ふと気づきましたが、550本目の感想、ネットで話題となったユ・イランの都市伝説ホラー集「ある日突然」をベースに作られた4本のオムニバス・ホラーから3番目、美少女四人が恐怖に壊れていく、「D-day」。
全寮制の女子専門予備校、ヨンファ学院。音楽、本、携帯、あらゆる私物を取り上げられ、外へ通じるドアは施錠され、監視カメラが設置された館内は、まるで女子刑務所の様相を呈している。同室となった四人は、3年前に起きた火事による惨劇の話を聞き恐怖に震えるが、1年後の入試本番、D-dayに向けて、殺人的な学習スケジュールをこなすことを余儀なくされる。そして、先ずは、反抗的なユジンが、厳しい女舎監のイジメや、死体に囲まれる幻影に苦しみ始め、次第に精神のバランスを崩していく…
優等生ウンスに、走り幅跳びで全国3位に入ったこともあるという『快刀 洪吉童』でも準主役美形キム・リナ、物語の語り部ポラムに、その後「古い庭園」「ザ・ゲーム」など売れ筋美少女ウンソン、反抗的なユジンに、CMで人気『ブルーフィッシュ』にも出演正統派美人ユ・ジュヒ、地味なタヨンに、眼鏡が可愛い新人ホ・ジンヨン。恐怖の女舎監には、「密愛」「恋愛」とかのユン・ダギョン。
勿論、女校怪談シリーズに代表される美少女ホラーは、韓国映画お家芸の一つですが、その伝統を下敷きに、強烈にデフォルメされた受験地獄・学歴社会を描く異色ホラーです。まずは、ヨンファ学院の造型に目を瞠ることになります。間断なく構成された時間割、ロボットのような教師、イルザを思い起こさせる悪魔的女舎監、裏表の顔を持つ不気味な女学院長、さらには、生徒の親までがきわめて非人間的に描かれています。それらが余りにもあり得ない設定なので、この辺りで好き嫌いが分かれてしまうとは思いますが、韓国の学歴偏重の実態にはかなり凄いものがあるのだろうと、それはそれで考え込まされたりします。それにしても、主演四人は熱演で、ジャージの上下と全く色気のない服装ながらも、キュートな美貌と、美貌の名残を微塵も残さない恐ろしい形相のギャップを楽しむかのように、見事な恐怖演技を見せてくれます。キム・リナ、ウンソンはその後早くも上り調子ですし、個人的には、大人の美貌ユ・ジュヒの将来が大変楽しみだったりします。
女流監督のせいか、男性観客に媚びるような演出が全くないのが多少寂しい気もしますし、余りに現実離れした展開がかなり鼻についたりもしますが、華やかで恐ろしいディストピア美少女ホラーの佳編、と呼んでいいと思います。美少女にも滅法弱いので、かなり甘いかもしれませんが…