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チョン・ジヌ監督、「鳥」シリーズ第2弾、再びチョン・ユニ主演、「鸚鵡からだで鳴いた (邦題:愛の望郷 激流を超えて)」。

チュンチョン(春川)にほど近い、京春線沿いの丘陵地の粗末な家に住む親子三人。保線夫の年老いた父親は、兄と口のきけない妹が道ならぬ関係にあることを知り激怒、息子を都会に追いやる。兄は妹のことが忘れられず、密かに家に戻り妹と逢瀬を重ねるが、ある時、家に戻る途中、ヒモやくざから逃げているホステスがまとわりついてきて、彼の家まで付いてきてしまう。そして、ホステスを追うやくざもまた、近づいてきていた…

美貌の妹に、再び美しい裸体を見せるチョン・ユニ、父親に、「荷馬車」「ホワイト・バッジ」とかのベテラン、ファン・ヘ、兄に、丹波義隆に似た二枚目チェ・ユンソク、ホステスに、今からではとても想像できないながら裸も見せる『新・貴公子』『クッキ』そして「麻婆島」のキム・ヒョンジャ。

兄と妹の許されない関係、がテーマかと思いきや、朝鮮戦争で男の機能を失い、妻にも逃げられた父親が、戦場で泣いていた女の赤ん坊と、孤児になった戦友の息子を育てていたので、むしろ、血のつながりがない三人の疑似家族の悲劇といった感じの物語です。第一作の所でも書いたように、エロメロ路線が花咲く80年代の先駆け作品なので、必ずしも必要とは思えない裸や濡れ場も多いのですが、何といってもこの映画の見どころは、キム・ヒョンジャの登場する中盤。この演技で、大鐘助演女優賞を獲っただけあって、陽気でハスッパなキム・ヒョンジャのホステス像はかなり魅力的で、必ずしも本編の物語と関係があるとも思えないのですが、この逃亡ホステスの挿話は優れ者です。やくざの、泣きながら女を殴ることでしか愛せない、という歪んだ人間像も、ちょっと後のキム・ギドク作品を思い起こさせる深い味わいを醸しだしていたりします。

勿論、本編の物語が相当に大時代的ではありますが、チョン・ユニがベラボーに綺麗に、そしてやはりかなりエロに撮られていますし、美しい滝(結構調べたんですが、どこの滝かは分かりませんでした)や川、といった自然描写に加え、ドラマの背景を絶妙のタイミングで走り去る京春線の列車とか、相変わらず、物語を盛り上げる雰囲気作りは、今の映画人に希薄なさすがの職人技を感じさせたりしますので、今見ても意外にも新鮮と思える作品かもしれません。場末のレンタル屋の韓国エロスコーナーで見つかったりするかもしれませんので、もし機会があれば…

ちなみに、シンナム(新南)駅という京春線でチュンチョンから二つ手前の駅が出てきますが、2004年12月1日に、韓国で初めて人物(小説家)の名前をつけた、キムユジョン(金裕貞)駅に変わったそうです。