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チョン・ムソンつながりで、イム・グォンテク監督がさすがの腕前で朝鮮戦争を描く、「アベンコ特殊空挺部隊 奇襲大作戦」。

漢江の奇跡に沸き返る1978年、ある青年がアメリカから帰国し、28年前の父親戦死の情況を聞くため、韓国軍の将軍を訪ねる。将軍は語り始める。1950年8月洛東江まで追い詰められた連合軍には、マッカーサー元帥直属の北への潜入・特殊工作を目的とし、その指揮官、アレクサンダー中佐、ベンダブル少佐、コ(高)少佐の頭文字から「アベンコ空輸軍団」と呼ばれる特殊部隊があったが、犠牲を繰り返すだけで成果を挙げられずにいた。第5次チームとして新たに6人が選ばれ、ウォンサン(元山)の弾薬庫爆破の命令が下りるが、出撃を前にした彼らは、街へ飲みに繰り出し、チームの一員であった青年の父親は、ヤクザから助けた美しいクラブ・ホステスと結ばれる。そして、出撃の日がやって来る…

青年に、『サンドゥ、学校へ行こう』とか今も活躍中の若いイ・ヨンハ、アレクサンダー中佐に、『コンバット』でお馴染みこの映画の封切り2カ月後に事故死するビック・モロー、金髪碧眼美貌のベンダブル少佐に、主にTVで活躍する美人女優マーサ・スミス、コ(高)少佐に、流暢な英語を操る「赤道の花」などの重鎮ナムグン・ウォン、チームリーダーの軍曹に、「蒸発」とか迫力のキム・ヒラ、青年の父親に、やはり「赤道の花」などの二枚目俳優シン・イルリョン、青年の母親クラブ・ホステスに、ここでも美しい裸体をちらりと見せるチョン・ジヌ監督「カッコーの啼く夜」「鸚鵡からだで鳴いた」の美形チョン・ユニ、北朝鮮軍の作戦参謀に、まだ若く精悍なチョン・ムソン、コ(高)大佐の副官で後の将軍に、「カッコーの啼く夜」でチョン・ユニと共演するお馴染みイ・デグン。

ある意味、不謹慎な感想ですが、とにかく感じるのは「面白い」ということです。朝鮮戦争という悲劇的な題材を扱っているにも関わらず、イム・グォンテク監督はいつも通り「映画はエンタテインメント」ということを念頭に映画を作っているんだと思わせます。出だしのロマンス、序盤60年代の痛快戦争ドラマ『ジェリコ』を思い出させるウォンサン弾薬庫襲撃、中盤の北朝鮮軍作戦参謀奪取、そして、悲劇的な色合いを見せるインチョン(仁川)上陸作戦にまつわる情報攪乱戦を描く終盤、という大きな構成がしっかりしている上、実際の戦闘機や戦車を動員し、全体として、ハリウッド大作並のスケール感を感じさせる仕上がりになっていると感じます。さらには、基本的には国威発揚英雄譚の形を取りながらも、その中に、故郷を引き裂かれた庶民の悲劇を描くいくつかの挿話や、28年を経る親子の物語を交える語り口も、見事だと云わざるを得ません。

勿論、今から見ると、銃撃戦などの古めかしい部分とか、任務を離脱して故郷を訪ねるといった非現実的な描写もないわけではありませんが、題材の重さをきちんと踏まえた上で、優れたエンタテインメントとして再構成する、イム・グォンテク監督の力量を再認識出来る秀作だと思います。

ちなみに、アベンコ部隊は、少し調べた限りでは、この映画のためのフィクションとしか思えないのですが、一方で妙なリアリティもあり、何か情報があれば、お教え頂ければ幸いです。