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養子を巡る、哀しい心理サスペンス・スリラーの佳編、「アカシア」。

四十路を過ぎても子宝に恵まれない裕福な産婦人科医と美しい妻は、養子を取ることを決め、孤児院を訪ね、暗い木の絵ばかりを書く無口な少年を選ぶ。庭の枯れかけたアカシアの木を好む少年が、ようやく家に馴染み始めた頃、妻が妊娠、男の子を出産する。五人家族に微妙な緊張感が漂う日々が続く中、ある雷雨の日、少年が家を飛び出して、そのまま消息を絶ってしまう。その日を境に、庭のアカシアの木は、次第に、葉を蘇らせ、ついには、満開の花を咲かせるが…

美しい妻に、映画界のベテランで『宮』のヘジョングン(恵政君)で日本でも広く知られるようになった個性派美形シム・ヘジン、産婦人科医の夫に、「スカーレットレター」とかのキム・ジングン、舅に、「公共の敵2」「オールド・ミス・ダイアリー劇場版」とか渋いパク・ウン、妻の母に、映画界の名おばさん脇役イ・ヨンヒ、少年に、不思議な名演ムン・ウビン、隣家の少女に、「マイ・リトル・ブライド」ではムン・グニョン「百万長者の初恋」ではイ・ヨニの少女時代を演じるチョン・ナユン。

シナリオとしては、必ずしも目新しい感じはありませんが、さすが名シリーズ「女校怪談」第一作「囁く廊下」を撮ったパク・キヒョン監督だけあって、静かな恐怖感に満ちた佳編になっています。シム・ヘジンと子役ムン・ウビンの緊張感溢れる名演が中心ですが、不思議な威厳に満ちた舅パク・ウン、吸血鬼を自称する隣家の少女チョン・ナユンが、上手く物語に絡んで、単調になりそうな所をぐっと引き締めてる辺りも、なかなかの腕前です。少年の描く暗い絵の数々や、次第に活き活きとしていくアカシアの木の不気味さ、とかの雰囲気作りも上々の出来と云えるでしょう。

赤い糸で飾られた部屋とか作り物の嬰児の映像とか、多少上滑った演出がせっかくの大人の興趣をそぐ所もないではありませんが、エンドロールの後ろの映像が、少しもやもやしていた物語の核心を鮮やかに描き出す、なんて演出もかなり好みです。個人的に左のエクボが妙に艶かしいシム・ヘジンの大ファンなので、かなり偏ってるかもしれませんが、見て損のない心理サスペンス・スリラーの佳編だと思います。