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600本まであと1本、599本目の感想は、韓国映画では珍しいファンタジー・アクション巨編にして、文句無し五つ星エンターテインメント大作、「神機箭」。

1448年、セジョン(世宗)の治世。プボ商団の頭領ソルジュは、明の商団が来訪するとの情報から全財産をはたいて準備するが、来たのは明の使節団のみで、破産の危機に陥る。そんな時、旧友の禁軍司令官チャンガンから、一人の若い女性ホンリを匿うよう頼まれる。彼女はなかなか正体を明かさないが、やがて明の手先に暗殺された宮廷兵器研究家の娘で、開発中だった秘密兵器が”神機箭(シンギジョン)”だということを知る。金儲けにしか興味のないソルジュであったが、やがて、兵器の威力と彼女の熱意にほだされ、完成間近の”神機箭(シンギジョン)”の開発に協力していく。一方、秘密兵器の存在を恐れる明は、使節団を隠れ蓑にしてホンリを抹殺しようとする一方で、10万の軍兵を国境に向けて移動しつつあった…

商団頭領に、ここ数年コンスタントに主演作が公開されるチョン・ジェヨン、美貌のホンリには、『フルハウス』『ワンダフル・ライフ』『大韓民国弁護士』などドラマ準主演からの抜擢正統派美形ハン・ウンジョン、男気の禁軍司令官に、存在感タップリのホ・ジュノ、セジョン(世宗)に、韓国映画界の最重鎮アン・ソンギ、英明な世継ぎに、『ホテリア』のチョイ役から見ると隔世の感パク・チョンチョル、頭領と腐れ縁の破戒僧に、才人イ・ギョンヨン、頭領の右腕に、イケメン有望株ト・イソン、その恋人に、久しぶり映画出演のリュ・ヒョンギョン、ちょっと笑える明の皇帝に、特別出演キム・ミョングク。

2時間15分ほどの長尺ながら、さすがに400万人近くを動員しただけあって、完璧なバランスを持つエンターテインメントに仕上がっています。先の読めない面白さというよりは、ロジャー・ムーアの007シリーズのように、コミカルとシリアス、アクションとスペクタクル、大業と小技、みたいな配分が実に巧みで、さらに伏線の張り方なんかも上手いので、予定調和的にあっと云う間に見終わってしまう、ってハリウッド風味の面白さです。「シュリ」以来のアクション娯楽大作と呼んでもおかしくないでしょう。役者も見事で、まずは、チョン・ジェヨンがまさにボンド並の活躍を見せて痛快です。女好きで金好き、一方で、腕は立つし男気もある、と典型的なヒーロー像を演じれば、一方のボンドガール役、美貌のハン・ウンジョンも、気丈で頑固、一方で、孤独でか弱い、というヒロイン像を楽しげに演じています。周りでは、ホ・ジノの司令官役があわや主役を食いそうなくらいカッコイイですし、破戒僧イ・ギョンヨンや若い剣士ト・イソン辺りも良い味を出しています。アクションシーンも、色々とアイデアが詰め込まれていて、前半から中盤は、剣を使った迫力あるボディ・アクションを中心に見せ、終盤にかけては、人海戦術と控えめなCGを活かして壮大なスケールのスペクタクルに仕上げて来る辺りは、見事といっていいでしょう。

史劇として見れば、首をかしげるような所もないではないのでしょうが、”神機箭”という秘密兵器をマクガフィンにして、緻密に練り上げられたファンタジー・アクション巨編としては、全く文句の付けようがありません。大スターを使わなくても、海外ロケをしなくても、面白い映画が作れるというお手本でしょう。韓流的な意味での華はないかもしれませんが、是非とも劇場公開してほしい一本だと思います。