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ソン・イェジン10本目の映画作品、二重結婚の顛末を描く異色ラブストーリー、「妻が結婚した」。

ワールドカップに揺れる2002年ソウル、トグンはかつての職場の花イナと偶然再会し、サッカーの話で盛り上がり、その夜から、深い関係に…幸福絶頂のトグンだったが、イナは、携帯電話を切り、朝帰りを繰り返す、奔放な生活を変えない。一旦は別れる決心をしたトグンだが、結局忘れられず、彼女を得るために、結婚を申し込む。イナも彼の熱意に負け、二人は、一見、幸せな結婚生活に入る。やがて、イナに慶州での1年間の仕事が入り、週末だけの夫婦生活が始まるが、ある夜突然、イナが、「別の男と結婚したい」と言い出す…

古本収集という知的な趣味の反面、自由奔放な美貌のウナには、ソン・イェジン、生真面目なドグンには、ピッタリのイメージのキム・ジュヒョク、二人目の夫には、『チュンジャさんちはお祝いね』で人気沸騰の気配を見せる若手二枚目チュ・サンウク、トグンの母親には、迫力おばさんならこの人イ・ジュシル。

おそらく、ソン・イェジンの演技への評価が、映画自体への評価を分けると思われます。青龍での初の映画主演女優賞をもたらした、半裸で激しいベッドシーンを演じ、あの容貌からは到底想像が出来ない卑猥な台詞を連発しながら、あっけらかんと二人目の夫が欲しいと主張する宇宙人のような女性像は、新鮮でありながら、一方では、少し無理を感じさせる、微妙な仕上がりに感じます。前作「ファム・ファタール<無防備都市>」でも妖艶な悪女に挑戦し、新しい芸域への意欲は凄いのですが、韓流スターの香りをぬぐい去るのは、まだ時間がかかるかもしれません。一方のキム・ジュヒョクは、完璧なハマリ役で、愛を一途に信じる真っ正直な男が、異星人のような女性に翻弄され、錯乱していく様は、まさにうってつけと云えます。語り口もお洒落で、全体のストーリーを巧みにサッカーと重ね合わせ、FCバルセロナの熱狂的ファンのイナと、レアル・マドリードの熱狂的ファンのトグン、しかも2002年ワールドカップやリーガ・エスパニョーラ、さらに、フィーゴだのジダンだのも登場、ふんだんにサッカー映像を散りばめた演出は、サッカーファンには堪らないかもしれません。ついでに、音楽も、スペイン語を専攻したというチョン・ユンス監督らしく、スパニッシュな感じを中心に、物語を巧く盛り上げています。

見ながらしきりに30数年前の「夕なぎ」を思い出したように、テーマ自体、必ずしも画期的とは思えませんし、主役二人以外の扱い方が軽く、映画の奥行きが多少浅い感じもしたりしますが、ここで描かれる、シリアスでいながらコミカルな、男女関係の不思議さや生々しさには、なかなか考えさせるものがあると思います。

ちなみに、ニヤリ、というか、ドキッ、というか、そんな台詞が多いのですが、その一つ、「男は、浮気をした女を許せない、女は、自分を捨てる男が許せない」。