュに、軽妙な名脇役チョ・ドッキョン、在米コリアンのブライアンに、実際に証券ブローカーの経験を持つキム・ジュンソン、情報煽動アナリストに、「20のアイデンティティ」などのクォン・ヒョンジュン。後半のキーパーソンとして、失敗仕手の後始末人ウ博士に、癖のある名脇役シン・ヒョンジョン、伝説のマサン(馬山)個人投資家に、迫力のチョン・ググァン。

これは面白いです。邦画「白昼の死角」洋画「ウォール街」とか忘れられない金融犯罪映画は多いですが、全然負けていません。まず、シナリオが素晴らしい。仕手集団が、「蟻」と蔑称される就職難や不景気から投機に熱狂する弱小個人投資家を犠牲にし一攫千金を狙う物語ですが、その「作戦」が開始されるまでにしっかり時間を使って10人近い登場人物や背景・手口をきちんと描き、ほぼ中盤、「作戦」が開始されるや否や、彼らの間での虚々実々の騙しあいが怒濤のように炸裂し、一気にクライマックスへ持っていく、その腕前は見事と云えるでしょう。しかも、一見端役に見える人物や、1枚の名刺、とかがストーリーを左右していく、その緻密な構成が、大味になりがちな物語をビシッと引き締めています。勿論、役者も文句無し。元ヤクザで知能犯でもあるという微妙な役どころをケレン味たっぷりに演じるパク・ヒスン、謎の富豪美女を知的にそして妖艶に演じるキム・ミンジョンは当然として、ちょっと心配してた「韓流」パク・ヨンハが、無理に背伸びせず、自然に、貧しく野心的な青年を、ヒチコックの「巻き込まれ型」主人公風に好演しているのが、物語に実によく馴染んでいます。

何度痛い目にあってもバブルは再燃して来るわけですが、そんな人間の強欲を背景にした、残酷でありながら何処か華麗でもある金融犯罪を、映画の題材として見事に料理した作品だと思います。お薦めだと云えるでしょう。

ちなみに、株取引に関わる名台詞があちこちに出てくるのも、かなりお洒落です。曰く「全部の卵を、一つの籠に入れるんじゃない」「最初に屋上に着いたら、梯子を蹴り外せ」「蟻(弱小一般投資家)なんてのは、ミサイル飛び交う戦場にコルク鉄砲を持って乗り込むみたいなもんだ」あぁ、恐ろしいぃ。