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もう一本、チェ・ジョンウォンつながりで、目が覚めるような豪華キャストによる、不信心コメディ、「ハレルヤ」。

トッコンは、前科5犯のコソ泥。5回目のお勤めを終え、今は、クラブの運転手で小銭を稼いでいる。そんなある日、有閑マダムの浮気現場を見つけ、二人の車を尾行するが、いかがわしいことに夢中な二人の車がいきなり蛇行を始め、それを避けようとして、対向車が横転する。トッコンは、横転した車のドライバーを病院に運ぶが、意識不明の重体。悪い癖で、荷物をあさるが、彼は江原道チョルウォン(鉄原)から来た牧師で、教会建設のための1億ウォンの浄財を受け取りにソウルへ来る途中であることが分かる。1億ウォンに目が眩んだトッコンは、その牧師に成り済まして、目的の教会に向かうが、あいにく洞会長である牧師が渡米中で、2週間、礼拝を務めながら待つように言われる。こうして、1億ウォンのための、偽牧師生活が始まるが…

トッコンに、硬軟自在の芸達者パク・チュンフン、腐れ縁の相棒に、監督も務める才人イ・ギョンヨン、トッコンが惚れるクラブのホステスに、これが銀幕デビューで後にホン・サンス、キム・ギドク作品などに主演するソン・ヒョナ。おじさん達も賑やかで、長老に、大ベテラン、クク・チョンファン、副牧師に、「猟奇的な彼女」とかお馴染みキム・イル、幽霊で現れるトッコンの父親に、「孤独がもがく時」などで名演ヤン・テクチョ。ちょい役が驚くような豪華陣で、長老の息子と娘には、何と銀幕デビューのチャ・テヒョンとデビュー2本目コ・ソヨン、区役所の受け付けに、やはりデビュー美形ト・ジウォン、極めつけは、クラブのママに、デビュー2本目チェ・ジウ。ちなみに、チェ・ジョンウォンは、似合わない長髪の笑えるインチキ宗教教祖役。

偽牧師と云えばチャップリンの名作がありますが、泥臭いブラックさでは、はるかに上を行っているでしょう。勿論、チンピラ流のやり方で信者の悩みを解決したりもしますが、終盤まで卑劣なチンピラが、1億ウォンのために右往左往する様は、いかにもコリアン・テイストなコメディになっています。まさにアジア通貨危機ど真ん中の1997年ですが、不況に打ちひしがれ宗教に救いを求める庶民と、その上前をはねようとする小悪党、という構図は、それだけで充分にブラックな雰囲気タップリと云えるでしょう。パク・チュンフンはこの頃からベラボーに巧いと思います。イ・ギョンヨンと組んだバディ・ムービーの匂いもあり、色っぽいソン・ヒョナとの絡みもあり、一方で、妖しげな説話をでっち上げるチンピラの人物造型は見事で、ラスト近くの演説ではホロリとさせながら、ラストシーンでやはりずっこける、みたいな演技の多彩さによって、既に何度も受賞している映画賞に、百想の最優秀演技賞を追加することになります。

テーマが宗教だけにさすがにある程度のブレーキが利いているのか、爆発力や弾け方がちょっと抑え目になっていて、多少の欲求不満感は残るものの、パク・チュンフンの縦横無尽の演技を観るだけでも十二分に価値を感じるコメディだと思います。

それにしても、パンク・ファッションでいきがるチャ・テヒョンも、女優希望でオーディションを受けまくるコ・ソヨンも、かなり爆笑ものですし、やたら濃い化粧で崩れた感じのチェ・ジウもなかなかの見物です。