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シン・チュンシクつながりで、ものすごくソフトなサラサラ感が魅力、「純情漫画」。

夏真っ盛りの下町。役所勤務のヨヌは、真面目で孤独な30歳。新しく引っ越したアパートで、一緒にエレベーターに閉じ込められたことから、真上に住む一回り違う18歳の生意気な女子高生スヨンと知り合う。ヨヌの同僚で公益勤務中の自称25歳スク。駅や学校など町の様子をクラシックなカメラで撮り歩く29歳の美女ハギョンに一目惚れし、終電がきっかけで、ついに声をかける…

30歳の孤独な青年ヨヌに、近年短編映画監督としても名を馳せる名優ユ・ジテ、18歳の女子高生スヨンに、「M」「私の恋」で名演を見せ『エデンの東』など確実に人気を上げているキュートなイ・ヨニ、心に傷を負った29歳ハギョンに、意外にベテランで離婚復帰後『コーヒープリンス1号店』『カインとアベル』などが好調のかなりな美形チェ・ジョンアン、向こう見ずな自称25歳公益要員スクに、13人のアイドルグループ「Super Junior」のメンバーの一人カンイン。スヨンの蓮っ葉親友に、こちらは「少女時代」のメンバーの一人チェ・スヨン、クリーニング屋の老夫婦に、渋いシン・チュンシクと迫力イ・ジュシル。特別出演では、スヨンの母に、イ・ジャンホとかチョン・ジヌとか名匠と仕事をしてきた映画女優ナ・ヨンヒ、ハギョンのかつての恋人に、数カットと写真だけの出演キム・ガンウ。また、漫画の原作者カン・ブルが、結構台詞も多い傘売りのおじさん役で登場してたりします。

2003~4年42話総ページビュー6000万を記録した大ヒットオンライン漫画が原作で、しかも、アイドルグループから二人の演技素人を登用…これは期待してはいけない、っと、かなり警戒した作品だったんですが、とんでもない。さすが「春が来れば」で落ちぶれた中年男の再生を叙情豊かに描いたリュ・ジャンハ監督だけあって、実に心地よい作品に仕上がっています。もともと、主役二人しか見えてない恋愛劇が大嫌いで、群像劇が大好きなので、この物語はツボです。原作の魅力かもしれませんが、主な登場人物9人が、それぞれ穏やかに関係を結んでいき、終わってみれば、人間のつながりっていいよなぁ、みたいな、リリカルな残り香が漂っている、そんな感じです。演出もさすがで、Pentax、ヒヨコのTシャツ、青い折り畳み傘、UFOキャッチャー、「猫」という名の犬、とかとか洒落た小道具を一杯使って、この特に激しい展開のない穏やかな物語に、巧みに映画的深みを与えていきます。そして、やっぱり役者。まず、ユ・ジテ。凝った役も巧いですが、この気弱で実直な公務員像は、「春の日は過ぎゆく」以来、久しぶりの肌感覚の演技だと思います。イ・ヨニ。まだ10代に別れを告げて間もない筈ですが、地で演じるのではなく、きちんと生意気な女子高生役を作り上げているところは、これから演技派と呼ばれることは間違いないと予感させます。それと、いわゆるアイドルの二人。カンインも巧いですが、特に、チェ・スヨン。見終わった後「少女時代」の一員と知るまでは、なかなか上手くて可愛い役者が出てきたなぁ、と関心して見てたりしてて、二人とも、アイドルとしてではなく、役者として、十分やっていけると思わせます。勿論、シン・チュンシク、イ・ジュシル、ナ・ヨンヒあたりのベテランも、手堅い演技で、物語をちゃんと地に足を付けたものにしてくれてると思います。

一歩間違えば、原作やアイドル頼みの金目あて映画になってもおかしくない所を、監督や役者の力量が、きちんとして、それでいて爽やかな、しかも映画的奥行きの感じられる作品に仕上げている、そんな風に感じます。映画館で見ても、損のない作品だと思います。