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パク・キルスつながりで、タク・チェフンを見直してしまった、「幼い王子」。

抜群の腕を持つ音響効果技師は、仕事一辺倒で、愛する妻子を構う時間がない。今日も、義父の釣りの誘いをドタキャンし、スタジオに籠もる。一方、妻子は雨の中、車で実家に向かうが、峠でエンコ、携帯で夫に助けを求めるが、夫は携帯を取らない。そこへ大型トラックが突っ込んでくる…妻子を失った衝撃で、仕事もせず、酒浸りの生活を送る技師は、スーパー駐車場での接触事故をきっかけに、小型の鮫を飼う、慢性の心臓病を患う7歳の少年と出会う…

音響効果技師に、「家門」シリーズ次男を始めコミカルな演技で知られるタク・チェフン、難病の少年に、300人のオーディションから選ばれたカン・スハン、少年の叔母に、キュートなチョ・アン、技師の人情深い後輩に、パク・ウォンサン、技師の妻に、「ドント・ルック・バック」でキム・テウと絡んだ美形ユ・ハジン、技師の父に、ベテランのイ・ホジェ、院長修道女に、貫祿のイ・ヨンイ、技師の上司に、芸達者パク・キルス。

藤田まことや植木等といったコメディアン畑の役者が後に味わい深い演技を見せるように、タク・チェフンが良い味を出しています。時折トボケた味わい見せながらも、絶望と希望の間で身悶えする演技は、絶賛に値するでしょう。一方の子役カン・スハンですが、最初はかなり素人っぽい感じがして、他に天才子役が多い中大丈夫か、と心配させたりもしますが、良く見ると、純朴な中でもきちんと演技していることが次第に分かってきて、「二代目ユ・スンホ」と呼ばれることの意味が理解できたりします。この辺りは、デビューながら、手堅い演出を見せるチェ・ジョンヒョン監督の手腕にもよるものなのでしょう。基本的にはあまり好きではない難病メロではありますが、小型鮫、水族館、ハンバーガー、海、音響効果、といった小道具を、ファンタジーに走らないよう巧みに扱い、無理矢理の催涙姓をあまり感じさせないストーリー・テリングが、こういう映画が苦手な観客をも、すんなりスクリーンに引き込むのではないかと思わせます。

物語のベースにある種残酷な宿命があるので、必ずしも万人には受けないような気もしますが、監督・スタッフ・役者の、ケレンミを極力排除した真摯な映画作りの気持ちが伝わって来る、という意味で秀作と呼んでいいと思います。

ちなみに、「わが町内」の感想でも書いたように、原題「オリン ワンジャ(幼い王子)」は、サンテクジュベリ「星の王子さま」の韓国語タイトルでもあり、ラストに上映される優れたアニメを始め、あちこちに「酒を飲む恥ずかしさを忘れるために酒を飲むんだ…」といった小説内の逸話が散りばめられていて、映画全体に馥郁とした香りを与えています。

ついでに、二人が休日を過ごす公園は、ソウルのワールドカップ公園内ハヌル(空)公園、ラストのアニメを上映する島は、ナロ(羅老)宇宙センターにほど近い全羅南道コフン(高興)郡ヨンホン(連洪)島、で撮影されたようです。